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各地がレッドリボンの赤色に染まったほか、男子プロバスケのHIV啓発マッチの開催も発表――今年の世界エイズデーのトピック
この12月1日は、1991年に「Visual AIDS」がレッドリボンを生み出してから30周年の世界エイズデーでした。各地でレッドリボンをイメージした赤色をフィーチャーした催しが行なわれ、エイズで亡くなった方の追悼や、HIV陽性者支援、予防啓発のメッセージとなりました。世界エイズデー関連のニュースをまとめてお伝えします。
まず、15年間にわたり、PRODUCT(RED)の寄付金をエイズ患者支援に充ててきたアップルが、今年も全国のアップルストアのロゴを真っ赤に変えたほか、赤いスマホケースやアップルウォッチのリストバンドなどPRODUCT(RED)の製品を発表しました。長きにわたる取組みに敬意を表します。
それから、東京都が毎年、レッドリボンのイメージで都庁第一本庁舎を赤色にライトアップしていますが、今年も12月1日〜9日の18時〜23時00にライトアップを行なうそうです。
都庁だけでなく、熊本城も赤くライトアップされたそうですし、東京ビッグサイト、群馬県庁昭和庁舎、天神中央公園旧福岡県公会堂貴賓館、明石海峡大橋、神戸市の「人と防災未来センター」など、全国のいろいろな建物が赤く染められているようです。
海外でも、ホワイトハウスに巨大なレッドリボンが飾られたほか、上海では、ランドマークの環球港がレッドリボンを浮かび上がらせた模様です。
さらに、これはもしかしたら初めてじゃないかと思われるニュースなのですが、製薬会社ギリアド・サイエンシズと男子プロバスケットボールの千葉ジェッツふなばしが「HIV啓発マッチ」を行なうことを発表しました。対戦相手は、昨年初めてLGBTQとスポーツをテーマにした「レインボートーク&ゲーム」を開催した茨城ロボッツ。ハーフタイムには千葉大医学部附属病院感染症内科の谷口俊文先生と千葉ジェッツのMCによる啓発トークが行なわれるそうです。HIV啓発マッチは、12月4日に船橋アリーナで開催されます(詳細はこちら)
スポーツ界では近年、LGBTQへの理解や支援を推進しようとする動きが活発になっていて、女子サッカーではプライドマッチなども開催されるようになっています。LGBTQのことだけでなく、こうしてHIVのことについても啓発の試合が開催されるのは素敵なことですね。((啓発の内容がHIV陽性者へのシンパシーのない「エイズ撲滅」的なものでないことを祈ります…)
今年はまた、WebメディアでHIV陽性者への偏見を払拭することを訴える記事が目立ちました。とても大事なことです。こうした記事がもっと増えることを願います。簡単にご紹介します。
琉球新報の「HIV感染「誰にも言えない」通院休暇、結婚…差別恐れ息潜め きょう世界エイズデー」では、沖縄県内の病院でHIVの治療をしている陽性者の方の声を紹介しています。10年前に肺炎で入院した際、発症していることがわかり、目の前が真っ暗になったそうです。「この病気は感染した本人が悪いような感じがある。家族や社会から心から受け入れられない気がする」と語り、家族にも誰にもカミングアウトしていません。もし、周囲にバレてしまったら、親が悲しむのではないか、友人が去ってはいかないか、理解してくれるパートナーはいるのか―と、常に不安に駆られるそうです。「遠くない将来、感染者が、非感染者とともに普通にストレスなく生活して社会活動ができるような、より住みやすい環境が訪れてほしい」
週刊現代「いまも残る「エイズ患者」への偏見は、こうして起こった…「印象操作」の深すぎる罪」では、35年前のエイズパニックの時代の、HIVに関するデマや感染者への差別を煽るような報道を振り返りながら、今のコロナ禍も同様ではないかと警鐘を鳴らしていました。
ジャーナリストの岩瀬達哉氏はこう解説しています。
「当事者としての責任を負いたくない行政の思惑に、マスコミが無批判に便乗して間違った情報を拡散したのです。まさにコロナ禍を彷彿とさせます。特に、厚生省記者クラブに配属されていたテレビや新聞の記者たちは、厚生省にとって都合の良い情報を垂れ流すだけだった。記者クラブ経費を税金で賄ってもらっているうえ、紙面作りに必要な情報まで教えてくれたわけですから、疑う余地があっても批判なんてできませんでした」
GLOBE+「HIV陽性者、セックスワーカー、トランスジェンダー…SDGsが光を当てるべき人たち」では、国連エイズ合同計画やエイズ・結核・マラリア対策支援のための国際基金「グローバルファンド」の仕事に携わってきた竹本由紀さんが、「国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」をめぐる議論で、脆弱な立場にある人たちの代表として「女性と子ども」という枠組みをよく見ますが、さらに忘れられているのがHIV陽性者やHIV感染のリスクが高い人たち(「鍵を握る人々(キーポピュレーション)」)です。この中には、セックスワーカーやトランスジェンダー女性、MSM(Men who have sex with men:男性とセックスをする男性の総称)、薬物使用者らがいて、彼らへの支援が必要です」「エイズ流行を抑えるには、こうした当事者への支援や当事者が関与した対策が重要」と述べています。
それから、BuzzFeed「HIV患者が戦うのはウイルス、だけではない」という記事では、台北當代藝術館(MOCA)でのHIVに関する展覧会(2019年の台北プライドの時にも展示されていました)をフィーチャーしつつ、台湾の累計感染者数が約3万8000人に上り、2018年の同性間性交渉による感染が1705人で新規感染者の86%を占めたといったデータ(日本よりも多いですね…)、PrEPの薬の配布も始まっていることなど、台湾のゲイ・バイセクシュアル男性のHIV事情をリアルに伝える、たいへん興味深い記事になっていました。
こうした記事のリツイートも含め、ゲイコミュニティのたくさんの方たちがレッドリボンやHIV/エイズに関するメッセージをTwitterなどに投稿していました。そうした一人ひとりの思いが、私たちがすでにHIV/エイズと共に生きていること(Living Together)を思い出させ、コミュニティをインクルーシブな(HIV陽性者を排除しない)ものにしていくことに貢献していると感じました。
参考記事:
Apple Storeが真っ赤に染まる。12月1日の世界エイズデーに合わせて(engadget)
https://japanese.engadget.com/applestore-red-011920599.html
1日は世界エイズデー 全国検査数、コロナ禍で半減(神戸新聞)
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202112/0014883322.shtml
「世界エイズデー」 各地で啓発イベント(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3378751
第34回の世界エイズデーに上海ではレッドリボンをライトアップ(東方網日本語版)
http://jp.eastday.com/node2/home/latest/sh/u1ai189769.html
HIV感染「誰にも言えない」通院休暇、結婚…差別恐れ息潜め きょう世界エイズデー(琉球新報)
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1431546.html
いまも残る「エイズ患者」への偏見は、こうして起こった…「印象操作」の深すぎる罪(週刊現代)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/89800
HIV陽性者、セックスワーカー、トランスジェンダー…SDGsが光を当てるべき人たち(GLOBE+)
https://globe.asahi.com/article/14492166
HIV患者が戦うのはウイルス、だけではない(BuzzFeed)
https://www.buzzfeed.com/jp/shunsukemori/hiv-moca