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work with Pride 2021が開催、今年のPRIDE指標は応募総数300社、うちゴールドは237社となりました

work with Pride 2021が開催、今年のPRIDE指標は応募総数300社、うちゴールドは237社となりました

 今年も職場におけるLGBTQ+の働きやすさを考えるカンファレンス「work with Pride 2021」がオンラインで2日間にわたって開催されました。そのなかでPRIDE指標についての発表も行なわれ、応募総数は300社(グループ連名の企業も合わせると573社)、うちゴールドは237社に上り、過去最多となった昨年よりもさらに50社超、多くなりました。


 「職場にとってのレガシーとは 〜EquityとWell-beingとは何か〜」をテーマに開催された今年の「work with Pride 2021」。1日目は、小池都知事からのメッセージで幕を開けました。その中に「東京都でもパートナーシップ制度を進めていく」との言葉もありました。
 続いて「多様な家族のかたちと職場の未来」のパネルトークが行なわれ、TBSの久保田智子アナがモデレーターをつとめ、杉山文野さんとパートナーの方、松中権さんがお子さん二人を授かり、協力しあいながら育てているという、素敵なレインボーファミリー(にじいろ家族)についてのお話が繰り広げられました。昨年、明石市からファミリーシップ制度が始まっていますが、こうした多様な家族を公にも承認していこうとする動きが広まっています(明石市の増原さんが2日目の最後に登壇しています)

 それから、PRIDE指標についての発表。応募総数は300社(グループ連名の企業も合わせると573社)で、昨年の1.3倍となり、うちゴールドは237社に上り、過去最多となった昨年よりもさらに50社以上も多くなりました。シルバーが40社、ブロンズが21社、選定なしが2社となっています(2日目のパネルでReBitの薬師さんが「今回受賞にいたらなかったものの、それでも応募された2社こそ素晴らしいと思います」と語っていました。本当にそうですね)。初回の2016年が53社、2017年が87社、2018年が130社、2019年が151社、2020年が183社と、年を追うごとに(評価指標も少しずつレベルが上がっているにもかかわらず)ゴールド受賞企業が増えてきたかたちです(なお、OUT JAPANは他の企業・団体様とともにPRIDE指標の策定会議にも関わり、初回からずっとゴールドを受賞しています)
 主催する任意団体「work with Pride」の松中権さんは、「コロナ禍のなかでも皆様がしっかりと取り組みを進めて来られたこと、感謝申し上げます」と謝辞を述べました。
 今年のベストプラクティスは、INPEX「従業員サポートサービス提供企業への働きかけ」、スターバックス「レインボー学校プロジェクト」、ファミリーマート「岡崎市内の店舗にLGBTQ電話相談案内カードを設置」、みずほ・SMBC・MUFG「LGBTQアライメッセージ動画」が受賞しました(敬称略)

 PRIDE指標では今年新たに、コレクティブインパクトの取組みの実践に対して認定される「レインボー」というゴールド/シルバー/ブロンズとは別の(ゴールドの上位ではなく、付加価値として考えてください、とのこと)賞が設けられました。評価基準がどのようなことかということがあまり明らかでなかったなかでも、41社から応募があり、うち、10社が認定されました。今回は時間の都合で10社の取組みは発表されず、1月に改めて10社からのプレゼンが行なわれることになりました。
 3つ目のパネルトークはこのレインボーの評価委員となった大山みこさん(経団連ソーシャル・コミュニケーション本部上席主幹、CATCHY代表)、河野禎之さん(筑波大学人間系助教)、番野智行さん(特定非営利活動法人エティック ソーシャルイノベーション事業部事業統括/シニアコーディネーター)による「レインボー認定から考えるLGBTQ+とコレクティブ・インパクト」でした(評価委員の小島慶子さんはお仕事のため、別録り動画とコメントでの参加となりました)
 番野さんの説明によると、コレクティブ・インパクトとは、これまではバラバラに活動していたプレイヤーが力を持ち寄って世の中を大きく変えていこうとすることです。これまでのゴールド受賞企業は1社1社の取組みでしたが、社会を変えていこうとするとき、行政、学校、NPO、顧客でもある一般市民など様々なステイクホルダーがいる、そうした様々なセクターと連携して大きな力にしていこうとする取組みを評価していくために「レインボー」が設けられました。今回は、ある程度のインパクトや成果をすでにあげていて、今後の発展が見込める取組みが認定されたとのことです。大山さんは、パンテーン(P&G)の「#PrideHair サロン」プロジェクトが、ヘアサロンと連携し、LGBTQフレンドリーマニュアルの作成と普及を行なってアライを増やしていく取組みとして評価されたと紹介していました。河野さんは「初回から41件も応募があったことは驚きですし、希望が持てます。社会を良くしたいという思いを感じました」「一見、圧倒的に困難だと思われるような障壁にどう風穴を開けていくか、その有力な方法がコレクティブインパクトです」と語っていました。
 
 2日目は「経営者によるカミングアウトとは」のパネルトークから始まりました。
 岡部鈴さん(株式会社電通東日本経営企画部長)がモデレーターをつとめ、大隅聖子さん(株式会社リクシス取締役 COO、株式会社チェンジウエーブ取締役)、貴田守亮さん(EY Japanチェア・パーソン兼CEO)がパネリストとして登壇しました。大隅さんが15年来の女性パートナーがいる当事者としてこの場に登場されたこと、貴田さんが英国のINVOLVEが選ぶ「100LGBT+ Executives」の世界1位に選出されたこと、本当に喜ばしいことです。おめでとうございます。それぞれの方のカミングアウトのお話が語られた後、「経営者こそ、カミングアウト? ポジティブな未来に向けて」というお題で、経営者がカミングアウトすることで、可視化ということだけでなく、他の従業員みんながエンパワーされる(勇気付けられる)のではないかという意義について議論され、最後に「Equityとwell-being これからの企業・職場に必要なもの」というテーマで話し合われ、貴田さんが「仕事をこなしてくださいと言う前に、あなたは社会人として人として何を人生で成し遂げたいですかという問いかけを絶えず確認しあっていくことが重要だと思う」「心や体の豊かさを感じることができないと持続できない」と、大隅さんが「ここしかないとか、これしかないとか、この職種しかできないとう発想は絶対に捨てたほうがいい」と語っていたのが印象的でした。世界的に見ても、経営者でカミングアウトしている人は(アップルのティム・クックCEOなどはいるものの)まだまだ少ない状況ですので、日本でこうしたパネルが実現したことはスゴいことだと言えます。感慨深いです。

 2つめは「次の世代にとっての働き方と生き方」という若手のLGBTQ+Allyの方たちによるパネルトークで、辻愛沙子さん(株式会社arca CEO、Creative Director)がモデレーターをつとめ、合田文さん(パレットーク編集長、株式会社TIEWA代表取締役CEO)、星賢人さん(株式会社JobRainbow CEO)、藥師実芳さん(認定NPO法人ReBit 代表理事、国家資格キャリアコンサルタント)が登壇しました。10代20代の社会課題、ダイバーシティへの関心の高さがまざまざと伝わってくるお話で、合田さんは「いま、LGBTQはこれくらいいて、みたいな投稿をしても、みんな「知ってるし」という反応。ベースの知識が上がっている」と話していました。また、薬師さんが「ダイバーシティって完成することはなかなかないので、まだまだだと思っても、企業のみなさんは、取組みのことを一つ一つ発表していってほしい、当事者もエンパワーされます」と、星さんも「完璧さじゃなく、そこにいたるまでの過程、ストーリーに共感します。開示することで、真摯な姿勢が伝わると思います」と語っていたのが印象的でした。

 最後の「地方自治体での取り組みの今」では、吉田雄人さん(前・横須賀市長、一般社団法人日本GR協会代表理事)がモデレーターをつとめ、時枝穂さん(「Rainboww Tokyo 北区」代表)、永田龍太郎さん(元渋谷区総務部男女平等・ダイバーシティ推進担当課長)、増原裕子さん(兵庫県明石市政策局SDGs推進室LGBTQ+/SOGIE施策担当主任)という、自治体の中で活躍している方や、自治体に働きかけを行なってきた方(当事者コミュニティのなかでも先頭で活躍して来られた方たち)が登壇しました。当事者が自治体の内部にいて取組みを進めることについて、永田さんは「効果があった。職員や所管の事業に対してポジティブな後押しとなった。当事者がいない状態で進めることは難しいため、どこかに関わっていく必要があると思う」と語っていました。時枝さんは、市民の立場で自治体に働きかけを行なってきた方として「地方でカミングアウトが困難で、訴えることもできない状況だと、施策も進みづらく、停滞したまま」という問題提起をしながら、一方で、同性パートナーシップ証明制度が導入されていくことで「カミングアウトできる人がどんどん増えて、可視化につながった」と評価し、深みを感じさせました。それから、永田さんが「正直、自治体によって制度設計が異なっているので、相互利用は厳しい。それよりは、使える機会をもっとしっかり広げること、東京都であれば都営住宅への入居などを実現してほしい」と語っていて、本当にそうだなと感じさせました。明石市で自治体初のレインボー階段が常設化されるというお話もあり、素敵でした。今後LGBTQの観光名所になりそうです。
 
 「work with Pride 2021」の全体を通じて、これまでいろんな分野で活躍して来られたキーパーソンの方々が登場し、今がわかる、これからの方向性も見えるようなとても有意義なお話をしてくださって、たいへん素晴らしいカンファレンスだと感じました。
 また1月の発表の機会を楽しみにしましょう。

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