NEWS
英国が、アフガニスタンで死の危険に直面するLGBTQの一団を救出しました
アフガニスタンで8月にタリバンが政権を掌握して以降、同性愛者に対する迫害(虐殺)が進行しており、国際社会でなんとかアフガニスタン国内のLGBTQを国外に逃し、身の安全を確保できないかとの声が上がっていました。そんななか、英国政府と支援団体が救出に成功し、最初の一団を乗せた飛行機が英国に到着したというニュースが届きました。
こちらのニュースでもお伝えしたように、アフガニスタンはシャリーア(イスラム法)に基づく憲法を採用しており、イランなどと並び、同性間の性行為に死刑が適用される10ヵ国のうちの一つです。2001年のタリバン政権崩壊以降、実際には死刑は執行されてきませんでしたが、それでもLGBTQは国家、家族、そして広く社会からの暴力や差別に直面してきました。家族や親族による「名誉殺人」の犠牲になることもありました。そして今年8月15日にタリバンがアフガニスタン全土を支配下に置いたと宣言したことにより、再び同性愛者が殺されるようになると危惧されていました。
8月20日、BBCに、英語通訳の仕事をしたことがあるアブドゥルさん(仮名)というゲイの学生の方が(ぼかし入りで)出演し、「アフガンでは決してそのことを言えない。友人にも家族にも。家族に言えば、殺されるだろう」「私たちに未来はない」と語りました。「たとえ女性の権利を受け入れたとしても、彼らは決してゲイやLGBTを受け入れないだろう。彼らはLGBTQをその場で殺すだろう」「私はどうにか国外に出る道を探っている」
10月20日のニューズウィークの記事は、チェチェンでの迫害以来の悲しみと憤りを感じさせるものでした。
「複数のタリバン兵が彼を散々殴った後どこかに連れて行き、誰も知らないところで殺した。その後、彼の遺体を持ち帰ってバラバラに切断し、これが同性愛男性に対して行うことだと人々に見せつけた。彼は24歳だった」
アフガニスタンのある同性愛者男性は、英iニュースに対し、こう語りました。殺されたのは彼のパートナーです。
この世には神も仏もいないのか!と天を仰ぎたくなるような、胸が締め付けられるような内容でした。
独『ビルト』紙は7月、タリバンの裁判官が「同性愛者に対しては、石打ち刑か、(倒れる)壁に押しつぶされる刑罰しかない。壁の高さは2.5~3メートル必要だ」と話したことを伝えています。
アフガニスタン系アメリカ人のLGBT活動家ネマト・サダトは、救うべき在アフガンのLGBTのリストを作成して米国務省に提出しましたが、すでに米軍が撤退したため、彼らの退避は極めて困難だということでした。
ゲイの人たちは、絶対に他の人にバレないよう、息を潜め、恐怖におののく日々だそうです。
そんな絶望的な状況のなか、英国が、彼らの救出に初めて成功しました。
10月29日、29名のLGBTQを乗せた飛行機がアフガニスタンを脱出し、無事に英国に到着したのです。最初の一団の中には、LGBTQの権利のために立ち上がってきた学生や活動家が含まれていました(アブドゥルさんもいたでしょうか)
これは、英国を代表するLGBTQ団体「Stonewall」と、迫害を受けるLGBTQの第三国定住を支援する団体「Rainbow Raiload」が政府に働きかけ、外務大臣の助けによって実現したものです。
外務大臣と女性・平等大臣リズ・トラスは、「英国は、迫害から逃れようとする人々の、自分が自分であること、自分が誰を愛するかということに関する権利と自由のための果敢な行動のチャンピオンだ」と述べました。「彼らを逃すことに中心的な役割を果たしたし、これからもそうするつもりだ」
英国政府は「The Afghan Citizens Resettlement Scheme(アフガン市民再定住機構)」を設立し、8月末から通算1300名を救出してきました。今後、もっと多くの人が英国に到着することを望んでいるそうです。
「カブールの陥落以来、Rainbow Railoadは危険に直面するLGBTQの安全の確保に努力してきました」と、同団体のエグゼクティブ・ディレクター、キマーリ・パウエル氏は述べました。「他の組織と協働し、私たちは直接的に、何十人もの人々を安全な国に輸送してきました。Stonewallや政府に感謝します。これは私たちがアフガニスタンで支援している何百人ものLGBTQの最初の一歩です」
「今後も英国政府や、危険にさらされている人々を救う準備ができている他の政府との協働を期待しています」
「この危機に際し、Stonewallは他の支援団体とともに、LGBTQがアフガンから脱出するうえで最も優先度が高いグループであると認知されるよう、国際的な支援を呼びかけてきました」と、Stonewallのチーフ・エグゼクティブのナンシー・ケリー氏は語りました。
「この数ヶ月間、私たちは政府やRainbow Railoadと四六時中やりとりし、LGBTQの安全を確保するために行動してきました。今日、LGBTQの最初の一団が着いて、英国で新しい生活を始められることを誇りに思います。しかし、まだ終わったわけではありません。世界に呼びかけ続けます。まだアフガニスタンに残されている人たちがいます」
どのようにして英国がLGBTQの救出に成功したのか、詳しいことはわかりませんが、国外脱出の道が拓け、命がつながったのは、本当によかったですね。希望が持てます。今後、さらに多くの方たちが、殺される前に、無事に脱出できることを祈ります。
参考記事:
First group of LGBTQ+ Afghans arrive to resettle in the UK(GAY TIMES)
https://www.gaytimes.co.uk/life/first-group-of-lgbtq-afghans-arrive-to-resettle-in-the-uk/
LGBT in Afghanistan: 'I could be killed on the spot'(BBC)
https://www.bbc.com/news/newsbeat-58271187
リンチの末、見せしめに遺体をバラバラに...タリバン「LGBT狩り」の恐怖(ニューズウィーク日本版)
https://www.newsweekjapan.jp/iiyama/2021/10/lgbt.php