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IOCがトランスジェンダーなどの選手の国際大会への参加資格についての新指針を発表
IOC(国際オリンピック委員会)は16日、トランスジェンダーなどの選手について、国際競技団体が大会への参加資格を作るうえで参考となる新たな指針を発表しました。「いかなる選手もジェンダーアイデンティティやフィジカルな性の多様性を理由に競技から排除されるべきではない」と謳われており、差別を受けないことや公平性の原則を強調したものとなっています。来年の北京冬季大会後に展開される予定です。
IOCは、トランスジェンダーの選手や、テストステロン(いわゆる”男性"ホルモン)の値が高い女子選手の国際大会への参加資格について、およそ2年かけて、250人を超えるアスリートや人権問題の専門家などとの議論を重ねてきました。この結果をまとめ、国際競技団体が国際大会の参加資格を作るうえで参考となる、新たに策定した指針を16日に発表しました。
東京五輪でも適用されたこれまでのガイドライン(2015年に定められたもの)では、トランス女性について、テストステロンが1年間、基準値を下回れば女子競技に出られるとされていました(トランス男性については出場の規制はありませんでした)
新たな指針では、▽差別がないこと、▽公平であること、▽証拠に基づいたアプローチであることなど、10の項目について、それぞれ基本的な考え方がまとめられていて、「参加資格は選手がジェンダーアイデンティティやフィジカルな性の多様性によって、構造的に大会から排除されることがないよう、公平性を持って作られなければならない」「資格基準を満たすために医学的に不必要な手順や治療を受けるよう、各国際競技連盟(IF)やスポーツ団体から圧力をかけられてはいけない」とされています。
IOCは「エリートレベルの大会に関わるすべての人にとって、安全で寛容な環境を推進することを目指している」と述べたうえで、「ある選手が他選手と比べて不当なアドバンテージを得る形に、どのようなものがありえるのかは、各競技と統括団体の権限で判断しなければならない」としています。今回示した基本原則は法的拘束力のあるものではなく、判断は各連盟に委ねる方針です。IOCの選手部門ディレクターは「各連盟とケースバイケースで、何が必要かを見極めながら進めていかなければらない」と述べました。
今年の東京大会では、ウエイトリフティング女子にニュージーランドのローレル・ハバード選手がトランス女性として初めて出場し、歴史に名を残しました。
一方、ロンドン大会とリオデジャネイロ大会の陸上女子800メートルで金メダルを獲得した南アフリカのキャスター・セメンヤ選手は、テストステロンの値が先天的に高く、薬の服用などによってテストステロン値を下げなければ国際大会に出場できないとする世界陸連の規定により、東京大会に出場できませんでした。(セメンヤ選手の問題については、こちらの記事もご覧ください)
参考記事:
IOC トランスジェンダーなど 国際大会への参加資格の新指針(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211117/k10013350941000.html
男性ホルモン値定めた指針改定 女子競技への出場など―IOC(時事通信)
https://www.jiji.com/amp/article?k=2021111700475
IOC、トランスジェンダー巡り新指針 10項目の原則提示(日経新聞 / 共同通信)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOKC176N00X11C21A1000000/
五輪=IOC、トランスジェンダー巡り新指針 拘束力なし(ロイター)
https://jp.reuters.com/article/olympics-ioc-idJPKBN2I20AC
IOC、トランスジェンダーの出場基準設けず 各団体に判断委ねる(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3376267