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静岡県が来年同性パートナーシップ証明制度導入の意向、10月1日には全国9つの自治体で制度がスタート
静岡市が来年4月から同性パートナーシップ証明制度を導入する方針を示しました。9月27日の市議会9月定例会で大長義之副市長が明らかにしました。
宣誓書を市に提出することで証明書が交付され、市営住宅の入居や市立病院における手術などでの親族としての同意が認められるほか、LGBTQへの理解促進に向けた企業向けのガイドラインも作成し、結婚している夫婦と同様のサービスを受けられるよう企業に働きかける予定だそう。当事者や支援団体などの声を聞いたうえで、制度の内容をさらに検討していきます。
静岡市が6月に実施した市民意識調査では、回答者972人のうち78.2%が「LGBTという言葉を知っている」と回答、79.6%が「制度の導入に賛成」と回答していたそうです。
大長副市長は「性的少数者への理解を深め、生活の利便性向上や安心感につながる実効性のある制度になるように取り組む」と述べました。
制度は県内では、浜松市、富士市が導入していて、島田市や湖西市など複数の自治体が導入を検討しています。
続いて10月1日には、静岡県が2022年度中に全県で導入する意向を発表しました。県議会で複数の議員から質問が上がり、川勝平太知事は、「当事者が安心感や自己肯定感を得られるだけでなく、性の多様性への理解促進にも大きな効果がある」「県内のどこに住んでいる人でも公平に利用できる広域的な制度にする」と答弁しました。
静岡県は制度の詳細を今後、検討していきます。「承認された同性カップルを戸籍上の家族と同様に公営住宅に入居できるようにしたり、公立病院での手術同意などに関して家族と同様に扱ったりすることを視野に入れている、制度で当事者が行政に認められることによって、自己肯定感を得られる心理的な効果も大きいと見込んでいる」とのことです。
実現すれば、都道府県単位での導入としては、東海地方(中部地方)で初となります。
そして10月1日、全国各地の自治体で同性パートナーシップ証明制度がスタートしました。
滋賀県彦根市は、滋賀県で初めて「パートナーシップ宣誓制度」を導入しました。「パートナーシップ宣誓制度」については他の多くの自治体と同様、要綱で定めていますが、それだけでなく、9月定例議会で条例を改正し、宣誓を行なったカップルが、市営住宅への入居や市犯罪被害者遺族見舞金について夫婦と同様に扱われること、パートナーによる罹災証明書や救急搬送証明の申請なども認めました。
今年4月に初当選した和田裕行市長は、性的マイノリティの旧友がいて、以前からLGBTQイシューに関心があったそうです。和田市長は「法的な権利・義務を付与する制度ではないが、性的マイノリティに関する市民の理解が広がり、多様な価値観を認め合う社会が実現できることを期待する」と述べました。
彦根市公式サイトの制度についての説明のページを見ると、彦根市の宣誓受領証およびカード(パートナーシップ証明書)には、ひこにゃんの画像がデザインされているようです(かわいいです)
沖縄県浦添市は、今年3月に制定した「性の多様性を尊重する社会を実現するための条例」のなかで、・市長がパートナーシップ宣誓証明書を交付できる、・市や市民、事業者は、市長が交付するパートナーシップ宣誓証明書を提示されたときは、この条例の基本理念を尊重し、公平に取り扱うよう努めなければならないと定めています。この条例が今日から施行されました。
浦添市のパートナーシップ宣誓証明を申請した伊是名美沙さんと笹川優衣さんのカップルのことが沖縄タイムスの記事になっていました。伊是名さんは中学生の頃、女性が恋愛の対象であると周囲に知られてしまい、問いただされたり、ちゃかされたりした経験から心に傷を負っていたといいます。「女性を好きになってはいけない」「この気持ちは、周りに知られてはいけない」と思い悩んできた伊是名美沙さんを変えてくれたのは、2018年に市内の長距離走のイベントで知り合った笹川さんでした。「自由に人を好きになっていいんだよ。きっと理解してくれる人は増えていく」。伊是名さんは両親や職場にパートナーシップ宣誓をするとのカミングアウトを決断しました。
宣誓式には、3年越しの取り組みで条例の施行にこぎつけた市のスタッフが集まり、花束を贈って大きな拍手で祝福。お二人は「幸せです」と笑顔を見せました。
埼玉県久喜市、埼玉県毛呂山町、埼玉県川島町(ファミリーシップも)、岡山県備前市、広島県安芸高田市(広島市と相互利用協定)、佐賀県唐津市、熊本県大津町でも「パートナーシップ宣誓制度」が導入されました。
それから、埼玉県入間市では、9月20日に第1号のカップルがパートナーシップ宣誓の手続きを行ないました。40代会社員の方は、「互いの身に何かがあった時、家族と証明できないと病室に入れないことがあると聞いたことがあり、悲しかった。将来的には扶養制度を採り入れてほしい」と語りました。20代のパートナーの方は、「全国的な制度になっていくことが理想」と語りました。
北海道の函館市では、来年4月導入予定の「パートナーシップ制度」の方針がまとめられました。制度の趣旨に「性的少数者への理解が進み、一人一人がかけがえのない個人として尊重される」ことを明記するそうで、対象者は市内在住者だけでなく市内在勤や在学の方まで認め、門戸を広げるそうです。
同じ北海道の北見市も「パートナーシップ制度」導入を検討中ですが、こちらの記事によると、辻市長は「来年のできるだけ早い時期の制定を目指す」と述べているそうです。
それから、神奈川県寒川町でもパートナーシップ宣誓制度が創設されます。現在パブリックコメント(公の意見を募集)実施中です。
「みんなのパートナーシップ制度」によると、10月1日現在、全国で同性パートナーシップ証明制度を導入済みの自治体は126に上り、人口カバー率は41%に達したそうです。
こうして(地方によって偏りはあるものの)全国の自治体で続々と、「同性カップルも異性婚の夫婦も同等ですよ」と承認する動きが広がりを見せていること(その一つひとつに、地元の当事者の方の働きかけがあったり、様々なドラマがあるかもしれません)、本当にうれしいですね。
しかし、ビジネス+ITの「118の自治体が導入「パートナーシップ制度」、見えてきた“限界”と国が取り組むべきこと」という記事でも述べられている通り、差別偏見を解消するためには国の取り組みが必要不可欠です。
婚姻制度に基づいて結婚した異性の夫婦は、(1)「家族」の証明:戸籍、(2)夫婦の共同生活:扶養義務・社会保険など。夫婦の一方が外国人の場合、在留資格、(3)子の監護・育成:夫婦の共同親権・社会保険など、(4)別離を保障:離婚時の財産分与や死亡時の相続・相続税の配偶者控除など、といった法的保障を受けていますが、このような法的保障は同性カップルには一切及びません。自治体パートナーシップ制度には、2人の関係を自治体が公的に認知するという意味で限定的に(1)の機能はありますが、(2)(3)(4)の機能はありません。そして、自治体のなかで限定された制度であるため、引っ越して自治体を離れると、それまでです。
たとえ全国100%の自治体で同性パートナーシップ証明制度(関係の証明に関するほんのわずかな権利)が認められたとしても、同性カップルには扶養や社会保険、相続、税制などに関する社会保障は一切認められず、40年以上連れ添ったパートナーの火葬に立ち会えず、共同経営の会社も親族に奪われるという悲劇、パートナーを殺害されても犯罪被害遺族給付金の支給が認められないという不条理が消えることはありません。Kanさんのように、外国人のパートナーと日本で結婚できない以上、海外移住を余儀なくされた方もいます。最愛のパートナーと結婚するという願いが叶えられないまま他界する方もたくさんいます。
1日も早く、結婚の平等が認められる日が来ることを願います。
参考記事:
同性カップルに証明書 静岡市方針、来年4月から(中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/article/337614
LGBTカップル公認へ 静岡市、2022年4月に制度導入方針(静岡新聞)
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/964812.html
パートナーシップ宣誓制度 県内初、きょうから導入 手続きで受領証カード交付 彦根(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20211001/ddl/k25/040/314000c
LGBTカップル 認証へ(読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/local/shiga/news/20211001-OYTNT50062/
「女性を好きになってはいけない」悩んできた自分を変えた出会い 新たな門出「幸せです」(沖縄タイムス)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/840467
LGBTカップル 婚姻相当に認定 備前市 パートナー制度10月導入(山陽新聞)
https://www.sanyonews.jp/article/1180991
将来は「扶養制度を」。理想は「全国に」。 パートナーシップ宣誓 入間市「第1号」手続き(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/132561
性的少数者カップルのパートナーシップ制度 函館市方針 市内在勤、在学もOK
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/594439
パートナー制度 全県導入方針 静岡県議会一般質問、川勝知事答弁(静岡新聞)
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/966990.html