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大津市が市の公式サイトに保育園児の性別違和や受診歴を無断で掲載し、両親が「アウティング」だと提訴しました
大津市が市立保育園の年長園児(6歳)の性別違和や受診歴を保護者に無断でホームページに掲載したとして、両親は昨年末、「アウティング」だと批判し、当該部分の削除を求めて提訴しました。大津市は1月18日に削除しましたが、両親は、市に謝罪と経緯の説明を求めています。
朝日新聞の記事によると、園児は戸籍上は男の子ですが、3歳頃から「自分は女の子」と語り、妹の服を着たがったといいます。年少までは少人数の保育施設で、女児向けの服で遊んでいました。しかし、2019年4月、市立保育園に入園すると、状況は一変、「"おとこおんな"と言われた」「1回死んで女の子になる」と話すようになったそうです。母親は担任に相談するも、「じゃれあい」「成長過程です」と言われ、対応してもらえませんでした。園児は登園をしぶり、泣き出すようになりました。両親は県内外の精神科医を訪ね歩き、11月に性別違和の診断を受けました。結果を園側に説明しましたが、入園前に「やらない」と言われていた男女別のグループ分けが実施され、園児は仲間はずれに…。別の園児から「どうしてかわいい服なの?」と聞かれ、本人が「体は男だけど心は女やねん」と説明すると、「うそつき」と叫ばれ、他の子にも言われ続けたといいます。別の日には母親が送迎時、腹部に連続パンチを受けているのを目撃。保育士に伝えましたが「あとで確認します」と言われ、それきりに…。
2020年9月、園児の体に不調が表れはじめ、母親は園だけでなく市のいじめ対策推進室に相談。園児本人も嫌だったことを伝えようと職員と面談しました。市は11月、文書で両親に謝罪。「いじめであると考えられ、成長過程の中で起こったことという言葉だけでは収まらせず、もう一歩踏み込んだ支援が必要であった」としました。
園児は現在、円形脱毛症や適応障害の症状があり、登園できていません。「死にたい」と口にすることもあるそうです。
園は朝日新聞の取材に対し、トイレや着替えなどで園児に配慮し、性の多様性を子どもたちに説明する時間も設けたと説明。そのうえで、「至らない点があったのは確かだ」としました。
両親の代理人である石田達也弁護士は「きちんと検証し、再発防止策を講じてほしい」としています。
一方、市の公式サイトに無断で掲載された件については、園児の母親(35歳)が昨年秋、知人から連絡を受けて知ったといいます。
訴状によると、性別違和との受診歴などが公開されたのは、大津市公式サイトにある保育園のページの中の、市立保育園の課題や取組みをまとめた2019年度の「保育園評価書」(PDFファイル)。この文書には、"心と体の性が一致しない"園児への配慮の必要性などに触れた記述の中で、実際に通っている園児について、匿名ではあるものの「今年度入所した4歳児が、自分の身体の性に違和感を感じる訴えをしたことをきっかけに、11月に受診された」「LGBT対にする知識や認識を職員が高めていくようにする」と書かれていました。
2019年度入所の4歳児はわずかであるため、園児のことが容易に特定されてしまう、「もう大津で暮らせない」と感じたそうです。社会全体で問題意識を持ってほしいと考え、昨年12月25日に提訴しました。
結果、市は1月18日に当該部分を削除しました。所管する幼児政策課は「15日に保護者から依頼があり、削除した。園児が限定されるような表記があり、非常に申し訳なく、保護者におわびしたい」としています。
両親は提訴を取り下げる方針です。しかし、母親は「アウティングは人の生命に関わる危険な行為。市から謝罪と経緯の説明を受けておらず、原因究明と再発防止を徹底してほしい」と語っています。
園を管轄する市幼児政策課によると、評価書は民間を含む全園が作成するもので、市立保育園は全て市の公式サイトで公開しています。園児側に事前説明はしていなかったといいます。
昨年7月末には掲載されていたそうです。
大津市は2017年、LGBT当事者に寄り添い、市民の皆さんが課題への理解を深めていただくよう、また対応に向けた積極的な姿勢を明確にするため「おおつレインボー宣言」を発しました。
2018年にはLGBT支援施策推進会議を立ち上げ、具体的な支援策について検討を始めました。
2019年には啓発冊子「LGBTって何だろう?」を発行するとともに、職員向けのガイドラインを作成し、職員に周知をはかりました(どちらにも「アウティングの禁止」が謳われています)
昨年には、当事者への理解、支援に関する取組のためのアドバイスを行うことを目的として、「LGBT啓発推進アドバイザー」を市内事業所や各種団体に研修講師として無料で派遣する事業を行っています。
こうして見ると、大津市は決してLGBT施策を進めてこなかったわけではありません。むしろ、いろいろと積極的に取り組んできたほうです。
それでも、今回のようなことが起きてしまいました…。おそらく市立保育園への啓発(研修など)は実施されていなかったのでしょうし、市の職員も(ガイドラインに記載されていたにも関わらず)アウティングについての問題意識が足りていなかったのでしょう。園児の母親が語っているように、きちんと原因を究明し、再発防止に真摯に取り組んでいただきたいと願うものです。
参考記事:
「性に違和感」同意なくHPに 園児両親、削除求め提訴(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASP1K7JNLP19PTJB005.html
園児の「性別への違和感」や受診歴、無断でHP掲載 両親「アウティングだ」市に謝罪と説明要求(京都新聞)
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/473257
園児の性違和感を大津市HP公開(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20210118/2000040076.html