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日本で初めてゲイであることをカミングアウトした牧師の平良愛香さんのインタビュー記事が掲載されました
1月12日、「日本で初めて、男性同性愛者であることを公表した上でキリスト教の牧師になった沖縄出身者」として沖縄タイムスに平良愛香さんへのインタビュー記事が掲載されました(Yahoo!ニュースでご覧になった方も多いことでしょう)
平良愛香さんは1998年、日本基督教団の牧師試験に合格し、ゲイであることをカミングアウトした初めての牧師となりました(当時、教団内では賛否両論が起こったそうです。また、新聞のニュースにも取り上げられました)。平良さんはもともとゲイコミュニティのメンバーでもあり、ゲイ雑誌『バディ』にインタビューが掲載されたり、パレードで歩く姿もすっかりおなじみで、東京では身近な存在でしたが、おそらく沖縄タイムスの記者の方が、沖縄出身でそのような人がいるのか!と平良さんを再発見し、今回のインタビューにつながったのでしょう。
ご存じのように、キリスト教(の一部の宗派)は同性愛を罪であるとして非常に厳しく抑圧してきました(親がゲイやレズビアンの子を「コンバージョンセラピー」の施設に送り込んだり、家を追い出したり、という悲劇につながってきました)
平良愛香さんのご両親も(お父様は牧師さん)、男の子でも女の子でも使えるような名前だと思って「愛香」と名付けるくらい進歩的な方たちだったのに、いざ、愛香さんからカミングアウトを受けると、初めはとても厳しい反応を示したそうです。そのカミングアウトの時のエピソードが、とても身につまされ、感動的でもあり、行間から人間味がにじみ出てくるような、素敵な文章でしたので、ご紹介します。
ー両親にはどのようにカミングアウトしたのですか。
愛香さん「群馬の短大を卒業して、牧師になろうと決意した時にカミングアウトしました。24歳の時だったと思います。沖縄に帰って話をする前に両親に電話して、『うれしい報告とショッキングな報告があります』と伝えました。いざ実家に帰ると、牧師の父も母も報告する前からニヤニヤ。牧師になることを伝えると、父は『そうだってね~』とうれしそうでした」
「2つ目の報告で『ゲイです』と伝え、『カミングアウトして牧師になろうと思います』と言った時、両親は絶句しました。そこには『そうだってね~』とは返ってきませんでした。僕はこの頃までに何人かにカミングアウトしていましたが、みんな丁寧に受け止めてくれました。両親は僕がゲイであることをまったく気付いていなかったようです」
「母からは『質問が2つあります』と言われました。『それは育て方に原因があるの?』と聞いてきたので、僕は『なかったと思うよ』と答えました。『もし育て方に影響を受けたとしたら、自分らしく生きなさいと言われていたから、自分が同性愛者だと気付いた時に同性愛者として生きていこうと決断ができたと思うよ』と話しました。次に『それは治らない?』と聞かれたので、僕は『治る・治らないと言われると、異性愛が正常で、同性愛が異常となるので、その質問には答えられません。ただ、異性愛に変わる可能性はないのかとの質問には答えられる』と話しました」
「母は質問を訂正して『異性愛に変わる可能性はないの?』と聞いてきたので、『無いと思うよ。もう25年近く同性愛者で生きてきたから。いまさら変えられるとしても、これは僕の大事な部分だから、変えたくない』と言いました。母は当時の話をされると嫌がると思いますが、『あなたがカミングアウトして牧師をするんだったら、これ以上苦しむのは見たくないから、私が死んでからにして』と言いました。その後すぐ『やっぱり今の撤回!』と続けたんです。たぶん、そんなことを言うべきではないと、とっさに思ったのでしょうね。『あなたがそうやって生きていこうっていうんだったら、親として応援したいから勉強させてほしい』と言われて、この日は遅くまで母と2人で話し込みました」
ーカミングアウトして、すぐその日でそうなったんですか。お母さんすごいですね。
「母は、すごく切り替えが早かったです。その時に受け入れたかどうかは分かりませんが、応援したいと言われたことがうれしかった。母は一瞬のうちに、いろんなことが駆け巡ったみたいです。それから随分と後のことになりますが、母は『うちの子どもたちの中で、愛香が一番何考えているかわからなかった。一番遠くに感じていたけど、愛香からカミングアウトされて、いろんなことを知っていく中で、全部つじつまが合ってきた。だから今までで一番、愛香を近くに感じる』って言われました。母は『私は嬉しいの』って言って、あのTシャツを作ったんですよ。黒地に銀色の文字で『わたしの自慢の息子はゲイです』と書かれたTシャツです」
ーお父さんは理解されたのですか。
愛香さん「父は時間がかかったんですよ。丁寧な人なので、ゲイであることを頭ごなしに否定する人ではないんですけど。カミングアウトした夜は、僕と母が一通り話したことを、じっと横で静かに聞いていました。もう遅いので寝ましょうとなった時、父は何のコメントもないまま寝室に入っていきました。その夜、父が何を考えていたかは全然知りません。翌日、2人で家の近くの佐敷の海辺を散歩したんです。子どもの頃いつも、ちんぼーらー(貝)を捕っていた場所です。父は歩きながら『昨日、愛香があまりにもびっくりするようなことを言ったので、神学校に行くと言ったことに対する応答すらできなかった。あらためてオメデトウと言いたい』と祝福はしてくれました」
「でもその後、『愛香がね、自分のことをゲイだというのは、まだ素晴らしい女性に出会っていないから、そういう風に自分のことを思っているんじゃないかなと父親としては受け止めたい。なので、素晴らしい女性に出会えるように祈ろうと思う』と言われました。僕は『どうぞどうぞご自由にお祈り下さい』と思ったのを覚えています。父を変えたのは、母でしょうね。父が『愛香はいつすてきなお嬢さんと出会えるのかな』みたいなことを言おうものなら、母は『愛香はゲイなのよ。いつまでそんなこと言ってるの』と諭していました」
正直で、人間味あふれる、本当に素晴らしいご両親ですよね。愛香さんもそんな感じの方です。まさに愛の人です。
今は緊急事態宣言下で、平良愛香さんがいらっしゃる川和教会も礼拝を中止しているそうですが、もしゲイの牧師である平良さんのお話を聞いてみたい、どんな人なのかもっと深く知りたいという方は、取り急ぎ、著書の『あなたが気づかないだけで神様もゲイもいつもあなたのそばにいる』を手にとってみてはいかがでしょうか。平良愛香さんのライフヒストリーも詳しく書かれていますし(感動ポイントが本当にたくさんあります。きっと泣けると思います)、聖書の中で同性愛を「罪」と見なす根拠とされている箇所についてどう考えるか(たいへん説得力があります)といった話も貴重です。教義との矛盾に悩んでいるLGBTのクリスチャンの方への「福音の書」ともなっています。
参考記事:
「僕はゲイ」性と信仰どちらも大事に生きる 日本初 同性愛を公表し牧師になった男性(沖縄タイムス)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/691319
「人と違うことはかっこいい」同性愛者を公表して牧師になった平良愛香さんインタビュー【WEB限定】(沖縄タイムス)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/691144