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福岡市の中学校で導入された「選べる制服」の販売店が陳列や表記を「男女分け」したことが問題に
福岡市では今年度から、性的マイノリティの生徒への配慮として、市立中学校でスラックスかスカートを選べるブレザータイプの標準服を導入しましたが(北九州市でも同様だそうです)、販売店によっては、陳列や表記が男女分けされていた(トランスジェンダーへの配慮がなかった)ことが明らかになり、問題視されています。
福岡市の新標準服は、動きやすさや寒暖、自身の性自認などに合わせ、スラックス、キュロット、スカートのいずれを着るか性別に関係なく選べるようになっています。
ところが、福岡市内在住の40代男性が、わが子の中学入学を控えた昨冬、市内の学生服販売店のWebサイトを覗くと、「1型(男子向け)」「2型(女子向け)」と性別ごとに表記されていて、違和感を覚えたそうです。また、店頭の陳列棚にも「男子カッターシャツ」「女子ブラウス」などと男女別で表示されていました。後日、わが子と一緒に店を訪れた同級生の中には「大人にだまされた」とショックを受けた子もいたそうです。男性は「新標準服があるから福岡市に引っ越そうという家庭もあると聞く。せっかくの良い取り組みに販売店が水を差すことになっている」と語っています。
市教育委員会によると、新標準服の縫製は主に大手4メーカーが受託し、市内数十の直営店や取扱店で販売されていて、販売にあたっては市教委がメーカーを通じて「見た目の性別で商品を案内せず、本人の意思で自由に選ばせてほしい」と依頼しているそうです。しかし、この店の店長は、西日本新聞の取材に対し、「ブレザーやシャツは体形に合わせて2種類がある。判別しにくいと困る人もいると思い、男女表記を加えた」と、そのうえで「マネキンにも習慣で『男らしい体形』には『男子向け』を着せていた。指摘を受け、無意識に決めつけていたとハッとした。お客さまに申し訳なく思っている」と語りました。今後は性差の少ないマネキンを使用したり、便宜上必要な場合は「一般的な女性体形」と示すなどして工夫するそうです。
なお、福岡市と同様に今年度から全市立中学校で制服の選択制を導入した北九州市では、販売方法の指示は特にしておらず、店では受託メーカーで統一した「1、2型」の呼称が定着しているそうです。
福岡県内のある自治体担当者は「具体的な指導は行政による口出しになりかねない」と、販売店への周知徹底の難しさを語ったそうです。
全国的に見てもかなり早い時期に制服選択制を導入した福岡市立警固中学校の元PTA会長である後藤富和弁護士は、「自治体主導で販売店や教師の研修会を開くなど、子どもたちが自分の気持ちに素直になって選択できるような環境をつくることが、私たち大人に求められている」と語っています。
(ちなみに、後藤弁護士が制服選択制を導入した当時のことを語ったインタビューがこちらに掲載されています。トランスジェンダーの生徒が中学時代、学校に着いたら教師に取り囲まれ、だまし討ちのように制服を着せられた、地獄だったと泣きながら語るのを聞いて、このままではいけないと決意したそうです)
自治体がせっかく選べる制服を導入しても、販売店側に性的マイノリティへの配慮という意図が伝わならければ、今回のように当事者の子がショックを受けてしまうことにもなりかねず、今後の大きな課題と言えます。後藤弁護士も語っているように、メーカーや販売店など関係する企業の方々への研修会を開くなどの対応が求められそうです。
参考記事:
性差なくすはずでは…新標準服、男女別に販売 長年の慣習?福岡市(西日本新聞)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/649212/