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国勢調査において同性カップルの集計・発表を実現するための「レインボー国勢調査プロジェクト」が発足、国に要望書を提出へ
⼀般社団法⼈「Marriage For All Japan ̶結婚の⾃由をすべての⼈に(以下、MFAJ)」と共同発起団体8団体が、国勢調査において同性カップルの集計・発表を実現するための「レインボー国勢調査プロジェクト」を発⾜させ、8⽉20⽇に超党派LGBT議連に、25⽇には総務省に要望書を提出することを発表しました。
要望書提出に先立つ19日、同性パートナーシップ・ネット共同代表の池⽥宏さん、認定NPO法⼈虹⾊ダイバーシティ代表の村⽊真紀さん、⾦沢⼤学准教授の岩本健良さん、群馬県のセクシュアルマイノリティ⽀援団体ハレルワ代表の間々⽥久渚さんが登壇し、オンライン記者会見「100年目の国勢調査をレインボーに〜同性カップルを数えることで全ての人が幸せな社会への前進を~」が行われました。そちらで発表されたお話も含めて、国勢調査における同性カップルの集計・発表の必要性や意義について、お伝えします。
国勢調査データは、人口、世帯、住宅、就労状況等、人々の暮らしぶりの基礎となる情報で、政策決定の基礎情報として使用されるのはもちろん、学術研究や自治体、民間企業にも貸し出され、選挙区別国会議員定数算定などにも使用される、国の基幹統計となる非常に重要なデータであり、公共的な共有の財産です。しかし、そのような重要なデータであるにも関わらず、同性カップルの存在は反映されていません。そのことは、国勢調査の「データによる正確な状況の把握」という姿勢にも反しますし、統計法第六十条(「基幹統計の作成に従事する者で基幹統計をして真実に反するものたらしめる行為をした者」への処罰規定)にも違反するのではないでしょうか?
国勢調査は国内に住むすべての人・世帯を対象に実施されている全数調査で、住民票などの届け出とは無関係に、世帯の実態を調査するもの。そして、時代とともに、より情勢に合った形で行われるよう、毎回有識者会議で検討が行われ、修正が加えられています※
1920年に初めての国勢調査が行われた際は、法律ではまだ定められていなかったにも関わらず、事実婚や内縁関係のカップルも婚姻として回答することができました。法制度に先立って、調査が実施されたのです。では、なぜ同性カップルは調査から排除されるのでしょうか?
※国勢調査における調査項⽬追加の歴史
国勢調査で明らかにされる調査事項はこれまで、時代の変化に応じて変化してきました。例えば、昭和35年には⾼学歴化や収⼊源の多様化という変化を受け、「教育」や「家計の収⼊の種類」が調査事項に追加されました。また、昭和60年からは家族のあり⽅が多様化したことに伴い、従来の集計に加えて「⺟⼦世帯の統計」も始まりました。さらに平成7年からは国際化の進展から、「外国⼈のいる世帯の世帯構成や居住状況」が明らかにされてきました。このように、国勢調査は社会のあり⽅に呼応しながらこれまで少数とされてきた⼈々にも焦点を当てて調査も⾏っています。統計法の⽰すところの国勢調査とは、「本邦に居住している者として政令で定める者について、⼈及び世帯に関する全数調査」です。より正確に⽇本のいまを把握するためにはより⼀層の調査項⽬の充実が求められています。(参考資料:総務省統計局国勢調査100年の歩み)
世界に目を向けてみると、カナダやオーストラリア、ニュージーランドなどは2000年代から、英米仏なども2010年頃から同性カップルを国勢調査で集計・公表しています。
世界銀行と国連開発計画は、SDGsと紐づけた「LGBTI Inclusion Index」という指標を示していますが、5つの指標のうち「政治・市民参加」のトップに「統計調査でLGBTIQを排除していないか(性的指向、性自認、性別の多様性を包括しているか)」という項目が設定されています。
経済協力開発機構(OECD)が2019年に発表した「図表で見る社会2019(Society at a Glance 2019)」では、LGBTに焦点を当てた特別章が設けられ、「LGBTの存在と、彼らが被る不利益を国の統計で可視化することは、LGBTの人々の社会的包摂の前提条件である」とされています(ちなみに日本のLGBTQ受容度は加盟国36ヵ国中25位でした)
日本でも2010年の国勢調査の時から、上川あや世田谷区議が問い合わせて、同性カップルとして回答した場合「誤記」として「その他」扱いとなることが明らかになって、問題意識が広がり、松浦大悟参議院議員が国会で、外国で同性婚した日本人同性カップルについて国勢調査でどう扱われるのかとの質問を行ったり、共生ネットが総務省統計局に「同性カップルを集計・発表して下さい」と申し入れるなどの動きが始まりました。
2015年の国勢調査の際も、いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン、EMA日本、共生ネット、パートナー法ネット、LOUD、レインボー金沢の6団体で同性カップルを集計・公表できるようにと要望が行われましたが、聞き入れられませんでした。ちなみに2015年からWebでも回答できるようになり、システム的には同性カップルも「世帯主」と「配偶者」で回答できますが、そうした回答は統計局内で修正され、修正前のデータも提供されませんでした。
2015年以降、自治体の同性パートナーシップ証明制度が全国に広がりを見せ、名乗り出るのは勇気が要るかもしれないような地方の町も含めて1000組以上のカップルが、家族と認められたいという思いで、パートナーシップの申請をしています。
同性カップルの存在は「誤記」でも「その他」でもなく、パートナーであり家族であるときちんと回答したい、そのように認めてほしいと思っている方は、きっと全国にたくさんいらっしゃるはずです(もちろん、すべての同性カップル世帯にそのように回答することを強要するわけではありません。それぞれの家庭の事情があるでしょうし、回答しても大丈夫だと思える方はしましょう、ということです)
2020年9月14日から、5年に一度の国勢調査が開始されます。今年は国勢調査が始まって100周年を迎えます。
今年の国勢調査の内容(修正点)をめぐって、実は6月に国会で、源馬謙太郎衆議院議員が、国勢調査における同性パートナーの取扱いに関する質問を行っています(質問はこちら、答弁はこちら)。「本年2月25日衆議院予算委員会第二分科会において、同性同士の配偶者という結果が出た場合は、その元データはとっておいて何らか活用するということも今回を機にぜひ検討していただきたい、と質問したところ、高市総務大臣から「データの保存とか活用につきましては」「利用者のニーズですとか有識者の御意見も伺いながら検討させていただかなければいけない課題」であるとの答弁があったが、同性パートナー世帯であることが明らかな結果やデータについて、その保存や活用の重要性や必要性についてどのように考えるか」との質問に対し、「統計利用者のニーズや有識者の意見等を踏まえ、検討すべき課題であると考えている」との答弁を引き出しています。また、もし「世帯主」と「世帯主の配偶者」の性別が同一であった場合は「世帯主の配偶者」を「他の親族(叔父、叔母、甥、姪など)」として集計するとの答弁もありました。(なぜ事実婚の夫婦などと同様の扱いではなく、叔父や叔母の分類にされるのでしょうか…)
このような経緯で今回、(3回目のチャレンジとして)MFAJ、EMA⽇本、⾃治体にパートナーシップ制度を求める会、東京レインボープライド、同性パートナーシップ・ネット、虹⾊ダイバーシティ、fair、ぷれいす東京、LOUDが共同発起団体の「レインボー国勢調査プロジェクト」が発足し、政府に向けての要望書を作成、提出することになりました。
今回は自治体や各種団体、個人の賛同も呼びかけており、すでに、神奈川県鎌倉市や兵庫県尼崎市、茨城県知事、東京都渋谷区長をはじめ10の自治体、8の自治体首長、36の団体、59人の個人から賛同を得ています。全国的にも大きな動きとなりそうです。