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オランダが身分証明書の性別記載を廃止へ

 オランダのイングリット・ファンエンゲルスホーフェン教育文化科学相は、身分証明書の性別記載は「不必要な」情報であり、今後数年以内に廃止するべきだとの方針を明らかにしました。

 AFPが7月4日に確認した議会宛ての書簡によると、ファンエンゲルスホーフェン大臣は、2024年か25年から身分証明書の性別欄をなくすと表明しました。欧州連合(EU)の規定によりパスポートの性別欄は残されますが、「性別の不必要な記載を可能な限り少なくしていく」方針を示しました。
 ファンエンゲルスホーフェン大臣は、国民は「自分自身のアイデンティティを確立し、完全な自由と安全の中で生活する」ことが可能であるべきだと強調しました。
 オランダのLGBTI人権擁護団体は共同声明を発表し、「身分証明書のこうした区分をめぐる問題に日常的に直面している人々にとって素晴らしいニュースだ」と今回の動きを歓迎しました。
 
 ファンエンゲルスホーフェン大臣も指摘しているように、性別記載がない身分証明書を許容したのはオランダが初めてというわけではありません。ドイツで2013年、インターセックスの人々の身分証の性別欄を空白にすることを認めています(オランダも2018年に同様の措置をとっています)※
 しかし、国として身分証の性別欄自体を廃止するという決断は、おそらく世界的に見ても初めてではないかと思われます。
 
 OUT JAPANも再三にわたってお伝えしてきたように、世の中にはノンバイナリーやジェンダー・ノンコンフォーミングの方など、ジェンダーアイデンティティが典型的な男性/女性の二分法(バイナリー)に当てはまらない方がいらっしゃいます。ジェンダーアイデンティティが流動的に変化するジェンダー・フルイドの方、ジェンダーがないアジェンダーの方などもいらっしゃいます。まだまだ多様なジェンダーのありようが出てくるかもしれません。男性/女性に無理やり当てはめられる苦痛や、過去にトランスしたことがバレてしまうことの苦痛、見た目とID上の性別が異なることによる日常生活上の困難など、ジェンダーに関するさまざまな問題を解消していくためには、性別欄自体をなくすことが最善の道だと言えます(シスジェンダーの人々が、そのことで何か不都合があるかというと特にないですよね?)
 
 オランダでは1985年、欧州の中でも先進的にトランスジェンダーの性別変更の権利を法的に承認し、2013年には、ホルモン治療や性別適合手術を受けなくても性別変更できるよう法改正しました(詳細はこちら)。その後、オランダの活動家たちは、ID上の性別欄の廃止こそがジェンダーの多様性を尊重するうえで有効だと訴えてきました。
 
※なお、ドイツは2018年、公的書類の性別欄に「その他」や「多様」を意味する「ディバース」を記載することを認めています。公的な身分証明書やパスポートの性別欄で第三の性を選べる国としては、ドイツ以外にも、オランダ、デンマーク、マルタ、オーストリア、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、インド、ネパール、バングラデシュ、パキスタンがあります(パスポート上の第三の性の表記は「X」や「O」となります)

 
参考記事:
オランダ、身分証明書の性別記載廃止へ(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3292146

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