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コクヨが性別欄のない履歴書の販売を前向きに検討すると発表

 7月17日、JIS規格の履歴書の性別欄を無くしてほしいとの要望を受けて一般財団法人日本規格協会が履歴書の様式例を公式サイトから削除する対応を行いましたが、これを受けて、実際に履歴書を販売しているメーカーであるコクヨが、BUSINESS INSIDER JAPANの取材に対して「日本規格協会からの書面の内容に従い、コクヨとして前向きに検討していく予定です」と回答したことが明らかになりました。朗報と言えるでしょう。

 BUSINESS INSIDER JAPANの「企業から消える「性別」ユニリーバ、KDDI……コクヨも履歴書の変更を検討」という記事によると、「履歴書から性別欄をなくそう」キャンペーンの署名に1万人超が賛同し、6月30日、経済産業省に提出されました。経産省はJIS規定を定めている日本規格協会に対して指導を行い、同協会は7月9日に履歴書の様式例を削除。削除理由について公式サイトで「公務員試験、高校入試などでは性別欄をなくす動きが全国的に広がりつつある中、引き続き掲載することによって、JISで規定されている、何らかの方向付けをしているなどの誤解を招きかねない。このことから、削除することにした」と説明しました。
 この変更を受けて、市販されている履歴書から性別欄を削除するかどうかは、実際履歴書を販売しているメーカーに委ねられることになりました。
 そこで、Business Insider Japanが文具メーカー大手のコクヨに対して取材したところ、「日本規格協会から書面の内容に従い、コクヨとして前向きに検討していく予定です」との回答が得られたそうです。
 おそらく他の文具メーカーもこれに倣い、性別欄のない履歴書が市場に出回るようになるとともに、世の中で「性別欄は別に必要じゃない」という見直しが広まっていくことが期待されます。


 この記事でもフィーチャーされている署名活動のサポートにあたったトランス男性活動家の遠藤まめたさんは、Wezzyに「履歴書の性別欄が削除されるまでの20年とこれから」という記事を寄稿し、この問題についての完璧とも言うべきまとめを行なっています。
 
 履歴書からの性別欄の削除をめぐっては、遅くとも2003年には性同一性障害(GID)の当事者団体から改善を求める声が上がっていました。しかし、長年、状況が変わらなかった理由のひとつは国の女性活躍施策でした。2017年に一般社団法人gid.jpが申し入れを行った際、経産省の担当者は「現在、政府が女性活躍社会やポジティブアクション等を行っていて経済界のニーズがある。それ故、一方の意見を聞いて決めることでなく、時代の要請を受け、慎重な議論が必要かと思われる」と回答しています。
 女性活躍に取り組む優良企業に与えられる「えるぼしマーク」の認定を受けるには「男女別の採用における競争倍率が同程度であること」が必要条件とされてきて、そのため、企業は採用前にあらかじめ応募者の性別を把握しなくてはならない仕組みでした。この仕組みに「他の方法でも取組みが測れるのでは」と疑問が付され、「えるぼしマーク」の基準が変わったのが今年6月です。署名が提出されたのは、その月末でした。
「採用時に応募者の性別によって判断を変えてはいけないと男女雇用機会均等法で定められたのは1985年。それから35年の年月が経っても「性別で判断したい」と考える人が多くいる。男女雇用機会均等法の趣旨を知らせるためには、履歴書のアップデートはいい機会になるかもしれない。数年前に、全国の大学の医学部で女子だけ大幅に減点が行われて不合格とされていた事件が発覚した。先日もツイッターで、男子のみに就職説明会の案内を送っている企業のことが話題になっていた。今回の変更が性差別解消のブレーキになるとは思わない。性別欄を無くしたり、書類審査のやり方を変えたりすることでむしろ女性差別も減らせる可能性がある」と遠藤さんは述べています。
「JIS規格の履歴書様式は削除され、今後は各文具メーカーなどがどのような履歴書様式を作っていくのか注目が高まる。年齢や顔写真を必要としない様式が販売されるかもしれないし、レイアウトも変わるかもしれない。男女雇用機会均等法では警備員など、一部の職種の場合には性別を限定した求人をしても問題ないとしている。世の中には性別欄のある履歴書は一部に残るだろう。そんな場合でも、名前の横にわざわざ設けるデザインでなくてもいいではないかと思う。
 長年、履歴書の性別欄削除を訴えてきたgid.jpも「下の方に小さく性別欄を作ってほしい。性別が必要な職種に応募する人は記載してください、などの注釈をつけてほしい」と要望していた。厚労省等が定めている高校統一応募用紙、ハローワーク求職票には今も性別欄がある。今後こちらの運用やデザインもぜひ見直されることを期待している」


 今後(欧米と同様に)性別欄のない履歴書が主流になっていくことは、女性活躍推進の妨げにはならず、むしろ「女性差別も減らせる可能性がある」という遠藤さんの主張に賛同します。
 おそらくこれまで、女性活躍推進のために履歴書の性別欄は必要だし…と、なかなか性別欄撤廃に踏み切れずにいた企業の方も多かったとことでしょう。これからは、女性のためにも、トランスジェンダーのためにもなると自信を持っていただければ幸いです。
 


参考記事:
「企業から消える「性別」ユニリーバ、KDDI……コクヨも履歴書の変更を検討」(BUSINESS INSIDER JAPAN)
https://www.businessinsider.jp/post-217554
履歴書の性別欄が削除されるまでの20年とこれから(Wezzy)
https://wezz-y.com/archives/79480

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