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【追悼】『キンキーブーツ』でのドラァグクイーン役が素晴らしかった三浦春馬さん
三浦春馬さんの訃報に驚き、たくさんの方がSNSに追悼のコメントを、特に『キンキーブーツ』でのドラァグクイーン役がいかに素晴らしかったかということを書いていらっしゃいます。
『キンキーブーツ』は、イギリスの老舗紳士靴メーカーがドラァグクィーン用のブーツを製作して経営を立ち直らせたという実話に基づいた映画(2005年)を、より華やかにしたブロードウェイ・ミュージカルです。ただ華やかというだけでなく、この作品の真髄である、典型的なホモフォーブである男たちが、ローラの毅然としたPRIDEや才気に触れて次第に変わっていく、奇跡が起こる、そんな『パレードへようこそ』とも共通するような物語が生む感動…涙なしには観られない作品です。
ブロードウェイ版は、HIVチャリティのためにミュージカルのスターが文字通り一肌脱ぐ「Broadway Bares」を製作しているジェリー・ミッチェル(ゲイの方です)、映画『トーチソング・トリロジー』で主人公のドラァグクィーン、アーノルドを演じていたハーヴェイ・ファイアスタイン(ゲイでドラァグクイーンの方です)、長年にわたってゲイコミュニティを支援してきたシンディ・ローパーらが魂を込めて作り上げた作品です。初演時にドラァグクイーンのローラを演じたビリー・ポーターはトニー賞を受賞し、今に至っています。
そんな『キンキーブーツ』の日本版が2016年、ブロードウェイのプロデューサーで『キンキーブーツ』にも携わっていた川名康浩さんによって制作され、三浦春馬さんがローラを、小池徹平さんが工場の社長を演じるかたちで上演されました(三浦さんは読売演劇大賞優秀男優賞と杉村春子賞を受賞しています)。2019年にも再演されています。きっとご覧になった方もいらっしゃるかと思います(東京のドラァグクイーンのみなさんによる応援キャンペーンもありましたね)
ゲイ/ストレート問わず本当にたくさんの方たちが、三浦さんはドラァグクイーンのローラという役に真摯に向き合い、努力を惜しまなかった、素晴らしかったと賞賛しています。「ローラの登場シーンで客席から歓声が上がって鳥肌が立った瞬間が忘れられない」「並大抵の努力じゃない」「本当にすごかった」「研ぎ澄まされた表現」「プロフェッショナル」「美しくて、強くて、大好きだった」「今でもキンキーブーツの音楽聞きながら生活しています」「ローラに会えたのは一生の宝」「日本でローラを演じられるのはあなただけだよ…」などなど。
また、ゲネプロ後の囲み取材のときに記者が「女装」について興味本位な質問をしたり笑いを誘おうとしたが、三浦さんは真面目に答えていてうれしかった、と語る方もいらっしゃいました(こちらの記事によると、三浦さんが「今回は『美』を追求しました」と語ったことに対し、記者団から笑いが起こり、小池鉄平さんが「何がおかしいんですか」と諌めたそうです)
今年の6月28日、ニューヨークプライドが開催したオンラインイベントで、ビリー・ポーターがサンフランシスコのエイズ基金とロサンゼルスのLGBTQセンターへのチャリティとして『キンキーブーツ』の元キャストたちを集めて特別なオンラインコンサートを行った際、日本から三浦春馬さん、小池徹平さん、ソニンさんも参加していました。
春馬さんは単にビジネスでドラァグクイーンを演じたのではなく、真剣にドラァグクイーンになりきるために、奥深いドラァグカルチャーのことも学び、その背景にあるゲイコミュニティのことも学んだはずです。そのうえで、ローラという役を完璧に演じ、先月のプライドイベントにも快く参加してくれたに違いありません。
そういう意味で、三浦春馬さんは間違いなく、LGBTQにとって、素敵!と思えるようなことをしてくれた、応援してくれた、勇気を与えてくれた、素晴らしいアライの一人だったと思います。本当にありがとうございます。感謝申し上げます。そして、心からご冥福をお祈り申し上げます。