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LGBT団体が医療現場等で同性パートナーを家族として扱うことや差別禁止法の制定を求め、政府に要望書を提出
「Marriage For All Japan」などの団体が、LGBT差別禁止法の制定や、医療現場や行政の施策で同性パートナーを家族として扱うことを求め、政府に要望書を提出したことが明らかになりました。
5月17日のIDAHOBIT(国際反LGBTフォビアデー)に合わせ、「Marriage For All Japan」など複数の団体が政府に対し、LGBT差別禁止法の制定や、医療現場や行政の施策で同性パートナーを家族として扱うことを求める要望書を提出しました。
同性婚の法制化を目指す「Marriage For All Japan」はこの4月、コロナ禍のLGBTに与える影響についてアンケートを実施し、同性パートナーが感染した場合に入院先を教えてもらえなかったケースがあることや、医療現場で家族として扱ってもらえないのではないかという不安の声、感染経路に関する調査・情報の公開時に「アウティング」につながるのではないかとの懸念の声がたくさん上がりました。同団体はことを受けて、5月14日、新型コロナウイルスに関する医療現場や行政の施策として、国や自治体に同性カップルも法律上の夫婦と同様に扱うよう求めるとともに、感染者に関する調査や情報公開においてプライバシーや人格が不当に侵害されることのないよう注意・周知徹底することを求める要望書を提出しました(詳細はこちら)
これに先立ち、LGBTに関する法整備を求める「LGBT法連合会」と国際人権NGO「ヒューマンライツ・ウォッチ」、スポーツにおけるLGBTの問題に取り組む「アスリート・アライ」は、国内外約100団体の賛同を得て、4月17日、安倍首相に対し「性的指向・性自認(SOGI)に関する差別禁止法」を制定するよう求める書簡を提出していました。これに対し、返答がないことを踏まえ、改めて法整備の必要性を訴える声命を5月15日に発表しました。
今夏に開催予定だった東京2020大会の開催国として、性的指向などの差別禁止を掲げる五輪憲章を守るよう求めるものです。東京都ではすでにLGBT差別禁止条例が制定されていますが、東京2020大会では北海道、埼玉、千葉、静岡、神奈川、宮城、福島などでも競技が行われる予定となっており、これらの地域には東京都の差別禁止条例の効力は及びませんから、LGBTの日本のファン、アスリート、外国からの訪問者などを守るために、国が率先してLGBTを保護する法制度を整えるべきだと訴えています。2021年に延期されたことで、政府がこうした法整備に取り組む時間的猶予もできました。「日本にとって、LGBTの権利で世界のリーダーになるチャンスだ」「東京都が表明したLGBTコミュニティへの連帯に、日本政府も続くべきだ」(全文はこちら)
日本では2015年に超党派の国会議員による「LGBT議員連盟」が設立され、LGBTへの差別の解消に向けた法制度についての議論が始まりましたが、5年が経って、まだ法律は実現を見ていません。
昨年3月の参議院予算委員会では安倍首相が「社会のいかなる場面においても、性的マイノリティの方々に対する不当な差別や偏見はあってはなりません」と答弁しています。
今月8日に発表された厚労省の初のLGBTの調査では、当事者にとって働きやすい職場とは、人事評価等で「差別的取り扱いを受けない職場」だとする回答が最も多くなっていました。企業側が国に期待することも、最も多かったのは「ルールの明確化」でした。このように、国の統計としても法整備の必要性は明らかになっています。
LGBT差別禁止法が未だにないことで、例えば、今年3月には大阪でトランスジェンダーの運転手の方が上司から「病気だから乗務させられない」「気持ち悪い」などと言われ、退職を強要される事件が発生しています(運転手の方は、タクシー会社を提訴しました)。コロナ禍で人員削減が行われる場合、もともと立場が弱いトランスジェンダーなどが真っ先に首切りを受けやすいという指摘もあります。
参考記事:
WHO精神疾患「同性愛」削除から30年、LGBT関連団体が政府へ要望書を提出(Yahoo!ニュース)
https://news.yahoo.co.jp/byline/matsuokasoshi/20200517-00178861/