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GID学会理事長が性同一性障害者の自殺リスクに警鐘
岡山大学教授でGID(性同一性障害)学会理事長の中塚幹也氏が、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響で、性同一性障害者・トランスジェンダーの自殺リスクが増大する懸念について記事を発表し、警鐘を鳴らしました。
Yahoo!に掲載された記事によると、3月28日、新型コロナウイルス感染症対策に当たっていたドイツ・ヘッセン州のシェーファー財務相が、財政的な支援への市民の期待に応えられるか苦悩した末に自殺したという痛ましいニュースを紹介し、「危機的な社会状況では、大臣だけではなく、一般の中でも自殺者が増えることが知られている」と述べられています。3月11日、厚生労働省も、各都道府県・指定都市の自殺対策を主管する部局あてに「COVID-19防止に関連した生活困窮者への相談支援」を求めたそうです。
新型コロナウイルス患者の急増に備えて、岡山大学病院でも他の患者の受診抑制が行われています。GID当事者を日本中から受け入れている岡山大学ジェンダークリニックも例外ではなく、受診の延期要請や処方箋のFAX送付などが始まりました。「もともと不安やうつが見られる方が多いが、最近の外来では、社会全体の重苦しい雰囲気のもとで不安の高まりが感じられる」といいます。
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、心配されるのがGID当事者をはじめとするトランスジェンダーの方の自殺リスクの増大だと、中塚氏は指摘します。「もともと職場でも弱い立場の方が多く、経営が苦しくなった企業からは整理解雇の名のもとに首切りを受けやすい」
2008年のリーマンショックの経済危機の際は、お金がないためホルモン療法を中断し、貯めていた手術代を切り崩して生活するようになった方もいらしたそうです。岡山大学ジェンダークリニックでは、希死念慮(自殺願望)や自殺未遂の経験を持つGID当事者の受診が増加しました。コロナ経済危機はリーマンショックを上回るとされるため、「自殺・自殺未遂の増加を阻止するためにも、GID当事者・トランスジェンダーへの精神面の支援や、種々の弱い立場にある人々にまで行き渡る経済対策が求められる」と中塚氏は訴えています。
さらにつけ加えると、もともとトランスジェンダーの方は(書類上の性別と見た目が異なることなどから)求職時に困難を覚える方が多く、シスジェンダーに比べて貧困状態に陥る方が多いということも明らかになっています。企業の皆様におかれましては、今こそトランスジェンダーの方への差別・偏見を見直し、支援の姿勢を打ち出していただけるよう、お願い申し上げます。年度が変わったばかりですので採用に結びつくことは少ないにせよ、「弊社はトランスジェンダーの方たちを応援します」と表明する企業が多くなれば、きっと多くの当事者が勇気づけられることでしょう。そのことで救われる命があるはずです。
参考記事:
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と自殺 性同一性障害・トランスジェンダー当事者の今後(Yahoo!)
https://news.yahoo.co.jp/byline/mikiyanakatsuka/20200415-00173440/