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熊本の同性カップルが「結婚の自由をすべての人に」九州訴訟に合流

 昨年2月14日、同性婚を認めないのは憲法の「婚姻の自由」に反しているとして全国で一斉に「結婚の自由をすべての人に」訴訟が始まり、追って9月には福岡市在住のカップルもこの訴訟に加わりました。この「結婚の自由をすべての人に」九州訴訟に加わるかたちで3月4日、熊本市に住むこうぞうさん&ゆうたさんのカップルが、婚姻届が受理されないのは憲法が保障する婚姻の自由や法の下の平等に反するとして訴えを起こすことを発表しました。全国一斉訴訟の原告の同性カップルとして全国で15組目、九州で2組目、熊本県では初となります。
  
 
 熊本市に住むこうぞうさん(37歳)とゆうたさん(36歳)は、2002年におつきあいをはじめ、通算で18年の関係になります(2007年、ゆうたさんが遠方の大学院に進学することになり、交際を解消していましが、2019年に復縁しています)。お二人は3月4日、熊本市役所でパートナーシップ宣誓を行い、パートナー証明を受けた後、婚姻届を提出しましたが、同性カップルを当事者とする婚姻届は不適法だとして受理されませんでした。
 熊本市は2019年4月から同性パートナーシップ証明制度制度を導入。認定されたカップルは市営住宅へ共同入居ができるほか、市立病院を受診した際にパートナーが病状などの説明を受けられます。一方、同性カップルの婚姻届については、男女を基本とする民法や戸籍法の規定を理由に国内の自治体では受理されず、税の配偶者控除や遺産相続を受けることができない状況に置かれています。
 
 4日、熊本市役所で記者会見したこうぞうさんは、こう語りました。
「僕は熊本に住み、十代の頃から自分が同性愛者であることを生活のほとんどの面でオープンにしてきました。
 今の彼の影響もあり、20歳の頃に母にも自分がゲイであることを打ち明けました。母は「悪いことをしているわけじゃないし、人に迷惑をかけるわけじゃないのだからいいんじゃないの」と受け入れてくれました。
 母に言われて自分でもはっとしましたが、同性愛は悪いことではありません。それなのに、今でも、日本で同性愛者であることを人に打ち明けることに大きなリスクを感じる当事者がたくさんいます。ゲイであることを言う必要がないと考える当事者もいますが、知ってほしくても、伝えることが怖いと思う人もいます。
 同性婚の話をすると当事者でも「自分達は普通じゃないから」と、同性婚について語りたがらない人もいます。僕は、「なぜ悪いことをしていないのに、こんなに普通じゃない存在として扱われるのだろう」と昔から感じて生きてきました。
 国が、同性愛者を、婚姻制度という二人の関係を公的に証明するものから除外していることで、同性愛者を「普通じゃないもの」として人々に考えさせることになってしまっているように、僕は思います。
 遥か昔から世界中どこにでも同性愛者はいたはずですが、その多くは、いない者として扱われてきました。日本ではこの数年で随分と存在の可視化が進んだと思います。しかしながら国は、「同性婚の成立を認めることは想定されていない」「認めるべきか否かは、わが国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要する」「現時点で導入を検討していないため、具体的な制度を前提として、それが憲法に適合するか否かの検討も行っていない」とし、真正面から僕らに向き合うことをしてくれません。
 法律ができれば教育が変わり、教育が変わり時間が経つことで、人の意識や常識は時代と共に変わります。
 必ずしも結婚イコール幸せではありませんが、どうにか自分の生きている内に日本でも同性婚という選択肢を作ってもらい、選択することで得られる生きる希望や未来への目標を、これからも生まれてくる同性愛者をはじめとするLGBTの子どもたちに残してあげたい。
 好きな人と家族になる権利を、希望を、僕らにもください。」
 また、ゆうたさんは、こう語りました。
「好きなひとと、ずっと一緒にいたい。苦楽を共にし、人生を分かち合いたい。そんな二人が、同性どうしであることで、社会的に認めてもらえない現実を、とても残念に思います。
 私たちの周りには、私たちのこと・私たちの関係を受け入れてくれる、とても素敵な人たちがたくさんいます。同時に、私たちの周りには、自分の身近に同性愛者はいないと思って生活している人たちも、たくさんいます。
 誰のせいでもない「普通の価値観」を持っている市井の人たちに、私たちの存在を認めてもらうことは、一筋縄ではいかないことを、私たちは身をもって知っています。そして、私たちの境遇は、とても運がいい方だということも知っています。
 結婚がすべてではありません。する・しないを選ぶのは、個人で、自由です。
 私たちは、お互いに、することを選びました。ただ、それだけのことです。
 職場の同僚との会話や、親戚の集まりで、パートナーや結婚の話になったとき、「しますよ、彼と」とためらいなく言える日が来ることを、願っています。」
(「結婚の自由をすべての人に」訴訟記者会見資料より)
 
 LGBTの子どもたちに生きる希望をと願う、心からの言葉に胸を打たれます。
 こうぞうさんは、レインボーパレードくまもと2016の主催者の一人で、くまにじというLGBT支援団体でも活躍してきました(熊本市で同性パートナーシップ証明制度が実現したのをはじめ、様々な施策が進んできたのは、この団体の働きかけによるところが大きいと思われます)
 報道の後、SNSでは早速、友人たちから応援コメントをいただいたりしていましたが、こうぞうさんとゆうたさんが先頭に立つ決意をしてくれたことで、自分自身ではなかなかカミングアウトして声を上げられない方々の希望となり、自身のセクシュアリティを肯定できずにいるような(内なるホモフォビアに苦しんでいる)ゲイの方たちが前向きな気持ちになれるきっかけともなるのではないでしょうか。
  
 お二人は、今月25日に福岡地裁に提訴し、その後、昨年9月5日福岡地裁提訴の先行訴訟との併合を求める予定だそうです。

 
 

参考記事:
同性カップル婚姻届めぐり提訴へ(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20200304/5000007624.html
同性婚受理されず提訴へ熊本で初(日テレNEWS24)
http://www.news24.jp/nnn/news86816162.html
同性カップルが国を訴える訴訟を(RKK熊本放送)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200304-00000008-rkkv-l43
同性婚受理されず提訴へ熊本で初(くまもと県民テレビ)
https://www.kkt.jp/nnn/sp/news16307659.html
熊本市在住の男性カップル 婚姻届不受理で提訴へ(TKUテレビくまもと)
https://www.tku.co.jp/news/%E7%86%8A%E6%9C%AC%E5%B8%82%E5%9C%A8%E4%BD%8F%E3%81%AE%E7%94%B7%E6%80%A7%E3%82%AB%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%AB%E3%80%80%E5%A9%9A%E5%A7%BB%E5%B1%8A%E4%B8%8D%E5%8F%97%E7%90%86%E3%81%A7%E6%8F%90%E8%A8%B4/
熊本の男性カップル、婚姻届不受理に 国を提訴へ 「結婚ためらいなく言える社会に」(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20200304/k00/00m/040/242000c
「パートナーとして認めて」同性婚求め提訴へ 熊本の男性2人(西日本新聞)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/589338/
同性婚求め国提訴へ 熊本市在住の男性カップル婚、姻届不受理で(熊本日日新聞)
https://kumanichi.com/kumacole/interest/1376562/

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