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同性パートナーシップ証明制度、川崎市も2020年度導入へ
川崎市の福田紀彦市長は2月17日、同性パートナーシップ証明制度の導入を表明しました。2020年度中に実施するそうです。
市議会で施政方針演説に立った福田市長は、昨年12月に制定した「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」に言及し、「本市は多様な市民が尊重し合い、発展してきた。今年は条例に基づき具体的な取組みを進める重要な1年となる」との認識を示したうえで「性的マイノリティの生きづらさを解消するため、パートナーシップ宣誓制度の創設に向けて取り組む」と明言しました。
市人権・男女共同参画室によると、制度の具体的な中身や導入時期は検討中、とのことです。
多くの自治体では一方または双方が性的マイノリティーである二人を対象とし、宣誓書に署名したカップルに受領証などを発行するかたち(いわゆる世田谷方式)で実施されていまが、川崎市もこの方式を採用するのか、上記の人権尊重条例を改正するかたちで実施するのか、といったことも現時点では明らかではありません。
市の担当者は「公的な認証自体が当事者の生きづらさを軽減させ、周囲の理解を促すことが期待できる」と語っています。
社会的弱者・少数者の人権施策の在り方を審議している市人権施策推進協議会も「法律上、性的マイノリティのカップルは存在しないかのような扱い。公的な認証は差別解消や啓発、当事者支援にとって効果的」とし、制度創設などを求める答申を今年度中にまとめ、市に提出する運びとなっています。
市民文化局のこちらの資料によると、川崎市では2015年頃からLGBT施策が始まっています。
・2015年3月に改定された川崎市人権施策推進基本計画「人権かわさきイニシアチブ」の分野別施策として、性的マイノリティの人権について、庁内横断的に施策が始まりました
・同年4月、川崎市人権・男女共同参画推進連絡会議幹事会に「性的マイノリティ専門部会」を設置
・同年11月実施の「人権に関する市民意識調査」に性的マイノリティに関する質問が設けられました(その結果、「あなたが性的マイノリティの人権に関して特に問題だと思うものは何ですか」という質問に対して、54.6%が「性的マイノリティに対する社会的理解が低いため、誤解や偏見があること」と回答しています)
・2017年以降、市民向け講演会、職員向け研修、イベント(下記のかなまら祭りなど)での人権ブース出展、などをたびたび実施しています
・同年11月には、九都県市でLGBTへの配慮促進に向けた共通メッセージを作成する取組み(「あなたはあなたのままでいい」というバナーを展開)に参加しています
しかし2018年、「自治体にパートナーシップ制度を求める会」による一斉請願の一つとして提出された「川崎市における同性パートナーシップの承認制度創設に向けた協議開始に関する陳情」を受けて、市議会(文教委員会)で審査が行われたのですが、「性的マイノリティに関する社会の認知度は高まりつつありますが、それぞれの当事者の置かれている状況の理解については、まだ十分とは言えない状況にあります。そのため、引き続き「多様な性」に関する理解を深める取組を着実に進めてまいります」ということで、採用ではなく、継続審査という判断となりました(こちらに詳細な議事録が掲載されています)
このように、市議会で陳情が採択されず、時間がかかってしまいましたが、このたび、市長さんの判断で、ようやく、川崎市でも同性パートナーシップ証明制度が実現する見込みとなりました。
神奈川県では、横須賀市、小田原市、横浜市、鎌倉市ですでに導入済みで、逗子市、葉山町、相模原市でも導入予定となっていて、川崎市は8例目となります(これで県内の政令指定都市すべてで承認されることとなります)
川崎市と性的マイノリティとは、実は、とても深い関係があります。
まず、毎年4月、陽物信仰・性信仰の金山神社で「かなまら祭り」というお祭りが開催され、エリザベス会館の女装者の方たちが巨大なピンク色の男性器の神輿を担いだり、男性器をかたどった飴が販売されたりして、海外でも有名になりました(昨年のNYプライドで「KANAMARA MATSURI」と書かれたTシャツを着た方を見かけたくらいです)。この金山神社が、まだ世界のどこでも同性婚が認められていない1999年、ゲイ雑誌『バディ』誌上での同性結婚式の企画に賛同し、宮司さんがゲイカップルのために式を挙げてくれたという記念碑的な出来事がありました(これをスポーツ新聞がネタとして面白おかしく取り上げ、出演したカップルが傷つくというアクシデントもありましたが、宮司さんはきちんとゲイを擁護してくれました。感謝です)
それから、川崎市といえば、駅前のチネチッタやハロウィンが有名だと思いますが、2017年6月に「川崎CITTA虹Project」として、チネチッタでLGBT映画を上映したり、セミナーを行ったり、夜はクラブチッタでLGBTのキャストが大勢登場するイベントが開催され(川崎市や川崎商工会議所も後援)、同年10月には、チッタグループが主催するカワサキハロウィン・パレードの中でドラァグクイーンのフロートがフィーチャーされる(キービジュアルはレスリー・キーさんが担当)という素敵なイベントがありました。市がLGBTフレンドリーになっていくひとつのきっかけになったのではないでしょうか。
なお、川崎市では3月21日(土)、GID学会の開催に合わせ、日本初のトランスマーチが開催される予定です。
参考記事:
パートナーシップ制度 川崎市も20年度導入へ(神奈川新聞)
https://www.kanaloco.jp/article/entry-273419.html