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トランス女性がトランス女性の役を演じる映画の製作が発表されました
公募で選ばれたトランスジェンダー女性俳優イシヅカユウさんがトランス女性を演じる映画『片袖の魚(仮)』が2021年に公開されることが発表されました。監督を務めるのは『老ナルキソス』で2018年にレインボー・リール・コンペティションのグランプリを受賞しているバイセクシュアルの東海林毅(しょうじつよし)監督です。インディーズではありますが、主演も監督もクィア(性的マイノリティ)であるというところが素晴らしく、意義ある良作になるのではないかと期待されます。
『片袖の魚(仮)』の原案は、文月悠光さんの詩集『わたしたちの猫』に収録されている「片袖の魚」という詩です。この詩にインスパイアされた東海林毅さんが脚本を書き、ひかりというトランス女性の主人公と、千秋という友人、その同僚…といったキャラクターが登場する映画が製作されることとなりました。
今回、ひかりと千秋の役は公募され、オーディションでイシヅカユウさんと広畑りかさんという2人のトランス女性俳優が選ばれました。
日本で初めて、公募で選ばれて当事者としてトランスジェンダー役を演じることとなった主演のイシヅカユウさんは、MVなどの映像作品で活躍するファッションモデルの方。「新しいことに挑戦するのはいつも不安ですが、お芝居の渦中に身を投じ、自分の中にあるものと自分の中に無いものを重ねて一つの像を作る途方もない作業を楽しんでいます」と心境を語っています。
もう1人の広畑りかさんは、性別適合手術後に芸能事務所に所属したトランス女性の方です。トランス女性の俳優・タレントとして今後より一層の活躍が期待される方、とのことです。
原案の文月悠光さんは、「とても大切な映画です。文月も監督も主演のイシヅカユウさんも、本作に携わる多くの方にとって『片袖の魚』は大きな「挑戦」になります。それが何より嬉しいです。今はまだ稚魚のような心持ちですが、公開までどうか温かく見守っていただけたら幸いです」とコメントしています。
監督の東海林毅さんは、「新作『片袖の魚(仮)』発表されました! 秋に日本初のトランス女性当事者俳優の公募、オーディションを行い準備を進めてきました。原案の文月悠光さん、イシヅカユウさん、広畑りかさん、猪狩ともかさんほかキャスト、スタッフ全員で良い作品を届けられるように努めます。よろしくお願いします」とTwitterでコメントしています。
以前「ハル・ベリーがトランス男性の役を降りた理由」というニュースでお伝えしたように、ハリウッドでは長い間、トランスジェンダーが映画やドラマなどのメディアで「シスジェンダーから見たトランス像」のイメージを押し付けられ、当事者を傷つけてきましたが、それは現場にいる監督やスタッフ、俳優らが全員シスジェンダーで、誰も当事者の気持ちを理解していない、敬意を払わなければという気持ちもなかったことに起因していたとの反省から、また、リプレゼンテーションの意味でも、トランスジェンダーの役はトランスジェンダー俳優に演じさせようという声が高まりつつあります(そこには『POSE』の成功が大きく影響しています)。今回のプロジェクトは、まさにそうした問題意識から出発したもので、シスジェンダーだらけのスタッフ・キャストによる「シスジェンダーから見たトランス像」のイメージを押し付ける作品とは一線を画すものになるはずです。本当に素晴らしいことです。公開を楽しみに待ちましょう。
参考記事:
トランスジェンダーの女性を当事者イシヅカユウが演じる『片袖の魚』2021年公開(cinemacafe.net)
https://www.cinemacafe.net/article/2020/12/11/70425.html
文月悠光が原案 映画『片袖の魚(仮)』にイシヅカユウ、広畑りか出演(cinra.net)
https://www.cinra.net/news/20201211-katasodenosakana
文月悠光の詩「片袖の魚」映画化、トランス女性のイシヅカユウが主演(映画ナタリー)
https://natalie.mu/eiga/news/408357