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ブラジルの統一地方選でトランスジェンダーが躍進
ブラジルで11月15日、統一地方選の投開票が行われ、トランスジェンダーの候補者が次々と当選しました。出生時につけられた名前ではなく自身の選んだ名前での立候補が許された初めての選挙となった今回、当選者らは歴史的な勝利を祝いました。
ブラジル最大都市サンパウロでは、エリカ・ヒルトン、タミー・ミランダの2人のトランスジェンダーが市議に当選。2人とも、定数55議席のところトップ10に入る得票数で当選したそうです。
エリカ・ヒルトンはトランス女性で、社会主義自由党(PSOL)に所属。有色人種女性からの支持を集めたそうです。彼女はTwitterで「私たちが勝った! 黒人のトランス女性が市議会議員に選ばれた。史上初めてだ」と喜びのコメントを投稿しました。
タミー・ミランダはトランス男性で、自由党に所属。彼はコスメの会社「Natura」の父の日のキャンペーン広告に出たことで、全国的に有名な人物だそう。
南東部のベロ・オリゾンテ市の市議に当選したのは、トランス女性のデュダ・サラバート。彼女は学校の教師で、民主自由党所属。同市初のトランスジェンダーの市議会議員になりました。
北東部セルジぺ州の州都アラカジュでは、トランス女性のリンダ・ブラジルが当選。同市初のトランスジェンダーの市議会議員になりました。
このようにトランスジェンダーの政治家が歴史的な躍進を遂げた一方、ブラジルは世界でも最もトランスジェンダーにとって危険な場所となっています。昨年1月、最高裁がLGBT差別禁止(最高禁錮5年)の判断を下し、法的にLGBTQが保護されることになりましたが、大都市を除けば、その努力は欠如しているといいます。Trans Murder Monitoringによれば、昨年10月〜今年9月の1年間で152人のトランスジェンダーが殺害されました。この数は、世界中でこの期間に起こったトランスジェンダー殺害事件の43%を占めています。
ブラジルではトランスジェンダーだけでなく、ゲイも多数ヘイトクライムの犠牲者になっています。2017年に殺されたLGBTは445人にも上っています。
ボルソナロ大統領は「息子が同性愛者なら事故で死んだ方がまし」というホモフォビアむきだしの発言で「ブラジルのトランプ」とも称される人物です(詳細はこちら)。つい先日も、新型コロナウイルス対策をめぐって「亡くなった方については気の毒に思う。本当にそう思う。だが、われわれはみんないつか死ぬ。現実から逃げても仕方がない。ホモの国みたいなことはやめなければならない」「顔を上げて闘わなければいけない。ホモみたいなのは大嫌いだ」などと発言し、問題視されました。
法的にようやく保護されるようになったとはいえ、ボルソナロ大統領のホモフォビアやトランスフォビアが(トランプ政権がそうであったように)LGBTへの憎悪犯罪を煽っている部分があることは否めないでしょう。
ブラジルのLGBTQが安全に暮らせる日が早く訪れることを願います。
今回当選したトランスジェンダーの議員たちの活躍が、きっとその一助となることでしょう。
参考記事:
トランスジェンダー候補ら歴史的勝利 ブラジル統一地方選(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=20201117040830a
4 Trans Candidates Win Elections, Make History in Brazil(Out)
https://www.out.com/politics/2020/11/17/4-trans-candidates-win-elections-make-history-brazil
ブラジル大統領、コロナめぐり暴言 同性愛嫌悪表現使う(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3315220