NEWS
足立区白石区議が謝罪した後も、続々と批判の声が上がっています
足立区白石区議が謝罪し、問題発言を議事録から削除でお伝えしたように、20日、「足立区が滅びる」発言の白石区議が謝罪しましたが、その後も続々と批判の声が上がっています。
まず、謝罪文が「差別的な表現と受けとめられる発言だった」という「(自分は間違っていないが)誤解する人もいた」と言わんばかりの謝罪文だったことについて、です。
「足立・性的少数者と友・家族の会」の西山千恵子共同代表は「傷ついた人らの受け取り方の問題のように発言し、自分の言動が差別や間違いだと認めていないようだった。差別発言だったと認めず、ごまかした謝り方。口先だけの謝罪で残念だ」と、差別問題に取り組む学生団体「Moving Beyond Hate」代表のトミー長谷川さんも「本当に問題を理解して謝罪しているのか疑問です」と語っていました。
傍聴席で白石区議の発言に耳を傾けた区内在住のトランスジェンダーの会社員の方は「言わされた言葉を読み上げているだけ。途中で詰まる場面もあり、練習すらしてこなかった」と、足立区在住の高校生は「(謝罪は)期待していたものとは違って残念だった。前もって用意した文章を読み上げているだけだと感じた」と、ゲイの男性は「反省の色は全く感じませんでした。本当の謝罪というのは、深く頭を下げて時間をつくる。議員の品格というものを感じてしまいました」と語っていました。
満席で傍聴できなかったおよそ20人の方々は、足立区役所1階のロビーのモニターで本会議の中継を見ていましたが、足立区の76歳の女性は「反省しているように見えませんでした。もっと勉強して、これからしっかりと納得できる謝罪をしないと、有権者からずっと許してもらえないと思います」と、足立区の71歳の男性は「本心から謝罪したのか疑問です。議員を辞めるべきだと思います」と語っていました。
TOKYO MXのニュースでは「謝罪はしたものの視線を上げることはほとんどなく、頭を下げた時間は数秒間のみでした。白石区議の謝罪に対し、傍聴に訪れた人や足立区民からは憤りや落胆、あきれる声が聞かれました」と報じられています。
(こちらに上がっている動画で、白石区議の謝罪の様子がわかります)
謝罪の後も本会議は続きましたが、一度休憩を挟んで本会議が再開された時には白石区議の姿はなく、体調不良を理由に本会議を早退したということです。
白石区議の代わりに、区議会自民党の金田正幹事長が報道陣の取材に応じました。
謝罪の文言は白石区議本人が用意したもので、金田幹事長らも事前にチェックしたといいます。
白石区議からは10月16日に厚生委員会委員長を辞任したいという申し出があったとし、発言撤回・謝罪と合わせて「ひとつのけじめはつけた」と金田幹事長は繰り返しました。問責決議案が出ていたことに関しては「党として重く受け止める」としつつも、議員辞職をする必要はないという認識だと述べました(区議会には、野党4会派から問責決議案が出されていましたが、自民・公明両党などの反対で否決されました)
批判の声が強くなってからも白石区議は、メディアのインタビューなどでも「謝罪や発言の撤回をする気はない」という態度を曲げませんでしたが、一転して謝罪することになったのはなぜか、という点について、金田幹事長は「10月9日の議員総会でいろいろ話した。きっかけにはなったのではないか」と述べました。本人は「差別的な意図はなかった」と一貫して主張、「差別的だと思われてしまうような表現の仕方があった」と話しているそうです。
議会中、近藤弥生区長は「足立区が性的少数者を差別するかのような誤ったメッセージが広く区内外に広まっているとしたら、これは大きな危機だと考えている」として、当事者と意見を交わす機会を設けると語りました(とても大切なこと。一歩前進ですね)
「どのような困りごとがあるのか伺って、どのような対策を取れるのか検討する。早急に相談の窓口は整える必要があると感じております」
一般社団法人fair代表理事の松岡宗嗣さんは、「誤りを認めた点は評価できる反面、何が問題だったのか表層的にしか認識しておらず謝罪として不十分だと感じた」と語り、今回の発言の問題点を振り返りつつ、政治家による性的マイノリティに関する差別発言をどうすればなくすことができるのか?について、統括的な所見を述べています。
松岡さんは、白石区議のこれまでの発言の問題点を、(1)教育でLGBTについて扱うと、同性愛者ばかりなるという「ありえない」想定を例に挙げ、(2)少子化とLGBTの権利保障は相関関係はないにもかかわらず、同性愛者が広がると足立区が滅びるなどと無理やり少子化問題に結びつけ、(3)こうした事実に基づかない偏見によって、性的マイノリティの権利を制限しようとした点ではないかと整理します。そもそも学習指導要領で性の多様性に関する事柄が記載されていないこと、すでに海外で同性婚を認めている国の出生率を見ても(出生率が上がっている国もある)相関関係はないということ、厚労省の委託調査によると職場のカミングアウト率は1割程度で、周りにいないのではなく、白石区議のような差別的な考えの人が当事者のカミングアウトを困難にしているのだということなどを挙げ、(1)〜(3)について丁寧に検証しています。そのうえで、「白石区議は毎日新聞の取材に対して「(LGBTは)民法の中に(想定されて)ない生き方だからね。一般的でない生き方を特別に擁護する必要ない」などと、法律上もLGBTが差別されている現状をむしろ肯定し、LGBTの人権を尊重しない考えを示した点も問題だ」、「「今後はLGBTでお悩みになられている方々へ」と述べていたが、そもそも"LGBTで悩む"のではなく、社会の差別や偏見によってLGBTが困難に直面する。問題は社会の側にあり、LGBTが"問題"なのではないという点を履き違えている」と指摘します。「白石区議はもしこのまま辞職せず議員を続けるのであれば、自身の無知を反省し、むしろ積極的にこの問題に向き合い、多様な性のあり方を包摂する足立区の施策を主体的に進めていくべきだろう」
そして、政治家によるLGBT差別発言をどうすればなくせるか?については、「政治の中心にいる人々が、シスジェンダー・異性愛者で高齢の男性ばかりという構造では、マイノリティに関する課題には関心が寄せられず後回しにされ、むしろ今回の白石区議のような無知と偏見からマイノリティが排除されてしまうこともある」と指摘し、「よりLGBTの当事者議員が政治の場に増えることや、この問題に関心のある議員、最低限の知識を持つ議員を増やしていくことは重要だろう」と述べています。さらに、LGBT平等法のような、差別をなくすための基本的な法整備の必要性を訴えます。
こちらのニュースでお伝えしたように、松岡さんのおばあさま(82歳)は、白石区議よりも高齢であるにもかかわらず、アライとして区議にお手紙をお書きになっていますが、「当事者と実際に会って話す」ということが大切だと述べられています。白石区議もぜひ、当事者の方たちに会って、お話を聞いていただきたいものです。
日テレNEWS24のニュースでは、北千住駅前にいらした方々にコメントを求めていましたが、皆さん「私の知り合いにそういう人がいるので、いい気はしない」「時代に逆行している」「区民を守るべき立場の人が、排除している」と、LGBTに寄り添うようなコメントをされていました。また、ほとんどのメディアも、白石区議の発言の問題点を批判し、LGBT差別はいけないと(権利が守られるべきだと)支援的なスタンスで報じています。本当に心強いことです。まだまだ声を上げづらい当事者も多いなか、アライの方たちの積極的な動きが、支えになります。
参考記事:
性的マイノリティー傷つけた東京 足立区議 謝罪し発言を撤回(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201020/k10012672401000.html
「足立区が滅ぶ」発言撤回 区議が一転「心からおわび」(FNN)
https://www.fnn.jp/articles/-/97635
“差別的発言”足立区の白石区議が一転謝罪(日テレNEWS24)
https://www.news24.jp/nnn/news890232659.html
【動画あり】「謝罪で幕引きはお断り」 自民区議が「足立区滅びる」を撤回、LGBT当事者らが心の叫び(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/63032
「口先だけの謝罪」足立区議へ残る批判 自民は幕引き図る LGBT差別的発言(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20201020/k00/00m/040/309000c
足立区議が謝罪「自分の価値観押しつけた」 問責は否決(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASNBN6SVSNBNUTIL01V.html
「当事者の人に直接会って話を」足立区議の謝罪、学生たちも見守る(ハフィントンポスト)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f8e90fac5b6dc2d17fa01ef
足立区議の謝罪、自民党幹事長は「ひとつのケジメはつけた」と説明。当事者はどう受け止めたか(ハフィントンポスト)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f8e9923c5b67da85d2143ac
「足立区が滅びる」白石区議が謝罪…政治家の差別発言、どうすればなくなるか(現代ビジネス)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/76604