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世田谷区が初めて、同性カップルも「事実上の婚姻関係」に相当するとの社会通念が形成されているとの見解を示しました

 東京都世田谷区が9月17日の区議会で、上川区議の質問に答え、同性カップルも「事実上の婚姻関係」であるとの社会通念が形成されているという見解を示しました。公的機関がこのような見解を表明するのは初めてだそうです。
 
 
 今年6月4日、同性パートナーを殺害された男性が、同性を理由に遺族給付金を不支給とした愛知県公安委員会の裁定の取消を求めた訴訟で、名古屋地裁が「同性カップルの位置づけは議論の途上にあり、社会通念が形成されていたとは言えない」として却下する判決を下しました。これに対し、当事者や弁護士の方など多くの人々から「同性愛差別であり、長年のパートナーを殺された方に追い打ちをかけるような血も涙もない判決」「社会通念を理由に差別を正当化するのは、司法の役割の放棄である」など、たくさんの批判の声が上がりました(詳細はこちら

 その後、この問題に世田谷区が一石を投じました。6月11日、世田谷区議会の本会議で、上川あや区議の質問に対して澁田景子保健福祉政策部長が「同性パートナーを配偶者に準じて扱う」と回答し、新型コロナウイルス感染症にかかった人が亡くなった場合に遺族が受け取れる傷病手当金を同性パートナーでも申請できるようにする、としたのです。全国初の快挙です(詳細はこちら

 そして9月17日、世田谷区議会定例会で、区の「職員の退職手当に関する条例」では「配偶者」に「届出をしないが職員の死亡当時事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」を含むと書かれていることについて上川あや区議が「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に「同性パートナーを含むか否かは、公金の使途でもあることから、社会通念の有無にも左右される」と指摘し、「職員死亡時の退職金の受給権も当然、同性パートナーに認められるようにするよう求めます」と区の見解を問いました。これに対し、田中文子総務部長は「世田谷区においては、同性パートナーも事実上の婚姻関係に準ずるとする社会通念が形成されているものと評価しております」と答弁しました(社会通念が形成されていると公に表明されたのは初めてだそうです)
 一方で、退職手当の支給についての規定や解釈は規定や解釈は「23区共通基準」であるとして「現時点で職員の同性パートナーに退職手当を支給することは難しいと考えております」と述べました。今回の件に限らず、区職員の退職手当など人事給与面の処遇に関することは、特別区である23区共通でなくてはならないとされ、区単独の運用はできないといいます。田中総務部長は答弁で「同性パートナーも事実上の婚姻関係に準ずるとする区の認識が、23区の共通の理解となるよう働きかける」と述べました。

 上川あや区議が今回、区から「同性カップルも事実上の婚姻関係であるとの社会通念が形成されている」との答弁を引き出したのは、社会通念を理由とした無慈悲な判決への義憤があった(ある意味、雪辱戦だった)からで、法制度のみならず司法までもが同性愛差別を正当化してる現状に対する社会的メッセージであり、もちろん、原告の同性愛者の方へのエールでもあったことでしょう。上川区議の奮闘に励まされた当事者の方は少なくないはずです。本当に立派な政治家だと言えます。(区議会なんて本当に小さな自治体の話で、取るに足らないではないかという見る向きもあるかもしれませんが、とんでもない差別発言をすれば連日メディアで取りざたされますし、今回のようなLGBTQにとって重要な出来事は、きちんと大手メディアで報道されるわけで、決してその影響力は小さいとは言えません。同性パートナーシップ証明制度がまさにそうであったように、自治体の制度が社会を変えていくきっかけにもなりえるのです)
 
 「自治体にパートナーシップ制度を求める会」の世話人を務める鈴木賢・明治大学教授(比較法)は、今回の世田谷区の見解と結論について「退職手当の金額は大きく、受け取れないのはゆゆしき差別だ。結論として同性カップルが対象に含まれないのは残念」「社会通念が形成されているとする見解を公的機関が表明するのは初めてで、さまざまな制度に波及して社会を変えていく重要な一里塚だ」「世界は明らかに同性カップルを家族として扱うという潮流になっており、日本もその方向へ向かっている」と語っています。

 

参考記事:
同性カップルは「事実婚」か(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20201016/ddm/013/040/015000c

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