NEWS

ゴールデングローブ賞授賞式でエレン・デジェネレスが特別賞を受賞し、『ロケットマン』が2冠に輝き、ビリー・ポーターが素敵な衣装で登場(今年のクィア的な見どころを解説)

 1月5日(現地時間)、ザ・ビバリー・ヒルトン・ホテルで第77回ゴールデングローブ賞授賞式が開催されました。アカデミー賞の前哨戦とも言われ、映画界、テレビ界ではアカデミー賞、エミー賞に次ぐ重要なイベントと目されているゴールデングローブ賞ですが、今年は、オープンリー・レズビアンのエレン・デジェネレスが特別賞であるキャロル・バーネット賞を受賞したほか、エルトン・ジョンの伝記映画『ロケットマン』が2冠に輝き、ジュディ・ガーランドの生涯を描いた『ジュディ 虹の彼方に』が主演女優賞(レニー・ゼルウィガー)に輝きました。
 

 まず、何と言っても今回のゴールデングローブ賞授賞式でLGBT的に重要なトピックだったのは、テレビを通して業界と視聴者に強い影響を与えた人に贈られる特別賞「キャロル・バーネット賞」が、エレン・デジェネレスに授与されたことです。
 エレンと同じくレズビアンのコメディアンであるケイト・マッキノンがプレゼンターとして登壇し、マイクの前でジョークを交えながらこう語りました。
「エレンのコメディ番組が人気絶頂だった1997年に、私は母の家の地下室にある鏡の前で筋トレをしながらこう自問していました。『私、ゲイ※なのかしら?』。結果的に、私はゲイでした。そして今もゲイです。ただ、それに気づくのは恐ろしいことなのです。DNA検査サービスの「23andMe」をやってエイリアンのDNAをもっていると知らされるのと同じようなもの。そんななか、その恐ろしさを緩和してくれたのはテレビに映るエレンでした。彼女は真実を話すために、自身の人生とキャリアを犠牲にしました。そしてその結果、ひどく苦しんだ。世の中の風潮は変わってきていますが、それは、エレンのような人が炎の中に飛び込んでくれたからです。私自身、エレンをテレビで見ていなかったら、『LGBTQの人はテレビには出られないから私にはテレビは無理』と思っていたでしょう。それだけでなく、自分がエイリアンであり、この世に存在すべきではないと思っていたかもしれません。だからエレン、私に幸せな人生を生きる機会をくれてありがとう」
 最後には涙で声を震わせてエレンを称えたケイト。そんなケイトのスピーチを、妻である俳優のポーシャ・デ・ロッシの隣で聞いていたエレンの目にも涙が浮かんでいるように見えたといいます。
 そしてステージにあがったエレンは、「この受賞の素晴らしいところは、来る前から自分が受賞することがわかっているところ。ここにいる多くの人たちのように、ドキドキしながら待たなくていいからね」などと一通りジョークを飛ばしたあと、こう続けました。
「みんなを笑わせて、いい気分にさせること。私がしたいのはそれだけです。自分の番組を通して、誰かが良い一日を過ごせた、つらい経験や痛みを乗り越えられたと聞くことほど嬉しいことはありません。私にとってテレビの本当のパワーとは、みんなが番組を見てくれることだけでなく、番組を見て、みんなが善い行いをしようとインスパイアされることなのです」
 エレンは1994年に主演コメディ番組『エレン』が全米で放送スタートして大人気を博し、1997年にレズビアンであることをカミングアウトし、アメリカのテレビ史上初めて自身の冠番組でカミングアウトした人となりました。当時、人々の反応は厳しく、『エレン』は放送中止となり、エレンのキャリアは事実上抹殺されたそうです。しかし、彼女は辛抱強く頑張り、2003年にスタートしたお昼のトーク番組『エレンの部屋』が高視聴率となり、今ではアメリカで最も稼ぐ司会者のひとりとして活躍しています。
(スピーチの全文の日本語訳がこちらに掲載されています)

※アメリカでは、女性の同性愛者も「ゲイ」と自称することがたびたびあります。
 
 それから、エルトン・ジョンの伝記映画でセクシュアリティや薬物中毒の真実をリアルに描いた『ロケットマン』が、映画の部「コメディ/ミュージカル部門」で主演男優賞と主題歌賞に輝きました。『ボヘミアン・ラプソディ』ほどセンセーションを巻き起こしたわけではありませんでしたが、各方面で高い評価を得た、素晴らしい作品でした。
 見事に主演男優賞を受賞したタロン・エジャトンは、『ボヘミアン・ラプソディ』で主演を務めたラミ・マレックにハグし、頭へキスしました(SNSで「素敵」「胸アツ」と話題になっています)。受賞の瞬間のエルトンの喜びよう(ガッツポーズ)もかわいいと評判でした。
 
 映画でどこまで描かれているかわかりませんが、ストーンウォール事件の引き金となったと噂されるほどゲイに熱い支持を得ていた(自身もバイセクシュアルであった)ジュディ・ガーランドを、レニー・ゼルウィガー(『シカゴ』『ブリジット・ジョーンズの日記』)が演じたことで話題を呼んだ『ジュディ 虹の彼方に』が、映画の部「ドラマ部門」で主演女優賞を獲得したことも、注目に値します。日本公開は今年3月だそうなので、楽しみに待ちましょう。

 もう一つ、LGBTコミュニティだけでなく世界的に注目を集めていたのが、「ビリー・ポーターがどんな衣装を着てレッドカーペットに登場するか?」でした。昨年のアカデミー賞授賞式にタキシードドレスで現れ、話題をかっさらったオープンリー・ゲイの俳優、ビリー・ポーター。それ以降、MET GALAでは太陽神に扮し、トニー賞授賞式では子宮ドレスを披露するなど、常に人々の注目を集めてきました。
 今回、ビリーはジャケットの裾にフェザーのとてつもなく長いトレーンをあしらうことでゴージャスなドレスを思わせるバックデザインに仕上げた白いタキシード姿で登場しました(デザインはアレックス・ヴィナシュ。製作に3ヶ月を要したそう)。靴はジミー・チュー、ジュエリーはティファニーだったそうです。残念ながら受賞はなりませんでしたが(ドラマ「POSE」に主演し、テレビ・ドラマ部門の主演男優賞にノミネートされていました)、有名女性ファッション誌で「間違いなく今夜の話題をさらったのはビリーだ」と書かれるほど、目立っていました。
  
 
 昨年は映画の部「ドラマ部門」で『ボヘミアン・ラプソディ』が作品賞&主演男優賞を受賞し、映画の部「ミュージカル/コメディ部門」で『グリーンブック』が作品賞、助演男優賞、脚本賞に輝き(作品賞をゲイ映画が独占するという快挙を達成)、ほかにも『英国スキャンダル〜セックスと陰謀のソープ事件』『女王陛下のお気に入り』『アメリカンクライムストーリー:ジャンニ・ヴェルサーチの暗殺』など、ゲイやレズビアンの作品が多数受賞し、史上最高にクィアなゴールデングローブ賞だったと称されました(詳しくはこちら)。今年はさすがに昨年を超えるものではありませんでしたが、それでも、LGBT的に素敵なトピックがいくつもあって、よかったです。



参考記事:
ゲイ告白して「キャリア抹殺」されたエレンをLGBTQ俳優が涙の感謝(フロントロウ)
https://front-row.jp/_ct/17330085
ゴールデン・グローブ賞で絶賛されたケイト・マッキノンの感動スピーチ(ELLE)
https://www.elle.com/jp/culture/movie-tv/a30414771/77th-golden-globe-awards-2020-kate-mckinnon-speech-for-ellen-200106/
タロン・エジャトンが『ロケットマン』で主演男優賞を受賞、エルトン・ジョンの反応が可愛すぎる(フロントロウ)
https://front-row.jp/_ct/17330140
ビリー・ポーターが期待を裏切らないルックでゴールデン・グローブ賞のレッドカーペットに!(ハーパーズ・バザー)
https://www.harpersbazaar.com/jp/celebrity/celebrity-fashion/a30408480/billy-porter-golden-globes-2020-200106-lift1/

ジョブレインボー
レインボーグッズ