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今年のグラミー賞で活躍したクィアなアーティストは?
1月26日(現地時間)に開催された第62回グラミー賞授賞式で、全米シングルチャートで驚異の19週連続No.1という輝かしい記録を樹立したオープンリー・ゲイのリル・ナズ・Xが<最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス><最優秀ミュージック・ビデオ>の2部門を受賞しました。多様性あふれるアーティストとコラボしたステージ・パフォーマンスも話題を呼びました。
こちらのニュースでお伝えしていたように、今回のグラミー賞でリル・ナズ・Xは最優秀新人賞など主要3部門を含む6部門でノミネートされており(6部門ノミネートはリゾに次ぐ多さで、男性では最多)、どこまで賞を獲得できるかが注目されるところでした。
まず、レッドカーペットには、カウボーイ・スタイルとロックテイストを掛け合わせた全身ピンクのレザースーツ(ヴェルサーチ製作)で登場しました。ピンクはもちろん、同性愛者のシンボルカラーです。
そして、ステージ・パフォーマンスでは、メリーゴーランドのようにクルクルと回転するセットで(授賞式の直前に訃報が届いた元NBA選手コービー・ブライアントへのオマージュを捧げつつ)「オールド・タウン・ロード」でフィーチャリングしているビリー・レイ・サイラスをはじめ、グラミー初登場となるBTS(防弾少年団)、DJのディプロ、話題の新人メイソン・ラムジーらと競演し、「オールド・タウン・ロード」が象徴するダイバーシティを体現していると賞賛されました。
<最優秀新人賞><最優秀楽曲賞><最優秀アルバム賞><最優秀レコード賞>という主要4部門は、なんとビリー・アイリッシュが独占し(しかも最年少で受賞)、リル・ナズ・Xは<最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス><最優秀ミュージック・ビデオ>の2部門での受賞にとどまりました。
なお、リル・ナズ・Xは、コービー・ブライアント元NBA選手の突然の死を考慮し、グラミー受賞喜びのツイートを書き換えたり、ステージ・パフォーマンスでもブライアント選手のユニフォームを掲げて追悼するなどしていました。
それから今回、歴史を作ったオープンリー・レズビアンのアーティストがいました。マドンナの『I Rise』のTracy Young's Pride Intro Radio Remixで、女性として初めて<最優秀リミックス・レコーディング(ノン・クラシック)>部門の受賞者となったトレイシー・ヤングです。
受賞スピーチでトレイシー・ヤングは「歴史を作ったよ、レディたち」「私は、これまで見落とされてきたすべての女性プロデューサーを代表して、誇りを持ってこの賞を受け取ります」と語りました。
グラミーにノミネートされた際の『Adovocate』誌のインタビューで、彼女は「私は、バージニア州出身の音楽を愛する女の子でした。そして今、歴史を作り、マドンナの曲でグラミーにノミネートされることになりました。もしあなたに夢があるなら、それに向かって突き進んで。きっと夢は叶うから」と語っています。
トレイシーは、レディ・ガガやシェール、セリーヌ・ディオン、ブリトニー・スピアーズ、マライア・キャリー、そしてマドンナなど、100人以上のトップアーティストのリミックスを手がけてきました。そして50曲以上がビルボードのクラブチャートで1位を獲得しています。
なお、<最優秀リミックス・レコーディング(ノン・クラシック)>は1998年に創設された部門で、第1回はクラブ界のゴッド・ファーザー、故フランキー・ナックルズが受賞しています(以降、女性が受賞したことは一度もありませんでした)
もう1人、グラミーに輝いた黒人の「クィア」なアーティストがいました。『IGOR』で<最優秀ラップ・アルバム>を受賞したタイラー・ザ・クリエイターです。
タイラー・ザ・クリエイターは、かつてフランク・オーシャンも在籍していたオルタナティブ・ヒップホップ集団「Odd Future」のリーダーで、以前は曲の中で「Faggot(オカマ)」という差別語を連発して批判されたそうですが、2015年に『ローリングストーン』誌で「1996年頃のレオナルド・ディカプリオに性的に惹かれる」「恋人にしたい」と語り、同年、「4日前にカミングアウトしようとしたのに誰も気にかけてくれなかった、ハハハハハ」とツイート、2017年にはグラミー賞ノミネート作『Flower Boy』の中で「俺は2004年から白人の男の子たちとキスしているんだ」と歌い、また、インターネットラジオ局「KNOW WAVE」で「LAに住んでた15歳の頃は男の子とつきあってた」とカミングアウトしました(この発言については、偏見がないことを伝えるための言葉の綾だったとのちに否定)。そして、2018年、ウィル・スミスの息子であるジェイデン・スミスが、ライブのMCの中で「タイラー・ザ・クリエイターは僕のボーイフレンドだ!」と連呼し、最前列で見ていたタイラーは手を振る仕草でその場を立ち去り、「そうさタイラー、僕がみんなにバラしちゃったから君はもう否定できないよ」とのジェイデンのツイートに「ハハハ、お前はクレイジーな奴だな」と返信。今回もジェイデン・スミスは、タイラーが<最優秀ラップ・アルバム>を受賞した瞬間、「僕の彼氏がグラミーを獲った」とツイートしています。こうした二人のやりとりがどこまで真実でどこまで冗談なのか…。『OUT』の公式Twitterアカウントは「このゲームにつきあうのはもう疲れたよ」とコメントしています。
タイラーは、受賞の直前、『IGOR』収録の「Earfquake」のパフォーマンスも披露しています(金髪のマッシュルームカットのかつらをかぶって)
なお、タイラーはレッドカーペットにピンクのベルボーイの格好で登場し、持っていたスーツケースを開けると中にピンクのポロシャツが入っていました(それを着て授賞式に。常にギャグをやらないと気が済まない、タイラーらしいパフォーマンスでした)
さて、賞は受賞していないものの、ある意味、誰よりも目立っていたゲイのアーティストがいます。昨年のアカデミー賞でタキシード・ドレスを着て以来、人々をアッと驚かせ、賞賛を集めてきたビリー・ポーターです。
今回は果たしてどんな衣装を着て登場するのか?に注目が集まっていましたが、ビリーはフリンジをあしらったシャンデリア状のハット、ジャンプスーツ&ボレロ、そしてラインストーンをあしらったブーツ(BAJA EAST製作)といういでたちで登場、ラインストーンのフリンジに視界を遮られた状態でフォトコールに現れ、カメラマンたちがシャッターを切る最中にフリンジがカーテンのように開いて(モーターが付いていたそう)顔が露わになるという仕掛けを披露したそうです。人々の期待を裏切らないビリーです。
参考記事:
「第62回グラミー賞」は“ダイバーシティー”&“ガールズパワー”に注目!ビリー・アイリッシュ、リル・ナズ・X、BTSら見どころ一挙紹介(モデルプレス)
https://news.nifty.com/article/entame/showbizw/12160-541497/
ビリー・アイリッシュ、アリアナ・グランデ、BTSら豪華集結 セレブの個性豊かなレッドカーペットファッションまとめ<第62回グラミー賞>(モデルプレス)
https://mdpr.jp/international/detail/1948775
【写真特集】第62回グラミー賞授賞式、レッドカーペット(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3265053
リル・ナズ・Xとビリー・レイ・サイラス、韓国BTSらと多様性を体現【グラミー賞】(フロントロウ)
https://front-row.jp/_ct/17335683
【グラミー賞】史上最長19週連続1位リル・ナズ・X、BTSらと豪華コラボステージ(ORICON)
https://www.oricon.co.jp/news/2154059/full/
リル・ナズ・X、コービー・ブライアント元NBA選手の死を考慮し、グラミー受賞喜びのツイートを削除(BARKS)
https://www.barks.jp/news/?id=1000177683
Lesbian DJ Tracy Young Makes Grammy Herstory(OUT)
https://www.advocate.com/music/2020/1/26/lesbian-dj-tracy-young-makes-grammy-herstory
ビリー・ポーター、グラミー賞にモーター付きのハットで登場!(VOGUE)
https://www.vogue.co.jp/celebrity/article/2020-01-27-billie-eillish-inspires-billy-porters-grammy-look