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パートナーが同性の米国人男性が在留資格を求め、提訴へ
日本人の同性パートナーと15年近く連れ添い、米国で法的に結婚をしているのに安定的な在留資格が得られないのは、性的指向に基づく差別で、憲法が保障する「法の下の平等」に反するなどとして、米国籍の男性が近く、国に在留資格の変更などを求める訴訟を東京地裁に起こします。
原告は東京都内に住むアンドリュー・ハイさん。米国の大学でソフトウェア開発に従事していた2004年、留学中の日本人男性と出会い、翌年から同居を開始、2009年に日本人男性が日本で職を得た後は、断続的に日本に住んでいます。お二人は米国の連邦最高裁判所が同性婚を認めた2015年、米国で結婚しました。
現在、日本人男性が購入したマンションで一緒に暮らしています。アンドリューさんが家事などを担い、男性は会社員として家計を支えます。
日本人が外国籍の異性と結婚した場合、来日時に異性のパートナーに「配偶者」の在留資格が与えられますが、パートナーが同性である場合は、事情が異なります。同性婚が法的に認められている国で同性結婚した場合、来日する外国籍パートナーに配偶者の在留資格は認められません。双方の国で同性婚が認められていれば、審査の上、「特定活動」の在留資格が出ることもあります。アンドリューさんの場合、パートナーが同性婚が認められていない日本人であるため、「特定活動」に該当しません。
このため、アンドリューさんは日本で起業し、「経営・管理」の在留資格を得ました。この在留資格を取得するため、長年働いた米国の大学での正規職員の職を失いました。しかし、事業が傾き、昨秋、更新が困難になりました。
以来、5回にわたり、人道上の理由や社会経済情勢の変化などを考慮して与えられる「定住者」の在留資格を求めましたが、いずれも不許可になりました。現在は出国準備のための短期間の在留資格しかありません。
アンドリューさんは訴訟で、不許可処分が無効であることの確認を求めるとともに、「定住者」の在留資格への変更を求めます。
アンドリューさんは「いつ日本で暮らせなくなるかわからないから、ちゃんとした家具が買えない。1年先、どうなっているのかといつも不安になる」「家族と一緒に暮らすという当たり前のことをしたいだけ」と語ります。
パートナー男性は「日本人であるがゆえに、日本の法律によって家族生活を維持できなくなっている。自分の国から追い出される感覚だ」と語ります。
今年3月には、日本で25年間パートナーと連れ添ってきた台湾籍のゲイの方に在留特別許可が下りました。
また、9月には、1981年から日本に滞在している外国籍のMtFトランスジェンダーの方(母国では性別変更できないため、男性パートナーの関係は法律上「同性」になります)に在留特別許可が下りました。
しかし、今回のケースでは在留特別許可が下りませんでした。どういう時には許可が下り、どういう時は認められないのか、その基準ははっきりしていません。決して「同性パートナーにも在留資格が与えられるようになった」と安心することはできないのです。
日本で同性婚や同性パートナーシップ法などの制度に守られていないため、海外で日本人と法的に結婚していながら、日本での在留資格が不安定な立場の外国籍の同性パートナーは少なくありません。同性婚訴訟の原告になっているドイツ人女性も、ドイツで日本人女性と同性結婚した後に来日していますが、今年2月に提訴した時は「留学」の在留資格でした。
弁護団では「日本人男性が日本国籍を失えば、アンドリューさんと日本で同居できる。不合理という言葉を超えている事態だ。日本の法制度が追いついていない以上、臨機応変に対応することを想定して設けられた『定住者』の在留資格を、国は与えるべきだ」としています。
参考記事:
日米同性カップル、安心して暮らしたい 米国人男性、定住者資格求め提訴へ(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14166732.html?iref=pc_ss_date