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一橋大卒業生有志が学内にLGBTセンターを開設、アウティング事件をきっかけに
一橋大でゲイであることをアウティングされた大学院生が校舎から転落死した事件をきっかけに、一橋大卒業生有志が「プライドブリッジ」という団体を立ち上げました。一橋大学ジェンダー社会科学研究センターと共同で、学内にLGBTのセンターを設けるほか、性の多様性を学ぶ講座を開くなどのプロジェクトを進める予定です。
2015年8月、一橋大法科大学院(ロースクール)で学んでいたゲイの方が、同級生からアウティングを受け、(学内で相談もしましたが、性同一性障害のパンフレットを渡されるなど不十分な対応で)精神状態が悪化し、校舎から飛び降り自殺するという事件が起こり、翌年、遺族の方が提訴しました。この裁判を担当した南弁護士は2017年4月、記者会見で「彼が亡くなったのは、彼が同性愛者だからではない。同性愛者を差別し、蔑み、認めない社会があるからだ」と語っています(詳しくはこちら)。アウティングした同級生とは和解が成立しましたが、大学側の対応については引き続き争われ、今年2月、東京地裁が訴えを棄却し、「アウティングが不法行為であるかどうかという判断すらしていない」「学校や職場における当事者の安全に関わる問題だ」など、批判が噴出しました(詳しくはこちら)
しかし、この事件をきっかけに、世間に「アウティング」ということが認知されるようになり、文京区は2017年、区職員や教員向けに策定した対応指針の中でアウティングを避けることを明文化し、一橋大学がある国立市は2018年、全国で初めて「アウティングの禁止」を盛り込んだ条例を制定しました。また、今年5月、パワハラ防止を義務付ける関連法が可決され、SOGIハラとアウティングの防止も盛り込まれることになりました。
一方、同じ一橋大学の卒業生として、亡くなった彼は「まさに自分だ」と感じ、言いようのないショックを受けるとともに、世の中を変えていこうと決意した方がいました。それが、NPO法人グッド・エイジング・エールズの松中権さんです(詳しくはこちら)
松中さんは勤めていた電通を辞め、東京五輪での「プライドハウス」の設置に専念する道を選び、また、LGBTへの差別をなくすための法律の制定を求めてレインボー国会を開催するなど、様々な活動に身を投じながら、「二度と同じような悲しい出来事が一橋大学で起こらないようにしたい」という思いで「プライドブリッジ」という団体も立ち上げました。
卒業生らが今年2月から会員制交流サイトなどを通じて呼びかけ、現在までに129名が賛同しているそうです。「プライドブリッジ」会長に就いた松中権さんは8月8日、都内で記者会見を開き、「当事者らが気軽に集える場をつくりたい」と語りました。同団体では来月から「一橋プライドフォーラム」というプロジェクトをスタートさせ、一橋大学ジェンダー社会科学研究センターとの共同事業として、学内にジェンダーやセクシュアリティを学び、交流できるセンターを設置し、また、寄付金を募り、当事者や行政担当者らが講師を務める講座も全13回の予定で開く予定です。それ以外にも、LGBTフレンドリーな教育環境整備のための実態調査や、学生と教職員の定期的な意見交換会などの開催も予定しているそうです。
松中さんは「(一橋大学法学部に在学していた頃は)カミングアウトは選択肢にも入っていませんでした。学校の中に相談できる場所があったらよかったと思いました」と、「学生や教職員にもLGBTは当たり前にいる。居場所づくりや教育、支援をしていきたい」と語りました。
LGBT、気軽に集える場を 一橋大卒業生有志が団体設立(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201908/CK2019080902000125.html
一橋大アウティング事件から4年。LGBTQ当事者を支援する「プライドフォーラム」が同大でスタート(ハフィントンポスト)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/hitotsubashi-pride-bridge_jp_5d4bcc93e4b01e44e4753536