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栃木・小山の映画館が、同性カップルもペア・デーの利用OKとしたことで話題に
栃木県小山市の「シネマハーヴェストウォーク」「シネマロブレ」は、地元のファミリー層や映画ファンに人気のシネコンですが、これまで異性カップル限定だったペア・デーを、性別にかかわらず利用できるようにしたことで話題になっています。
この2劇場では、もともと毎週月曜のメンズ・デー、毎週水曜のレディース・デーなどの割引優待があり、毎週金曜のペア・デーは性別を問わず2人組の来客に適用されますが、これは同性カップルへの配慮から始めたサービスなんだそうです。
「このサービスを始めるきっかけになったのは、2017年に行った全国興行生活衛生同業組合連合会(全興連)青年部主催の勉強会です。LGBTの基礎知識を学び、LGBTのお客様が映画館にどのようなことを求めているかを考えるために開いた勉強会だったんですが、そのときから「何かを始めよう」と思い始めたんです。以前から、文化を発信する映画館こそがマイノリティの暮らしをサポートする姿勢を示さないといけないと思っていましたし、お客様側からもそれが当たり前という感覚を持っていただきたかった。そのためには根本から変えていかないといけません。でも、「LGBTのためにやってます!」と打ち出すと、暗に否定的に受けとめる方もいらっしゃるでしょうし、当事者の方々にも利用しづらいことは勉強会でよくわかっていました。そこで、どうすればお客様目線で自然な形でサービスを取り入れられるかを考えました」と、劇場を運営する銀星会館の専務・柳裕淳氏は語ります。
ペア・デーは、同性カップルでも異性カップルでも友達どうしでも使える割引特典です。これを同性カップルのみ適用(同性パートナーシップの証明書を提示して)などとしてしまうと、当事者にカミングアウトを強要することになるため、性別を限定せず2人組だったらOKとしたそうです。
「以前からペア・デーはあり、それは異性カップルに限定していたんですね。その限定を外し、サービスを刷新するだけのことだったので、こちらとしては手間いらず。ポスタービジュアルに、わかる人はわかるようレインボーのリボンをあしらい、「We support Diversity(多様性をサポートします)」と明示しました。気になっていたのは劇場のスタッフがどう考えるかということでしたが、このサービスのことを最初に話したときに、スタッフは全員一致で「ぜひやりましょう。やるべきです」と言ってくれました。誰か異論をとなえるかと思ってビクビクしていたので、とても嬉しかったですね」
サービスを同性カップルや友達にも適用したあと、動員が伸びているそうです。
この映画館では近々、スタッフの制服を、性別を限定しないジェンダーレスなデザインにリニューアルする予定だそうです。
同性カップルへの配慮が行き届いていると感じられる、たいへんいいニュースでした。
(ただし、このニュースを報じた記事はいずれも「LGBTカップル」と表記しているのが残念です。LGBTは男女(異性カップル)の対義語ではありませんし、トランスジェンダーとストレート・シスジェンダーのカップルが戸籍上同性カップルになる場合などもあります)
ちなみに、映画業界で初めて同性カップルも異性カップルと同等に割引の対象としたのは、渋谷区のパートナーシップ条例制定から1年近くが経った2016年3月、シネスイッチ銀座をはじめとする映画『人生は小説よりも奇なり』の上映館で「夫婦50割引」を同性カップルにも適用したケースだと言われています。
その後、109シネマズ、MOVIX、イオンシネマなどの映画館チェーンでも、同性カップルが「夫婦50割引」を利用できるということが明らかになっています。
また、いつからかはわかりませんが、「ココロヲ・動かす・映画館○ COCOMARU THEATER」「MOVIE ON やまがた」「鳥取シネマ」といった映画館で、小山の映画館と同様に、同性カップルもペア・デーを利用できますと公式サイトに書かれています。
上記の『人生は小説よりも奇なり』の夫婦50割適用のニュース(マスメディアではほとんど取り上げられておらず、g-lad xxやAll About[セクシュアルマイノリティ]をはじめとするLGBTサイト記事だけです)が映画業界にじわじわと広まり、心ある映画館が取組みを進めた結果だと思われます。
参考記事:
栃木・小山の映画館の取り組み「ペア・デー」話題に LGBTカップルにも割引適用(映画.com速報)
https://eiga.com/news/20190823/10/
LGBTペアも映画鑑賞料割引 小山の2館、毎週金曜(下野新聞)
https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/194461