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ILO総会でハラスメント禁止条約が採択され、初の国際ルールが成立 ただしLGBT保護は盛り込まれず

 先日、職場での暴力・ハラスメントの根絶を目指す条約の制定についてILO総会で議論が行われていますというニュースでお伝えした通り、国際労働機関(ILO)はジュネーブで開催中の年次総会で、職場での暴力とハラスメントを禁止する初めての国際条約の制定に向けて議論を重ねていましたが、最終日の6月21日に採決が行われ、賛成多数で採択されました。
 
 採決では、加盟国の政府に2票、労働組合と経営者団体にそれぞれ1票ずつ投票権が割り当てられ、結果、条約は賛成439、反対7、棄権30と、圧倒的多数の支持を得て、採択されました(日本から参加した政府と連合は賛成しましたが、経団連は棄権しました)
 条約は、暴力やハラスメントを「身体的、精神的、性的、経済的損害を引き起こす許容できない行為や慣行、その脅威」と定義し、政府には職場での暴力やハラスメントを法律で禁じることを義務づけ、被害者を救済する措置を求め、雇用主には被害防止へ職場で適切な措置を取ることや、内部通報者らが報復を受けることのないような防止策も必要であると、また、必要に応じて「制裁を設ける」とする、厳しい内容です。
 対象になるのは、正規の従業員のほかインターンやボランティア、それに仕事を探している人も含まれ、職場だけでなく、出張先や通勤中、SNSなどでのコミュニケーションなどでも適用されるとしています。
 今後、ILOの187の加盟国はそれぞれ条約を批准するか検討し、批准した国は、条約に沿った国内法を整備していくことが求められます(日本政府は「国内法制との整合性について、関係省庁と確認していく」としています。先日、パワハラ防止関連法が成立しましたが、行為そのものの禁止や罰則は盛り込まれておらず、批准するとなるとさらに法改正が必要だと指摘されています)
 条約の内容が厳しくて批准するにはハードルが高いというような国にも配慮し、条約とは別に、拘束力のない「勧告」も設けられているそうです。
 
 ILOがこのような国際条約を採択した背景には、セクハラや性暴力を告発する「#MeToo(私も)」運動の高まりがあります。女性に限らず、すべての人に対する暴力やハラスメントをなくそうと、各国が一致してセクハラ・パワハラ対策の法整備を進めることを目指したのです。

 当初案ではLGBT(性的マイノリティ)も暴力やハラスメントから保護されるべきだとする記述がありました。しかし、米国やアフリカ諸国などの要請が反映され、単に「被害を受けやすい集団を守る対策を取る」という抽象的な言い方に修正されたとのことです(トランプ政権は、LGBTが職場で暴力やハラスメントを受けても仕方ない、守る気がないと宣言したようなものです…残念です)
 
 条約可決後に記者会見したILOのライダー事務局長は「今も多くの男女が職場で苦しんでいる。暴力とハラスメントを止めることが今回の総会からのメッセージです」と語りました。
 


参考記事:
ILO ハラスメントを全面的に禁止する初の国際条約を採択(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190622/k10011964611000.html
職場のハラスメント禁止条約採択 初の国際基準成立(FNN)
https://www.fnn.jp/posts/00419673CX/201906221227_CX_CX
ハラスメント禁止条約を採択=「LGBT保護」盛り込まれず-ILO(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019062100840
ハラスメント条約、採択へ(共同通信)
https://this.kiji.is/514383414586983521?c=39546741839462401
日本政府、ハラスメント禁止条約に賛成票 批准は未定(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46448770S9A620C1NNE000/
ハラスメント禁止条約、初の国際ルール、ILO総会(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46361440Q9A620C1EA1000/
ハラスメント禁止条約、日本も賛成したけれど 批准に壁(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASM6P5T13M6PULFA02N.html

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