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性的マイノリティのためのお寺が建立されました
トランスジェンダーの尼僧、柴谷宗叔(そうしゅく)さんが性的マイノリティのために建立を進めてきた「性善(しょうぜん)寺」が大阪府守口市の空き寺を譲り受けて完成し、2月24日、柴谷さんの晋山(しんさん)式※の法要が営まれました。柴谷さんは「またとない仏縁で、性的少数者のための寺を開創することができた」と喜びを語りました。
※晋山式:各寺院において新たに住職となった僧(「新命方丈」とも言います)が、その寺院に晋む(=進む)ことです。禅宗寺院は山間部にあることが多く、山号を持ち、寺院を山ともいうため、「山に晋む式」と書いて「晋山式」と言います。要は、住職交代式ということです。
子どもの頃から男性の体に違和を感じ、悩んでいた柴谷さん。新聞記者時代に巡礼として始めた四国遍路が縁で、高野山大学で仏教を学び、2005年、51歳の時に得度して僧侶になりました。2010年には性別適合手術を受けて戸籍上も女性となり、高野山真言宗から僧籍簿の変更も認められました(女性となることについて高野山の内部で反対の声も上がったそうです)
「多様な性は善」との信念のもと、性的少数者に対する理解を深める活動を展開するなかで「かつての自分と同じ立場の人たちのSOSに応える『駆け込み寺』のような場をつくりたい」と、寺の整備を思い立ったといいます。
当初、大阪府寝屋川市の実家の離れでの建立を目指していましたが、昨年8月、住職がおらず空き寺状態だった守口市の大徳山浄峰寺(じょうほうじ)を知人を通して譲り受け、性的マイノリティのための新寺とすることにしました。
パートナーが同性であっても同じ墓に入れるようにしたり、望む性別の戒名を生前に与えたり、同性カップルの仏前結婚式などに取り組むそうです。
近年、仏教界での性的マイノリティへのサポートが急速に進んでいます。
2017年には東京都江戸川区の證大寺が同性カップルも一緒に入れるお墓を創設しました(證大寺は昨年の東京レインボープライドにも協賛しています)
また、男性には「信士(しんじ)」「居士(こじ)」、女性には「信女(しんにょ)」「大姉(だいし)」などとつけられる戒名について、仏教界で議論が始まっています。
東京都台東区にある浄土宗清光寺の岡本幸宗住職は一昨年、希望していた性別適合手術を受ける前にがんで早世したMtFトランスジェンダーの葬儀を執り行いましたが、その際、家族とも話し合って、遺影には女性としての写真を用い、戒名も「大姉」としたそうです。
真言宗智山派は昨年11月、LGBTをテーマにした初の研修会を東京都港区の寺で開き、戒名の問題についても話し合ったそうです。
浄土宗大阪教区教務所も昨年12月、同様の研修会を開いています。
僧侶が創業し樹木葬や寺院の支援などを行う株式会社アンカレッジ(東京都港区)は、同性カップルが寺院墓地に入る際に寺院が配慮すべき点を、近くガイドラインにまとめるそうです。
参考記事:
LGBTサポートの寺 大阪・守口に建立(産経新聞)
「戒名で性別分かってしまう」性的少数者を仏教界も尊重(朝日新聞)
LGBTの終活、仏教界が対策本腰(産経新聞)