NEWS
日本で25年間パートナーと連れ添ってきた台湾籍のゲイの方に、在留特別許可が下りました
20年以上にわたって日本人ゲイ男性との間でパートナーシップを築いてきた台湾の男性が、2017年、国外退去命令の取消しを求めて訴訟を起こしていましたが(詳しくはレポート:シンポジウム「同性国際カップルの在留資格をめぐって」をご覧ください)、国側が退去命令を撤回し、在留資格を認めたことがわかりました。3月22日に弁護団が明らかにしました。
代理人の永野靖弁護士は「同性パートナーに在留資格が付与されたのは、知る限り初めて。同性カップルが法的に保護されたことには極めて大きな意義がある」と語りました。
千葉市に住む台湾出身の40代男性は、現在、50代の日本人男性と25年間同居し、3年前に不法滞在の疑いで逮捕され、国外退去命令を受けましたが、「同性のパートナーがいることから在留資格が認められるべきだ」と主張して、退去命令の取消しを求めて東京地方裁判所に訴えを起こしていました。
代理人の弁護士によると、東京地裁は昨年12月、男性やパートナーへの尋問を終え、今年2月、国に処分見直しの打診をしたところ、再審査の申し出をすれば在留特別許可を与えるとの回答があったそうです。そこで、再審査を申請し、3月15日に「定住者」の在留特別許可が与えられたといいます。
弁護団によると、日本人と外国人の異性カップルであれば、オーバーステイであっても、結婚していれば(事実婚でも)ほとんど在留資格が認められますが、今回のように同性の日本人をパートナーにもつ外国人に在留資格が認められたのは初めてとみられるということです。「社会全般で(性的マイノリティへの)理解が浸透したことも決定の背景にあるのでは」と語っています。
原告の台湾の男性は会見で、「異性カップルは社会的に認められますが、僕らの場合は同性なので隠れて生きていくことしかできませんでした。パートナーは私にとって大切な家族です。これからも支え合って生きていきます」と語りました。また、裁判にあたり、日本の同性愛者らがクラウドファンディングで生活費を集めるなどの支援もあったことに対して「たくさんの励ましをありがとうございました」と感謝の意を表しました。「日本の憲法は同性婚を禁止していない。これからは日本の同性婚法制化のため、少しでもお役に立てるように頑張りたいです」とも語りました。
パートナーの日本人男性は、「パートナーがオーバーステイの状態から抜け出すことができました。私たちの人生や未来は、色にたとえると、グレーだと思っていましたが、これからは、少しでも明るい色になれるように、2人で前向きな気持ちと感謝の気持ちを忘れずに生きていきたいと思っています」と語りました。
法務省入国管理局は「これまでの一般的な在留特別許可の判断と同様、在留状況や生活態度などを総合的に勘案したものであり、日本人男性とパートナー関係にあることを特に重視して判断したものではない」というコメントを発しています。
元法務省入国管理局長の高宅茂・日本大危機管理学部教授は、「法務省は日本にどれだけ定着していたかに着目するので、今回の判断でパートナーの存在をどれだけ考慮したかは難しいところだ。ただ、パートナーかどうかに関わらず、国内で本人の面倒を見る人がいることは判断材料として大きいだろう」と述べています。
日本では、就労などで来日する外国人については、カップルの二人とも出身国で法的な婚姻関係を認められている場合、パートナーの日本滞在を受け入れています。しかし、「家族滞在」などの在留資格ではなく「特定活動」での入国・在留という扱いです。
外国政府の外交官や大使館職員などは、法的な婚姻でなくてもパートナーだとする出身国の証明があれば滞在を認めています。
国士舘大文学部の鈴木江理子教授(移民政策)は「外国人の同性パートナーに対する人道的配慮は評価できるが、『特定活動』で受け入れている点に、日本の保守的な家族観への強いこだわりがうかがえる」と指摘。「外国人への配慮はあるのに、同様の立場の日本人の権利を守らないのはおかしい」と語ります。
ともあれ今回、訴えが認められ、お二人が離れ離れにならずに済んだことは、本当に幸いです(SNS上でも、おめでとうの声がたくさん寄せられています)。外国人同性パートナー在留特別資格訴訟を支援する会hを立ち上げたり、シンポジウムを開催したり、クラウドファンディングで支援したり、傍聴席で裁判を見守ったりしてきた、たくさんの支援者の方々のおかげでもあると思います。
お二人は現在、千葉市で同性パートナーシップの手続きを行っているそうです。
おめでとうございます、と申し上げたいです。
参考記事:
同性パートナー 国外退去命令を撤回 在留資格認める(NHK)
同性パートナーに在留資格=国が退去処分撤回-東京地裁(時事通信)
台湾人男性に在留特別許可 日本人との同性カップル(共同通信)
同性パートナーに初の在留特別許可 オーバーステイの退去処分取り消しに(毎日新聞)
日本人の同性パートナーに在留特別許可 一度は退去処分(朝日新聞)
同性国際カップル「在留資格認めて」 日本人がパートナー 強制退去の台湾籍男性(東京新聞)
同性カップルの台湾人男性に在留許可 国が退去処分を撤回(産経新聞)
日本人と同性パートナー関係、台湾人男性に在留特別許可「グレーの人生、明るい色に」(弁護士ドットコムニュース)