NEWS
『スター・ウォーズ』最新作にシリーズ初の同性キスシーンが登場
12月20日から公開されている『スター・ウォーズ』シリーズ最新作&ひとまずのシリーズ完結編である『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の中で同性どうしのキスシーンが描かれました。42年間にわたる『スター・ウォーズ』シリーズの歴史の中で同性愛が直接的に描かれるのは今回が初めてです。
まだご覧になっていない方のために、どのキャラクターか、どんなシーンなのか、といったことは詳しく書きませんが(ぜひ映画館でご覧ください)、脚本・監督のJ・J・エイブラムスが、映画公開に先がけ、『ヴァラエティ』誌上で「LGBTQについて言えば、映画を観てくださるみなさんが、作品の中に自分たちが登場しているように感じてもらえることが大切だと考えています」と述べ、LGBTに関する何らかの描写が含まれることを示唆していました。
半世紀近くにわたって、アメリカの現代史を反映しながら製作されてきた壮大なスペースオペラの完結編、シリーズの有終の美を飾る作品で、性の多様性を尊重したいというメッセージとして、このように同性愛がフィーチャーされたことは、本当に美しく、素敵なことです。
しかし、レイという強い女性を主人公に据え、彼女を補佐する人物としてヒスパニック系とアフリカ系の男性が起用され、「多様性の尊重」を前面に打ち出した新3部作の、最後のメッセージとしてのLGBTの描写は、同性愛に不寛容な国々で、無残にカットされることとなりました。
映画の同性愛シーンをカットする事件といえば、最近、エティハド航空が同性のラブシーンだけをカットして機内放映していたことが問題になりましたが、中東の国々や中国、マレーシアなどではこれまでもたびたび、同性愛シーンがカットされたり上映禁止になったりしてきました(中東では『ブロークバック・マウンテン』や『キャロル』などが上映禁止となり、中国では『ブロークバック・マウンテン』が上映禁止となったほか、『ボヘミアン・ラプソディ』は同性愛に関するシーン10分以上がカットされて上映されました。マレーシアでは『美女と野獣』のゲイ的なシーンがカットされました)
今回の『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』については、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで、同性キスシーンだけをカットする形で上映が行われているそうです。UAEは近隣諸国よりも規制の基準が緩く、またドバイは中東におけるエンターテイメント業界の中心地となっているため、この方針は中東全体に広がると見られています。
一方、同性愛の描写を厳しく検閲してきた中国では、ノーカットでそのまま上映されているそうです。今回の判断に至った理由は不明ですが、『ブロークバック・マウンテン』や『ボヘミアン・ラプソディ』ほど同性愛要素が強くはないためではないかと見られています。しかし、『ヴァラエティ』誌は、中国における「LGBTQ表現の勝利」であるとして、現地SNSでさまざまな声が上がっていることも含めて伝えています。
意外なのは、シンガポールで同性キスシーンがカットされたことです。シンガポールの映画規制当局IMDAは、「作品の年齢制限を上げないためにディズニーが削除した」「映画のレイティングで高年齢向けの指定が必要となるであろう、短い場面を削除した」と説明しています。シンガポールでは、ソドミー法(同性間の性行為を禁じる法)が残っているものの、実際に逮捕されることはほとんどありません。ゲイ向けの施設があり、毎年「ピンクドット」が開催されています。昨年はゲイ男性に対し、代理母の生んだ子どもを養子にすることを認める画期的な判決が出たそうです。(なお、BBCの記事の「プライド行進」は誤りです。原文はpride rallyですが、シンガポールではデモが禁止されていて、代わりに「ピンクドット」が開催されているので、「プライド集会」が妥当です)
いつか、世界中どこの国でも、LGBTQ(セクシュアルマイノリティ、クィア)の存在が消されることなく、人々が自由に映画を楽しめる時代が来ることを願います。
参考記事:
スター・ウォーズ最新作から同性のキスを削除 米ディズニー(BBC)
https://www.bbc.com/japanese/50900444
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』終盤シーン、中東でカットされる ─ 中国ではそのまま上映(THE RIVER)
https://theriver.jp/tros-cut-middle-east/