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日本で初めて子育て経験があるLGBT100人超の声が可視化、周囲に相談しづらい現状が浮き彫りに

 NPO法人 虹色ダイバーシティが、子育て経験のある方を対象に「にじいろ子育て調査」を実施し、おそらく日本で初めて、100人超の子育て経験があるLGBTの声が可視化されました。「男の子は男の子らしく、女の子は女の子らしく育てるべき」と考える方が全体で2%を下回った一方、我が子が性的マイノリティだとしたら世間の差別が不安…と感じる方が87%に上りました。また、LGBTは子育てについて周囲に相談しづらいという現状も浮き彫りになりました。
 
 
 この調査は、虹色ダイバーシティが調査主体となり、社会学者の石田仁氏が設問を監修したもので、今年4~5月にインターネット上で実施、子育て経験のある1,434人から回答が得られました。このうちLGBTで子育て経験のある方が125人に上りました。
 
 注目すべきは、「男の子は男の子らしく、女の子は女の子らしく育てるべきだと思う」人が全体で2%を下回った(LGBTで2.13%、非当事者で1.84%)という結果です。男女の性差ではなく、その子が持っている個性を大事にしたい、あるいはこれまでのジェンダー規範に当てはめたくないという意識が強くなっていることが浮き彫りになりました。

 一方、教育機関においては男女の性差が前提とされる場面が多く、子ども/親どちらの立場でも困難を抱えている人が存在することが明らかになりました。具体的な内容としては、男女での色分けや制服の違い、男尊女卑などを挙げる人が多く、特に保護者の立場では、パパ/ママで役割が違ったり、グループ分けされることが多い幼稚園での困難をあげる声が目立ちました。特にトランスジェンダーの方の困難が大きい様子が窺えます。

 それから、全体の約87%が「自分の子どもが性的マイノリティだとしたら社会の差別に対して不安に思う」(「そう思う」+「ある程度そう思う」の合計)と回答していました。世間のLGBTに対する意識はサポーティブに変わってきてはいるものの、実際に自分の子どもが性的マイノリティだったとしたら…と仮定すると、まだまだ世間の差別を不安に感じる方が多いということです。

 子育ての悩みを誰に相談したか?という設問については、LGBTの場合、母親(義母を含む)にも「相談しなかった」人が38%に上り、非当事者と比べて約9%多い結果になりました。同様に、LGBTの方たちで保護者仲間に「相談しなかった」人が42%、職場の同僚らに「相談しなかった」人が51%、医療・福祉関係者に「相談しなかった」人が52%と、非当事者より10%以上高い結果となりました。一方、友人に「相談した」人はLGBTのほうが多かったそうです。
 子どもとの関係については、自分自身や現在の配偶者・パートナーが遺伝的な母親(生みの親)でない子どもは15%、同じく遺伝的な父親でない子どもは66%に上り、現行の法律上で親子関係にないものの子育てをしている例は、決して少なくないということが言えそうです。
 
 この調査結果は東京都内のイベントで発表され、子育て中の当事者らが登壇しました。トランスジェンダーのしげさん(活動名)は、「親も、今の自分のありようで子育てできる社会になってほしい」と語りました。
 虹色ダイバーシティの村木真紀代表は「LGBT当事者は地域でカミングアウトしている人が少なく、子育てでも孤立しがち。法的な親子関係にない場合、親権を持てず子どもの法的保障も不十分。同性カップルの婚姻の法整備が必要です」と語っています。

 なお、虹色ダイバーシティでは、今回の調査結果をもとに、子育てをする全ての人に対して「らしさ」を押し付けない、これからの子育てのヒントを届けるために、また、子育てをするLGBTが直面しがちな困難をサポートするために、「にじいろ子育て手帳」を製作したそうです。

 


参考記事:
子育ての悩み 相談できず LGBTの4割 母にも(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/metropolitan/list/201912/CK2019121002000187.html
子育て経験のあるLGBT当事者125名が子育て調査に回答(CNET Japan)
https://japan.cnet.com/release/30412787/

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