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HIV陽性者もドナーになれる世界初の精子バンクが誕生
ニュージーランドで世界初のHIV陽性ドナーによる精子バンクが設立されました。未だに払拭されないHIV陽性者への偏見や無知と闘うことを目的に、U=Uのメッセージを伝えるべく、立ち上げられたものだそうです。
世界エイズデーを数日後にひかえた11月27日、ニュージーランドの日刊紙「ニュージーランド・ヘラルド」が、HIVへのスティグマを軽減することを目的に、世界初のHIV陽性ドナーによる精子バンクがニュージーランドに登場したという記事を発表しました。「ニュージーランド・エイズ基金」「ポジティブ・ウーマン・インク」「ボディ・ポジティブ」という3つの機関が共同で設立したもので、精子バンクの名前は、「スパーム・ポジティブ」。すでに3人のドナーが登録しているそうです。3人はいずれもHIV陽性ですが、彼らは「HIVが常に検出されない状態である。つまり、ウイルスが感染することはない」のです。
「ボディ・ポジティブ」のマーク・フィッシャー氏は、「私たちはHIV陽性者が社会から押し付けられているスティグマをなくしたいだけでなく、彼らに、命を生み出し、家系を存続させるチャンスも与えたいのです」と語ります。
ドナーのひとり、ダミアン・ルール=ニールは、いまから20年近く前にHIV陽性と診断されましたが、治療を受け始めてすぐに、ウイルスが検出されない状態であると認められました。20年近く検出限界以下の状態を保っていますが、それでも、職場で、彼がHIV陽性者であることが発覚すると、いじめに合い、退職に追い込まれるという体験をしているそうです。彼は、「HIVに感染していても子をもうけた友人はたくさんいます。HIVに感染していると診断されたからといって人生が終わったわけではないうことをみんなに知ってほしいんです」と語りました。
ニュージーランドの感染症専門医でオークランド大学教授のマーク・トーマスは、「HIVの治癒法はまだないが、適切な治療を受けているHIV陽性者は、ウイルス量を検出限界以下の状態にすることができる。検出限界以下の場合、コンドームなしのセックスをしても、パートナーにHIVを感染させることはないし、出産をしても子どもにHIVを感染させることはない」と述べています。
ニュージーランドは、2003年に世界で初めて、国としてセックスワークの非犯罪化を達成しました(合法化と非犯罪化の違いについてはこちらをご覧ください)。2013年にはアジア太平洋地域で初めて同性婚を承認しました(その際に国会で行われた議員さんのスピーチがたいへん素晴らしいと、世界中で賞賛されました)。今年8月には、国会議長がゲイの議員の赤ちゃんを抱っこしてミルクを与える姿が話題になりました。
このように、ニュージーランドは様々な方面で性解放が進んでいる(ジェンダーやセクシュアリティの自由や平等が達成されている)先進的な国であると言えますが、今回またひとつ、世界に先駆けて素晴らしい一歩を踏み出しました。
参考記事:
「HIV陽性」でもドナーになれる世界初の精子バンクが伝えたかったこと(クーリエ)
https://courrier.jp/news/archives/183103/
世界初、HIV陽性者の精子を提供する精子バンク誕生 日本のHIV嫌悪「青酸カリを飲んで死んでほしい」(Yahoo!)
https://news.yahoo.co.jp/byline/iizukamakiko/20191201-00153193/