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「第三の性」の方が『VOGUE』の表紙を飾りました
ファッション誌『VOGUE』のメキシコ版とイギリス版で、発売中の12月号の表紙にメキシコのオアハカ州の先住民のムシェ(伝統的な「第三の性」の人)が起用されました。120年の歴史を持つ『VOGUE』誌でこのような人が表紙に選ばれるのは初めてのことです。
「ムシェ(muxe)」とは(弊社の後藤の研修を受けた方は憶えていらっしゃるのではないかと思いますが)、オアハカ州の先住民・サポテカ族の社会で伝統的に認知されている女装した男性のことです。性別適合手術を受けてトランスする人もいれば、女装するだけの人もいれば、ふだんは男性の格好で、お祭りの時などにドラァグクイーンのように女装するゲイの人もいます。男性を好きになる人もいれば女性を好きになる人もいます。「ムシェ」は、男装する女性の「マリマチャ」とともに、男でも女でもない「第三の性」、男女両方の神を宿す祝福された存在としてサポテカ社会で大切にされています。
(以前、歌川たいじさんが取材していましたが)オアハカ州のフチタンという街が、特にムシェが多いことで知られていて(人口約16万人のうち、約3000人)、ムシェが生まれると家族(特に母親や女性の親族)に喜ばれるそうです。ムシェは選ばれた人であり、幸運の象徴でもあるのです。
この地方に伝わる話では、ムシェは、フチタンの守護聖人、サンビシエンテ・フェレールの聖なる散歩中に、彼の破れたポケットからこぼれ落ちてきたと信じられているんだそうです。
毎年11月にフチタンで行われる「VELA」というお祭りは、サンビシエンテを讃えるお祭りで、ムシェたちが大勢、華やかな衣装を身にまとって登場し、街中をパレードしたり、夜に行われるパーティでは、その年の「クイーン」を選ぶ戴冠式なども行われます。ゲイプライドというよりも、住民たちが楽しむ町のお祭りです。
(『VICE』がムシェの姿を追った番組をYoutubeで配信しています。とても素敵なので、ぜひご覧ください)
ムシェは、ネイティブ・アメリカンの社会で広く見られる第三の性「ベルダーシュ」の一部であるとも見られています。
南アジアに広く見られる「ヒジュラー」や、タイの「カトゥーイ」など、第三の性の人たちはずっと昔から世界中に存在し、社会で認知されてきました。
今回、『VOGUE』誌の表紙を飾ったのは、エストレヤ・バスケスというムシェの方です。
色とりどりの花模様が散りばめられた伝統衣装「ウィピル」をまとい、右手には鮮やかなピンク色の扇子を持っています。
「みんな表紙を見てくれて、祝ってくれています」とエストレヤは語っています。
「今の気持ちを理解するのは難しいです。泣きそうになりました」
メキシコ版『VOGUE』のインスタグラムアカウントには、「素晴らしい表紙を世界に届けてくれてありがとう!」という感謝のメッセージが届きました。メキシコの「真の多様性」を表紙が体現してくれている、と拍手を贈る人もいます。
「第三の性」を持つ人物がVOGUEの表紙に 120年の歴史で初(BuzzFeed)
https://www.buzzfeed.com/jp/jamedjackson/vogue-will-feature-its-first-third-gender-person-on-its-1