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ロバート・キャンベル東京大名誉教授がカミングアウト、衆院議員によるLGBT差別発言への批判として

 杉田水脈衆院議員の「生産性がないLGBTに支援は必要ない」発言に追い討ちをかけるように、同じ自民党の谷川とむ衆院議員が「(同性愛は)趣味みたいなもの」などと発言し、物議を醸していたなか、8月12日、日本文学研究者で東京大名誉教授のロバート・キャンベル氏が自身のblogに「「ここにいるよ」と言えない社会」という記事を掲載し、「性的指向や性自認のことを『趣味みたいなもの』と言うのを聞いて笑ってしまった」「同性愛者、両性愛者、トランスジェンダーの人々をひっくるめて『生産性がない』ので『支援』に値しないという別の議員が発した言葉も、お粗末すぎて、反論する気持ちも起きません」「私自身、20年近く同性である一人のパートナーと日々を共にして来た経験から言うと、この国で、性的指向のために身に危険を感じたことは一度もありません。数年前、重い病気で入院した時も、窓口で状況を説明すると事務員から看護師、主治医にいたるまで淡々と治療方法や予後のことをパートナーにも伝え、終始、自然体で接してくれました。それは今でも、感謝にたえないことです」「積極的に排除はしないが『触れてほしくない』が日本の常識で『美風』であるなら、改めるべき時期に来ていると私は信じます」「アンケートにLGBTが『周囲にいない』と答える日本人が多いのは、存在しない、ということではなく、安心して『いるよ』と言えない社会の仕組みに原因があります。ふつうに、『ここにいる』ことが言える社会になってほしいです」と綴りました。

 ロバート・キャンベル氏は「僕の立場から、最近政治家が行なっているLGBT「趣味」「支援不要」発言とその背景について短文を書きました。粗末な発言よりそれが雲が湧くごとく生まれ得る日本社会の仕組みについて議論する、ことが重要だと考えています」としてTwitterでもこのblog記事を紹介(いいねが16800件を超えています)、上川あや世田谷区議が「冷静な筆致と確かな知性、人間らしい温もりと、今、自分が何をなすべきか、確固たる信念が感じられますね」と賞賛のコメント付きでリツイートするなどして広まりました。

 14日には、共同通信の取材に応じ、あらためてゲイであることを明らかにしたうえで「政治家がこういうことを言うことに幻滅し、危惧も感じる」「(性的指向は)自分の中に通底する一つの芯のようなものだ」「大きな誤解が波及していくと感じ(同性愛者である)自分の立場から批評することが重要だと思った」と語ったそうです。

 ロバート・キャンベル氏は、1957年、ニューヨーク生まれのアイルランド系アメリカ人。ハーバード大学東アジア言語文化学修士課程修了後、1985年、九州大学に研究生として留学するために来日し、1990年、九州大学文学部講師となり、1995年には国文学研究資料館助教授、東京大学総合文化研究科助教授に就任し、2008年には同教授に昇格、2017年から国文学研究資料館館長(専任)を務めています。また、日本テレビ系情報番組「スッキリ」の火曜コメンテーターを務めるほか、「あさナビ」(テレビ朝日)、「あさイチ」(NHK総合)、「Jブンガク」(NHK教育)などにも出演しています。

 国文学の分野での権威であるだけでなく、お茶の間でも顔が知られた存在であるロバート・キャンベル氏のような方が、こうしてカミングアウトを果たし、国会議員による差別発言がまかり通ってしまう状況に一石を投じてくれたこと、たいへん心強く、勇気づけられます。blog記事も本当に素晴らしいです。氏が語るように、安心して『ここにいるよ』と言える社会になるために、「粗末な発言よりも、それが雲が湧くごとく生まれ得る日本社会の仕組みについて議論すること」が重要なのだと考えさせられます。




参考記事:
キャンベルさん、同性愛公表(共同通信)
ロバート・キャンベルさんが同性愛を公表 LGBTめぐる発言の自民議員批判 性的指向は自分の「芯」(産経新聞)
ロバート・キャンベル氏、同性愛公表 LGBTめぐる議員の発言に「お粗末」(modelpress)


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