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一橋大アウティング事件の裁判で同級生と遺族が和解、大学とは訴訟が続きます
6月25日、一橋大法科大学院のゲイの学生・Aさん(当時25歳)が、同級生からアウティング※された後、2015年8月に校舎から転落死した「一橋大アウティング事件」で、遺族と同級生との間で和解が成立していたことが明らかになりました(和解は1月15日付だそうです)
※アウティング:本人の意に反して性的指向や性自認(がマイノリティであること)を暴露する行為のこと。今年1月には東京都国立市で「アウティングの禁止」を盛り込んだ条例が制定されています。
Aさんが生前、アウティングされて大学側に相談した際、同級生に求めたのは「謝罪」だけでした。
遺族の代理人弁護士である南和行弁護士は「ご家族の悲しみや苦しみが尽きることはありませんが、裁判として一定の納得をすることができたので、ご家族はアウティングをした当事者との和解を決断しました」と述べています。口外禁止条項があるため、具体的な内容は明らかにできないそうです。
2016年、遺族が同級生と一橋大を相手どり、訴訟が起こされ、今回、この同級生とは和解が成立しましたが、一橋大との間では和解が成立せず、裁判が続きます。遺族は、男子学生が大学のハラスメント相談室などに相談していたのに、適切な対応を取らなかったとして、大学側に安全配慮義務違反などがあったと主張しています。
次は7月25日に証人尋問が行われます。証人尋問当日は、まず一橋大学側の証人として法科大学院の教授、ハラスメント相談室長、保健センター所属医師の尋問があり、そのあと原告側の証人としてAくんの妹さん、原告であるご両親それぞれの尋問となります。
南弁護士は、大学側との訴訟については、「アウティングの違法性やハラスメント相談窓口の対応のあり方などについて、引き続き今後の指標となりうる裁判だ」と話しています。
なお、Aさんの支援者らは7月16日(月祝)午後1時半から明治大学で報告集会を開くそうです(詳しくはこちら)
一橋大学の相談室は、ゲイであるAさんに対し、驚くべきことに、性同一性障害のクリニックの受診を勧めたそうです(詳しくはこちら)。なんたる無理解…。適切な対応ができていたとは到底思えません。
明治大学の鈴木賢教授は「一橋大学は事件をもみ消し、事件から何らの教訓も引き出さないでスルーしようとしていました。裁判になった後も、亡くなった本人の責任だとしています。一橋大学はこの事件から教訓を引き出せていませんし、まだ責任を死者に押し付けようとしています」と批判しています。
裁判では、アウティングのことだけでなく、こうした点がきちんと問題にされることが期待されます。企業だけでなく大学も、LGBTの支援ができる体制づくりが求められていますし、この裁判がそういうきっかけになることで、Aさんの死も報われるのではないでしょうか。
参考記事:
ゲイだとバラされ転落死「一橋大アウティング事件」の裁判で、同級生と遺族が和解(ハフィントンポスト)
一橋大アウティング裁判、遺族が「同性愛」暴露の同級生と和解…大学とは訴訟続く(弁護士ドットコムニュース)