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40年以上連れ添ったパートナーの火葬に立ち会えず、共同経営の会社も親族に奪われるという不条理に対し、ゲイ男性が裁判を起こしました
4月26日、40年以上共に暮らしてきた同性パートナーの急逝後、共に築いたはずの財産を相続できず、火葬に立ち会う機会も奪われたとして、大阪府の男性(69歳)が提訴しました。
訴状などによると、男性は1971年から、8歳上のパートナーと同居しており、お二人は男性が実質経営する事務所の収入で生活し、パートナーの方が代表に就いていました。パートナーの方は前立腺がんなどで度々入院し、男性は毎日見舞いに訪れていました。実質的には男性のほうが働いて生計を立てていた状態です。死別後に互いに財産を残せるよう養子縁組する約束をしていましたが、手続き前の2016年3月にパートナーの方が心臓発作で急死しました。
パートナーの親族の女性(妹)は、同居する二人の関係を理解していたように見えましたが、死亡後に態度が一変し、葬儀で家族席に座ることや火葬への立ち会いを拒否しました。夫婦のように長年連れ添ったことに対しても「何の意味もない」と一蹴、親族女性の代理人弁護士は「あなたには何の権利もない」と言い放ちました。そして、パートナー名義の通帳を持ち出したり、廃業通知を勝手に取引先に出したりしたため、事務所が継続できなくなり、多大な精神的苦痛を受けました。男性は、パートナーの親族女性に対して慰謝料700万円の支払いとパートナーが生前に約束した財産の引き渡しも求め、大阪地裁に訴えを起こしました。
男性は、幸せだったパートナーとの生活の中では法律上保護されない問題に気づきませんでしたが、配偶者として認められない無力感に「同性婚の制度は当然つくられるべきだ」と感じました。会見では「同性というだけで、差別は歴然と存在している。人間として同等の権利が与えられるべきだ」と語りました。
死別に伴う財産の相続は同性カップルだけではなく、男女の事実婚や内縁関係でも認められておらず、最高裁判決も否定しています。しかし、男性の代理人を務める南和行弁護士は、今回の対応を「法律上のハードル以前に、同性愛者への差別があるのではないか」と疑問視しています。
「同性婚の制度があればパートナーとしての権利が保証されるだけではなく、不合理な差別の解消にもつながる」
「同性カップルという理由で法的に守られないのは納得がいかない。社会での偏見が早くなくなってほしい」
2015年以降、東京都渋谷区・世田谷区をはじめ、札幌、福岡、那覇市などで同性カップルを婚姻と同等と認める制度が始まりました。しかし、制度導入を呼びかけてきた明治大法学部の鈴木賢教授(比較法)によると、公正証書や遺言で死後の財産の取扱いやパートナーとの関係性について本人の意思を示しても、葬儀で喪主になれないなど、親族の反対でその通りにならない場合もあるといいます。鈴木教授は「根本的な問題は法的な枠組みがないことだ。男女の内縁に近いような形で法的な保護に値すると今回の裁判で認められれば、波及効果は大きい」と述べました。
こうした悲劇は、今に始まったことではなく、これまでにも何度も繰り返されてきました。ただ、世間の差別や偏見の目が怖くて訴えることができなかったり、泣き寝入りを余儀なくされてきただけです。
パートナーが同性であるというだけで、なぜこのような不条理に直面しなければいけないのでしょうか。
一日も早く、このような不平等(差別)が解消されるようになることを願ってやみません。
参考記事:
同性カップル“火葬立ち会い拒否”で提訴(TBS)
同性カップル“火葬立ち会い拒否”で提訴 43年間配偶者として同居(MBS)
「何の権利もない」に無力感…同性愛者の原告男性、法整備求める(産経新聞)
同性パートナーの妹を提訴「葬儀で親族席座れず」 大阪(朝日新聞)
訴訟 同性カップルも相続認めて パートナーが親族を提訴(毎日新聞)
同性カップル、遺産は誰に 40年同居の男性、親族を提訴(東京新聞/共同通信)