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中学の道徳の教科書にLGBTのことも載るようになりました
来年4月から使われる教科書などの文部科学省による検定が終わり、結果が公表されました。今回合格した中学校道徳の教科書では、8社中4社がLGBT(性的マイノリティ)を取り上げていることが明らかになりました。LGBTに関する記述は、高校の家庭科や公民などの教科書の一部に載ったことはありますが、義務教育では初めてだそうです。
学校図書は中学2年の教科書で、性のあり方には「からだの性」「こころの性」「好きになる性」の3つの要素がある、体と心の性が一致し、異性を好きになる大多数の人と、そうではない人がいるとしたうえで、性的マイノリティは人口の約5~8%いると言われている、と記しています。そのうえで、「偏見を認めてしまう雰囲気があったとしても、周囲に流されることなく、その偏見を解消していこうとする心の強さをもつことが大切です」としています。
同社の担当者は、性的マイノリティを取り上げた狙いについて、「性は、多様性を考えるうえで大事なことの一つ。中学生は多感な時期で、性がいじめにつながる可能性もある。事実をしっかりと伝える必要がある」と話す。支援団体などにも話を聞いたうえで、教材化したそうです。
日本教科書も中学2年の教科書で、心と体の性が一致しない性同一性障害を取り上げました。男性の体で生まれ、女性として生きたい生徒が、中学生になって自分の低くて太い声に堪えられなくなり、教員に本当の思いを伝えるという物語を掲載しています。性同一性障害であることを公表した歌手・中村中(あたる)さんの「友達の詩」の歌詞を、「届けたい言葉」として紹介しています。
監修した金沢工業大の白木みどり教授(道徳教育)は、「性的マイノリティを異質なものと見るのではなく、人間の権利や個性として子どもたちが理解し、ともに生きていけるようになることを願って教材にした」と語っています。
このほか、日本文教出版が中学2年と3年で、東京書籍も中学2年の教科書で性的マイノリティについて取り上げています。
埼玉大の渡辺大輔准教授(教育学)は、「授業では、LGBTへの理解や配慮というよりも、私たちの性がどれだけ多様かを知り、どうすればみんなが安心して生活できるかを考える機会にすることが大切。『特別な人』のように扱えば、教室にいるであろう当事者も困惑する。教員を対象にした研修を充実させることが必要だ」と述べています。
中学の教科書にLGBTが登場することを伝えた「ニュースZERO」では、「すべての人は一人の人間として尊重される権利があるというのは、憲法に書かれた最も基本的なことの一つです」とコメントされていました。
昨年の学習指導要領改訂に際しては、保健体育の教科書の記述が「思春期になると異性に関心を抱くようになる」という同性愛者や無性愛者のことを蔑ろにするものになっていることに対し、多様な性についての記載を求める運動が行われました。しかし、文部科学省は「現段階で性的少数者を扱うのは、保護者や国民の理解、教員の適切な指導などを考慮すると難しい」として反映を見送っていました。
今回、中学の道徳の教科書(評価がつく「教科」に格上げされます)の半数がLGBTに触れている、単純に半数かどうかはわかりませんが、多くの中学生が性の多様性のことを学ぶ機会ができたことは、大きな一歩と言えます。
参考記事:
中学・道徳の教科書に「LGBT」も(日テレNEWS24)
「君の名は。」「LGBT」が教科書に 検定結果公表(テレビ朝日)
「性的マイノリティ」道徳教科書で初の掲載 8社中4社で(朝日新聞)