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ホテルが同性カップルの宿泊を拒否することがないよう、厚労省が全国の自治体に通達を発しました
厚生労働省は1月31日付で「旅館業における衛生等管理要領」を改正し、「性的指向、性自認等を理由に宿泊を拒否することなく、適切に配慮すること」と明記しました。同性カップルの宿泊を拒否することは旅館業法違反にあたりますが、ラブホテルなどで宿泊を断られることが多く、自治体の改善指導もなかなか進まないなか、厚労省が自治体に対して周知を図るものです。
「旅館業における衛生等管理要領」は、旅館業における国から自治体への通達(指導要領)であり、旅館業法には書かれていない旅館・ホテルの構造・設備等に関する細かい基準を定めており、自治体がこれをもとに許可/不許可を判断することになっています。
改訂版「旅館業における衛生等管理要領」を見ると、「IV 宿泊拒否の制限」の項に、「3 宿泊者の性的指向、性自認等を理由に宿泊を拒否(宿泊施設におけるダブルベッドの予約制限を含む。)することなく、適切に配慮すること。」という文言が追加されています。
都道府県などに通知済みで、6月15日から施行されます。
旅館業法では、旅館・ホテルの営業者は一定の場合を除いて「宿泊を拒んではならない」と規定されています。一定の場合とは、暴力団関係者や賭博を行う者など「違法行為または風紀を乱す行為をするおそれがあると認められる」場合で、そこにLGBTは含まれていません。従って、同性カップルの宿泊を拒否することが旅館業法に違反するのは明らかです。
しかし、現実には、同性カップルの宿泊を拒否するケースが多々ありました。
2006年、大阪でダブルルームに男性2人で宿泊するのを断ったホテルに対して、大阪市の保健所が改善を指導したという出来事がありました。
2015年には、豊島区議会で、石川大我区議が、区内のダブルルームのある宿泊施設143ヶ所のうち同性どうしの宿泊を拒否する施設が30ヶ所あるとして、法律違反であり指導すべきだと訴え、区が指導することになりました。同年、杉並区でも2施設で同性同士の宿泊を拒否していたことが明らかになり、区が指導しています。
2016年には、ゲイカップルの宿泊を断るという違法行為に対し、大阪府の池田保健所がラブホテルに対して行政指導を行いました。
2017年には、ゲイカップルが豊島区のラブホテルで利用を拒否されたと訴え、区が事業者に対して行政指導していました。豊島区は2015年にも区内の宿泊施設を調査し、再発防止の指導もしていましたが、十分に浸透していなかったことが浮き彫りになりました。
また、英国ではゲイカップルの宿泊を拒否したホテルに対して裁判所が3600ポンド(約47万円)の賠償を命じたケースもあります。
弁護士ドットコムニュースの「「男性カップル」ラブホテル宿泊拒否、背景に「マイノリティの存在が迷惑」という発想」という記事で、原島有史弁護士は、「『男女でラブホテルに行ったときに同性カップルと廊下ですれ違ったら困惑する』『ほかの宿泊者に迷惑なら拒絶もやむを得ない』という意見は、マイノリティ(少数者)の存在自体が、ほかの(マジョリティ・多数派の)宿泊客にとって迷惑だという発想です。こうした発想は、ハンセン病元患者の宿泊拒否事件(2003年・熊本)と同じように、偏見と差別に基づく人権侵害といわざるをえません。現代のわが国では、理解を得にくいでしょう」と語っています。
今回の「旅館業における衛生等管理要領」の改訂について、豊島区議会でホテルの対応の改善を訴えてきた石川大我さんは「豊島区で地道に質問した成果。国が動きました!豊島区は宿泊拒否0を目指すべきとして、議会質問します」とコメントしています。
参考記事:
同性カップルの宿泊拒否ダメ 旅館業の管理要領に明記(朝日新聞)