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フジテレビ特番のゲイを侮辱するキャラに対して非難が殺到し、社長が謝罪。スポンサーから降りた企業も?
9月28日夜、フジテレビが、「とんねるずのみなさんのおかげでした 30周年記念スペシャル」の中で「保毛尾田保毛男」というゲイを侮蔑した(当時子どもだった多くの当事者を傷つけた)キャラクターを再び登場させたことに対し、非難や抗議が相次ぎました。
番組は、タモリさんやビートたけしさんら大御所芸能人と、みやぞんさんら人気芸人を迎えて豪華3本立ての特番を展開するもので、とんねるずの石橋貴明さん扮する「保毛尾田保毛男」は、たけしさん扮する「鬼瓦権造」、木梨憲武さん扮する「ノリ子」とともに登場し、以下のような会話が繰り広げられました。
鬼瓦権造「お前ら外国いったら死刑だぞ」「小学校の時よくこういう親父が公園で待ってた。みんなで石投げて逃げたことある」
ノリ子「ホモなんでしょ?」
保毛尾田保毛男「ホモじゃないの、あくまでも噂なの」
この放送を観た、あるいは放送されたことを知った当事者の方たちからは、こんな声が上がりました(あえて抜粋・編集します。鍵付きでつぶやいている方も多いので、実際はもっとたくさんあります)
「子どもの頃に、テレビでほもおだほもおを観ていて、ゲイはこんな風に扱われるんだと刷り込まれていたから、自分がゲイだと自覚した時、ものすごく怖かった」
「自分は髭が濃いほうだったから、ほもおだほもおって呼ばれてて、自分のセクシャリティに薄々気づいて葛藤してた時期でもあったので、本当に嫌だった」
「毎週のようにホモを嘲笑する気持ち悪いキャラが公共の電波でゴールデンな時間帯に出ていたのは地獄。トラウマがよみがえった」
「未だにこれが普通に放送されること、あれを観て笑う人がいることに悲しくなった」
「中には「騒ぎ過ぎ」という声もある。そう声をあげる人に一つ聞きたい。もし自分が保毛尾田保毛男というあだ名で呼ばれたら、もし自分の子供が保毛尾田保毛男というあだ名で呼ばれたら、どんな気持ちで毎日を過ごさないといけないかってことを少しだけ想像してもらいたい」(「周りから保毛尾田保毛男と呼ばれた子ども」)
ハフィントンポストの記事 「「保毛尾田保毛男」という負の遺産が2017年に復活してしまった」で、オープンリーゲイの大学生・松岡宗嗣さんは、「私自身、中学高校時代、自分のセクシュアリティは人とは違う気持ち悪いもので、「笑いにする」か「隠す」しか方法はないと思い込んでいた。それはメディアや社会で同性愛者がそう語られていたからだ」と語っています。
Yahoo!の「保毛尾田保毛男を放送するフジテレビの無神経、広がる視聴者の嫌悪感」という記事では、こう述べられています。
「楽しくなければテレビじゃない、といっても楽しむ人がいるならば、ひとを傷つけて良いわけじゃない。
わざわざ、いま、あえてこの内容を流す必要はなかった。
制作スタッフに、ちょっと視聴者やLGBTの当事者、社会的トレンドに思いが寄せられれば。そして、最終的に放送にGOをした、意思決定者に強い違和感を感じました」
いち早く出たこの記事では、「すでに、CM提供スポンサーの中には降板を決めた会社もあるとか」とも書かれていました。
グッド・エイジング・エールズの柳沢正和さんのツイートによると、スポンサーを降りたのはJeep(LGBT支援で有名なアルファロメオ/フィアットグループ)だそうです(担当者レベルからで、最終的に会社と確認が取れているわけではないそうですが)
企業がこうしてテレビでの侮蔑表現に対してNO!を表明し、スポンサーを降りるという行動を示したことは、テレビ局のありかたに一石を投じ、自省を促すことにつながるため、社会的に大きな意義があると言えます。
それから、LGBT団体や個人、企業の方などが連名で、「差別や偏見を助長する」としてフジテレビに抗議文を送ったことも明らかになりました(抗議文のPDFはこちら)
BPO(放送倫理・番組向上機構)に抗議を行った方もいらっしゃいます。「日本民間放送連盟 放送基準」には、「性的少数者を取り上げる場合は、その人権に十分配慮する」と明記されており、今回の件はこの規定に抵触すると考えられます。
そして、フジテレビにも、電話などで様々な意見が寄せられたそうです。フジテレビの宮内正喜新社長は本日、東京・台場の同局で定例会見を行い、「これは30周年スペシャルで、30年間で作り出してきたいろいろなキャラクターで展開をしたわけですが、もしその時代が違っていて、不快な面をお持ちになった方がいたことは大変遺憾なこと。謝罪をしないといけない」と陳謝しました。
フジテレビは「ホウドウキョク」でLGBTをサポートしてくれて、今年5月にはフジテレビ社屋をレインボーカラーにライトアップするという素敵なこともやってくれたのに…と残念がる声もたくさんありました。
wezzyの記事「とんねるず“保毛尾田保毛男”が深刻な差別を孕んでいると気付かないフジテレビの愚行」では、こう述べられています。
「レインボーカラーを掲げることは簡単にできる。表面だけなぞったフレンドリーにはなんの意味もない。掲げるだけでなにもしないならまだましなのかもしれない。掲げているくせに、差別を助長するようなことをしているからたちが悪い」
「LGBTという言葉だけがいくら広まっても、メディアはまったく変わっていないのが現状だ。しかし今回はフジテレビに対して要望書を提出する動きもみられている。ここから少しずつでも変えていかなければいけない」
フジテレビの社内にも阿部知代さんのようなアライの方もいらっしゃいます。しかし、今回の番組の制作にかかわった方々は、保毛尾田保毛男というキャラの罪深さ、これまでどれだけゲイを侮辱し、傷つけ、スティグマ(社会的不名誉、汚名、烙印)を植え付けてきたか、学校でこれを真似する子どもたちが増えることで、同性が好きかもしれないと感じている子どもたちにどんな悪影響が及ぶか、といったことに考えが及ばなかったようです。メディア表現にかかわる方は、責任ある大人として、社会的マイノリティ(周縁化されやすく、肩身の狭い思いをしがちな属性の人々)への侮蔑表現に対して敏感であるべきではないでしょうか。
フジテレビの方はこれを機にぜひ、社内でLGBT研修などの施策を進め、フレンドリー企業として生まれ変わってほしい、そう願っている方がたくさんいらっしゃるはずです。
参考記事:
保毛尾田保毛男を放送するフジテレビの無神経、広がる視聴者の嫌悪感(Yahoo!ニュース)
「保毛尾田保毛男」という負の遺産が2017年に復活してしまった(ハフィントンポスト)
フジテレビ番組の同性愛キャラクター LGBT団体が抗議(NHK)
フジ社長 「保毛尾田保毛男」批判に陳謝「大変遺憾 謝罪をしないといけない」(Livedoorニュース)