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MtFトランスジェンダーの保坂いづみさんが根室市議に当選
9月10日に投開票が行われた北海道根室市の市議会議員選挙で、MtFトランスジェンダーであることを公表している保坂いづみさんが初当選を果たしました(定数18に対して20人が立候補。保坂さんは5番目に多い得票数でした)
保坂さんは戸籍上の性別は男性ですが、女性として暮らしており、今回の選挙でも性同一性障害(GID)であることを公表して立候補していました。
なお、根室市選挙管理委員会は、今回の市議選から立候補者を男女で区別しなくなったそうです。印鑑登録証明書から性別欄を削除するよう求めた保坂氏の請願を市議会が昨年9月に採択したのを受け、立候補の届け出書からも性別欄が削除されていたものです。
10日夜、当選の報を受けた保坂さんは、自身の法律事務所で支持者から祝福されながら「実績もなく親戚もいないのにこんなに票をいただいた。本当にうれしい」と涙ぐみながら喜びを語りました。
そして「何かしてくれるとの期待から投票してくれたと思う。応えたい」として、市民の話をじっくり聞き、要望に応えていく決意を見せました。
北海道新聞 釧路報道部によると、保坂いづみさんは神戸出身で、男性として生まれましたが、幼い頃から自身の性別に違和感を抱き、苦しんでいました。神戸大学教育学部を卒業後、30歳過ぎまでフリーターとして働きましたが「手に職を付けたい」と一念発起し、通信教育で法律を勉強しました。周囲にGIDであることは明かしていませんでしたが、6回目の挑戦となった弁護士の口述試験で「24時間女性として生きたい」と覚悟を決め、女性の服装を身にまとって臨み、面接官に思いが届き、合格しました。「困っている人に寄り添い、声を聞く。ようやく得られた資格を人のために役立てたいと強く思いました」
2013年から岡山県津山市の法律事務所に勤務し、民事や刑事裁判の経験を積みました。岡山弁護士会が開催したLGBTの講演会などにも出演しました。独立しようと新天地を探すなか、大学生の時に自転車で巡った根室を思い出し、2015年6月に根室を訪れ、居酒屋で食べたトキシラズやカニ、日本酒に心を奪われ、事務所を構えることを決めたといいます。「根室に来ることに不安はありませんでした。人が住む場所には、いさかいや困りごとがある。物件さえあればどうにかなると思いました」
転機は昨年9月に訪れました。市の印鑑登録証明書の性別欄の削除を求める請願を市議会に提出し、全会一致で採択されました。議会を傍聴し議員と接するなかで「市長提案を受け入れるだけの議会の姿に疑問を抱いた」といいます。「議員の一番の仕事は市民の要望を反映した条例案を議員提案することではないか」
保坂さんは市議への思いは強くし、告示2日前の今月1日、無所属での出馬を表明。135ヵ所の掲示板に独りでポスターを貼り、拡声器を肩から下げて辻立ちを続けたところ、「議会に新しい風を入れてくれ」などと徐々に声を掛けられるようになったそうです。
上川あやさんによると、国内でトランスジェンダーであることをオープンにして選挙に出馬したのは6人目(MtFに限れば4人目)、当選したのは3人目(同2人目)とのことです。
また、国内のオープンリーなLGBTの議員は合計で6人になりました(世田谷区議の上川あやさん、文京区議の前田邦博さん、中野区議の石坂わたるさん、豊島区議の石川大我さん、入間市議の細田智也さん、そして根室市議の保坂いづみさん)
今年7月、LGBT自治体議連が発足し、7月末に開催されたLGBT自治体議員連盟2017夏の研修会も大盛況だったそうですが、今後、ますます議連の活動が活発になったり、いろんな地方で議員を目指すLGBTの方が増えたり、動きにはずみがつくのではないでしょうか。
参考記事:
性同一性障害公表の弁護士・保坂さん、根室市議に初当選(北海道新聞)