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MtFトランスジェンダーへの猥褻行為に対して罰金刑の判決が言い渡されました

 9月6日、MtFトランスジェンダーの方(仮にTさんと呼びます)の胸を触り、兵庫県迷惑防止条例違反の罪に問われていた神戸市須磨区の男性に対する判決公判が神戸地裁であり、裁判官は罰金30万円を言い渡しました。
 
 判決によると、この男性は昨年3月13日午前1時ごろ、同区の飲食店で、Tさん(性同一性障害の診断を受け、ホルモン治療を行っており、女性として暮らしていました)の胸を服の上から触りました。
 Tさんは昨年4月、須磨署に被害を相談。同署は男を書類送検し、神戸地検が昨年12月に兵庫県迷惑防止条例違反罪で在宅起訴しました。
 
 男性は公判で「男性の胸を触る理由も動機もない」などとして無罪を主張しました。また、弁護側は、Tさんが店内にいた知人にその場で被害を訴えていなかったことなどから、Tさんの供述が不合理であるなどと述べました。
 市原志都裁判官は判決で、「Tさんから『女性ホルモンの注射をして胸も膨らんでいる』と言われ、からかうような意味を込めて胸を触ることがありえる」と指摘し、Tさんが知人に被害を伝えなかったのは「GID(性同一性障害)の男性が胸を触られたことが犯罪に当たるのかどうかわからないなか、被害を訴えなかった心情は十分理解できる」と述べました。

 GID学会理事長の中塚幹也・岡山大大学院教授は「Tさんの心情面まで理解した判決。痴漢やわいせつ被害を訴えられないGIDの患者がいるという実情をとらえた点も評価できる」と語っています。
 
 関係者によると、戸籍上の性別と異なる性別で生活するトランスジェンダーを被害者として立件するのは珍しいそうです。

 これまでも、性別移行途中だったり戸籍上の性別変更が済んでいないトランス女性がこうしたハラスメントや性暴力に遭うケースがたくさんあったと考えられますが、おそらく、身体や戸籍が男性だからという理由で(当人は自身を女性だと強く感じているにもかかわらず)痴漢やセクハラに該当しないだろう、罪に問われないだろうという認識が(当事者も含めて)広く浸透していたのではないでしょうか。今回の判決は、こうした認識に対して明確にNOを突きつけるもので、トランスジェンダーを性犯罪から守る上で非常に重要な意義を持つものであると評価できます。
 
 なお、こちらの記事にまとめられているように、改正刑法が施行され(旧「強姦罪」が改正され)、被害者の性別にかかわりなく適用されることとなりました(これまでは女性しか想定されていませんでした)。強制わいせつ罪については以前から被害者の性別の限定はありません。また、職場内でのセクハラについても、被害者の性別・性的指向・性自認にかかわりなく適用されます。「体が女性でないから」といって泣き寝入りする必要はありません。もちろん、戸籍上の性別を男性に変更したFtMの方も、「戸籍上は男性だから」といって被害を訴え出ることをあきらめる必要はありません。Xジェンダーの方やGIDの診断を受けていない方なども同様です。
 
 

参考記事:
性同一性障害男性の胸触る 男に罰金30万円(神戸新聞)

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