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LGBTへの調査で、半数以上が学校でいじめを経験しており、7割超が差別的発言に触れていることがわかりました

 性的少数者(LGBT)を対象にした調査で、半数以上が学校生活でいじめを経験し、うち7割近くが「先生はいじめの解決に役立たなかった」と思っていることが明らかになりました。学校現場に正しい知識や情報が広がらず、教師も対処しきれていない状況が浮き彫りとなったかたちです。

 この調査はライフネット生命保険の委託により、宝塚大看護学部の日高庸晴教授(社会疫学)が実施したもので、インターネットを通じて全国の10歳~94歳の性的少数者から回答を得ました。回答者の総数は約1万5000人に上り、性的少数者を対象としたアンケートとしては、これまでで最高規模です。

 調査結果によると、「職場や学校で性的少数者について差別的発言を聞いたことがある」という人は72%に上りました。10代が77%、20代が75%、30代が70%、40代が69%、50代以上が64%で、若い世代ほど高い率になっていました。これについて日高氏は「若い世代ほど差別的発言に触れているのは、情報量の増加に伴い、偏見やからかいも増えているからではないか」とコメントしています。若い世代ほど差別に敏感だからではないか、という意見もネット上では見られました。
 それから、回答者の58%が小中高校時代にいじめられた経験が「ある」と回答、21%が不登校を経験していました。いじめられた経験がある人に「先生はいじめの解決に役立ったか」と尋ねると、「そう思う」は13%で、67%が「そう思わない」と回答していました。
 また、学校生活で同性愛について「一切習っていない」とした人は68%に上りました。「『異常』なものとして習った」人は5%、「否定的な情報を得た」とした人が17%、「肯定的な情報を得た」とした人が7%でした。
 それから、「自傷行為の経験がある」と回答した人は全体の10%、「気分の落ち込みや不眠などで心理カウンセリングや精神科などを利用した経験がある」と答えた人が32%に上り、生きづらさを抱える様子が窺えました。

 質問項目の中には、親へのカミングアウトのこともありました。「親にカミングアウトしている」という人は22%にとどまりました。日高氏の過去の調査と比較可能なゲイ・バイセクシュアル男性の場合、親にカミングアウトしている10代の割合が、1999年の9%→2005年の11%→2014年の19%と、この20年近くで2倍以上になっていることが明らかになりました。しかし、これには地域差もあり、カミングアウト率が最も高いのは関東(山梨県含む)で24%、最も低いのは九州・沖縄と北信越で17%でした。都市部は高い傾向を見せました。

 日高氏は「いじめ被害者や不登校の児童生徒の中には、より高い割合で性的少数者がいるはず。学校現場は困難を抱えた子どもたちを守るべく行動してほしい」「都市部や大企業では取り組みが始まったが、地方や中小企業などにも理解の裾野を広げていく必要がある」と語っています。

 文部科学省は2015年、全国の教育委員会などに対して、性的少数者の児童・生徒へのきめ細かな対応を求める通知を出しています。
 それから、先月7日、国のいじめ防止対策協議会が、国の基本方針に性的少数者へのいじめを防止するため教職員の理解を促進するよう求める改定案を了承しました。パブリックコメント(意見公募)を実施したうえ、3月中に決定される見通しです。
 しかし、学校で性的少数者についての差別的発言が横行し、いじめがなくならず、先生もいじめの解決に役立たず、同性愛について否定的な情報が授業で伝えられている、こうした現状の根本には、義務教育の教科書に性的少数者についての記述が一切なく、「思春期になると、だれもが、遅かれ早かれ異性に惹かれる」という誤った(同性愛を無いものとした)記述になっていることが原因としてあるのではないかと指摘されています。昨秋、学習指導要領の改訂のタイミングに合わせてパブリックコメントが募集され、「教室にもきっと性的少数者がいます」「ぜひLGBTについて記載してほしい」といった声がたくさん寄せられたにもかかわらず、先月発表された改訂案では、性的少数者が教室にいることを想定した記述は一切なかったそうです。
 

参考記事:
<性的少数者>いじめ経験、過半数「先生は解決に役立たず」(毎日新聞)
性的少数者、生きづらさ鮮明 72%「差別発言聞いた」(朝日新聞)
「自尊心傷つけられるLGBTの子なくしたい」学習指導要領の案に多様な性の記載ゼロで呼びかけ(ハフィントンポスト)


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