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　12月11日、米国防総省は、トランスジェンダーの米軍入隊を来年1月1日から受け入れる方針を示しました。

　オバマ前政権は昨年、トランスジェンダーの入隊を禁止する規則を撤廃することを決めており、今年7月には施行される（トランスジェンダーを受け入れる）予定でしたが、7月末、トランプ大統領がトランスジェンダーの従軍を禁止する発言を行い、各方面から非難の声が上がりました。しかし、トランプ大統領は8月には国防総省などに対し、軍の活動への影響が十分に検証されるまでの間、入隊を禁止する措置を続けるよう指示しました。
　これに対し、人権団体や現役軍人らがトランスジェンダーへの差別だとして提訴し、ワシントンD.C.の連邦地裁は10月、大統領の入隊禁止指示を差し止める仮処分命令を下しました。そして、12月11日には、トランプ政権による不服の申し立てを退け、来年1月1日から入隊の手続き開始を行うよう命じる判決を下しました。

　連邦地裁のコリーン・コラー＝コテリー判事は、「法の下の平等を保障する合衆国憲法に反する可能性がある」「軍務の効率に関する合理的な懸念ではなく、トランスジェンダーの否認を表明したい感情に基づく大統領令だという原告の主張に強い根拠があった」と述べています。また、トランプ政権による、数万人の職員をトランスジェンダーの志願を処理するのに必要な医療基準に基づき訓練しなければならないため、1月1日という期日を達成するのは難しいとする不服の申し立てに対しては、「トランスジェンダーの米兵を受け入れる準備はオバマ前政権時から始まっている。当時の国防長官は準備開始を2016年6月30日に命じており、ほぼ1年半前だった」として、却下しました。

　国防総省は先週、連邦裁判所からトランスジェンダーの入隊禁止に関連する判断が出たことを受けて、受け入れに関する助言を行うための専門家パネルを設置していました。そして、声明で、裁判所の命令に従うとし、1月1日にトランスジェンダーの入隊志願者の手続きを開始すると明らかにしました。
　一方、ホワイトハウスのサンダース大統領報道官は「国防総省は、単に司法判断にしたがっているだけだ」「大統領の指示が実行されるよう、司法省が選択肢を検討している（上訴する）」と述べました。
　
　トランスジェンダーの従軍に関する新しい指針では、性別違和を感じたり性別適合手術を受けたりした人たちについて、軍側は不採用にすることができるが、自認する性別について18カ月間、安定して適応し、業務上支障がなかったり、精神的に問題がなかったりした場合には採用できるとしています。これには、条件が厳しすぎるとの批判もあります。
　国防総省の担当者は、「新しい医療基準は複雑で、トランスジェンダーの人たちを採用する場合は、熟練した医療従事者が判断することになるだろう」としています。

　性自認を公にした上で軍務に就くことを支持する人々は、今回の判決を歓迎しました。LGBTの社会的課題について研究や提言を行うパーム・センターのアーロン・ベルキン所長は「米軍がトランスジェンダーの志願者を受け入れるという発表は（中略）単純な現実を反映している。それは、国防総省の軍人と文官がトランスジェンダーの入隊に向け2年以上準備してきたということだ」と述べました。

　連邦地裁判事が述べている通り、トランプ大統領の入隊禁止発言（「多額の医療コストや混乱につながる」）には合理性がなく（国防省傘下のシンクタンクですら「米軍全体の医療費のわずか0.13％しか増えない」と批判）、トランスジェンダーを軍から排除するための口実（トランスフォビアによる差別）に過ぎなかったのでしょう。多くの国民がすぐにそのことを見抜き、公正や平等を求めて声を上げ（ゲイの退役軍人なども一緒に声をあげました）、司法も賢明な判断を下したのです。　
　米国では毎年何十人ものトランスジェンダーがヘイトクライム（憎悪犯罪）によって命を落としており、特に黒人のトランスジェンダーは厳しい状況に置かれています。しかし、先日の米地方選では8人のトランスジェンダーが州議会議員などに当選していて、その社会的地位の向上や権利擁護の前進の兆しを感じさせます。
　


参考記事：
米軍 トランスジェンダーの人たちの入隊容認へ（NHK）
米　一転してトランスジェンダー入隊認める（日テレ）
米軍　トランスジェンダー入隊容認へ　司法判断受け（毎日新聞）
トランスジェンダー、米軍への入隊容認へ　司法判断受け来年から（東京新聞）
トランスジェンダー入隊、1月に再開へ 裁判所が米政府の請求却下（AFP）
米国防総省、トランスジェンダーの軍入隊を1月から受け入れへ（ロイター）
トランスジェンダー入隊手続き、来年１月開始　米国防総省（CNN）
米連邦地裁、トランスジェンダーの入隊許可を命令（ウォール・ストリート・ジャーナル）
トランスジェンダーの入隊をアメリカ軍が認める　2018年1月1日から新制度導入へ（ハフィントンポスト）