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トルドー首相がカナダの過去の性的マイノリティ迫害を公式に謝罪、涙を拭う場面も
カナダのジャスティン・トルドー首相が11月28日、カナダ政府がかつて性的マイノリティを差別していたことを議会で謝罪しました。
カナダでは(他の欧米諸国と同様)1960年代まで同性愛が違法とされていたほか、冷戦中、たくさんのゲイやレズビアン、バイセクシュアルの人たちが公職(政府の職や軍隊など)を追放されました(数千人が影響を受けたとされています)。そうした人たちがソ連のスパイに利用されやすいと考えていたためです。政府、軍、連邦警察は、疑いをかけた同僚を職場の内外で見張り、プライベートな性行動について尋問を行うとともに、友人や知人を通報するよう強制していました。
トルドー首相は下院で、この「国家による組織的な抑圧と排斥」に対し、涙をぬぐいながら「政府や議会、カナダ人を代表して言います。私たちは誤っていました。謝ります。二度と繰り返しません」と謝罪しました。
かつての政府の行動を「魔女狩りそのものだ」と非難し、「この国がかつてしてきたことを恥と思い、悲しみと深い遺憾の意を込めて、私は今日ここに立って、こう申し上げる。私たちは間違っていた。謝ります。申し訳ない。私たち全員が申し訳ないと思っている」と語りました(10回以上もsorryと述べたそうです)
議場の与野党議員は総立ちとなり、数分間、大きな拍手を送りました。
首相はさらに、政府による同性婚差別や、同性愛をテーマにした芸術作品を「わいせつ」と禁止したことにも言及しました。
「自分たちは、現代のカナダを前向きで進歩的な国だと思っているが、過去を忘れることはできない」
カナダ軍が同性愛者への差別的扱いを中止したのは、冷戦終結後の1992年。元兵士が政府を訴えたのがきっかけでした。その4年後にはカナダ人権法が改正され、性的指向が保障の対象に含まれるようになりました。2017年には性自認が追加され、トランスジェンダーの人々も、刑法が定めるヘイトスピーチからの保護の対象に加えられることになりました。
カナダ政府は今回、被害者による集団提訴の和解金およびLGBTについての啓発活動の予算として、1億カナダドルを予算として拠出しました。
トルドー氏はさらに、LGBTへの蔑視や差別をなくすために政府として引き続き対応が必要だと述べ、ゲイ・バイセクシュアル男性を対象とした献血禁止の措置や、HIV陽性か陰性かを明らかにしない人への刑事罰などをやめる必要があると指摘しました。「私たちは全員、愛される価値がある。自分が何者か発見するのが6歳だろうと16歳だろうと60歳だろうと、全員に価値がある」
カナダの隣りのアメリカでは、トランプ大統領が、トランスジェンダーを軍から追放する発言をして多方面から非難を浴びたり、また、12月1日のHIV予防についての演説ではゲイのことに一言も触れ図、批判されたりもしていて、トルドー首相との違いが際立つ格好になっています。