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米地方選でLGBTの候補が多数当選(うち8名がトランスジェンダー)、全市議会議員がLGBTとなった市も
11月7日、全米で統一地方選(連邦と州以外の郡、市、町、村などの長と議員の選挙。大統領選と中間選挙の間の年に実施される)が実施され、52名のLGBT(うち8名がトランスジェンダー)の候補が当選を果たしました。
トランスジェンダー8名のなかで特に注目を集めたのが、共和党の現職を破ってヴァージニア州議会下院議員(小選挙区)に当選したトランス女性のダニカ・ローム(民主党)です。地元新聞のジャーナリストだった彼女は、各種の地域問題を公約に掲げていました。対立候補である現職議員は、ロームを女性と認めず「He」と呼び続け、アンチLGBTの姿勢を取り続けていました。33歳のロームは、この現職議員を破って初当選を果たし、アメリカ初のオープンリー・トランスジェンダーの議員となりました。
ヴァージニア州では彼女のほかにも、オープンリー・レズビアンのドーン・アダムス、オープンリー・ゲイのマーク・ルヴァインも州議会下院議員に当選しています。
ミネソタ州ミネアポリスの市議選では、アフリカ系トランス女性、アンドレア・ジェンキンスと、アフリカ系トランス男性、フィリペ・カニングハムが揃って当選し、大きな話題となりました。これによりミネアポリス市会議員13名のうち2名をトランスジェンダーが占めることとなりました。なお、ジェンキンスは有色人種でありトランスジェンダーであり女性であるという三重の社会的マイノリティ※1であり、彼女の当選はアメリカの歴史における重要な出来事、快挙と言われています。
※1 社会的マイノリティとは、実際の人数の多寡にかかわらず、社会において周縁化されている(片隅に追いやられている、不遇な扱いを受けている)ということです。女性や高齢者、子どもなども社会的マイノリティと言えます。
同じ市で複数のLGBTが当選という意味では、オハイオ州シンシナティもそうです。アフリカ系アメリカ人でオープンリー・レズビアンのタマヤ・デナードと、オープンリー・ゲイのクリス・シールバックが市議会議員に選ばれました。
注目すべきは、カリフォルニア州パームスプリングス市です。市議会議員にリサ・ミドルトンというトランス女性とオープンリー・バイセクシュアルのクリスティ・ホルスティージが当選し、市長のロバート・ムーン、市議会議員のジェフ・コース、J.R.ロバーツという3人のオープンリー・ゲイと合わせ、議会が100%LGBTという前代未聞の市が誕生したのです。
パームスプリングスはLAから東に180kmほどの位置にある砂漠の中のリゾート地ですが、実は米国有数のゲイ・リゾートとして多くの観光客を呼び込んでおり、ゲイのための観光サイトが設けられたり、プライドパレードなども開催されています。
それから、ワシントン州シアトルの市長選で、オープンリー・レズビアンで元米連邦検事のジェニー・ダーカンが当選しました(シアトルは、前市長のエド・マレーもオープンリー・ゲイでした)
ちなみにアメリカの大都市でLGBTが市長になったのは、テキサス州ヒューストンの市長をつとめたオープンリー・レズビアンのアニス・パーカーが初でした(2010年〜2016年)。現在、ユタ州ソルトレイクシティの市長をオープンリー・レズビアンのジャッキー・ビスカップスキーがつとめているのをはじめ、LGBTが市長になっている市が国内にいくつもあります。今回の地方選でも、マサチューセッツ州ホルヨークの市長選でオープンリー・ゲイのアレックス・モース(2011年に22歳の若さで初当選)が再選し、4期目をつとめることが決定しています。
VICTORY FUND(米国のLGBT候補者を支援するポータルサイト)によると、今回の地方選で州議会議員や市長、市議会議員、市の教育委員や市政運営委員などに当選したLGBTは52名に上ります。うち8名がトランスジェンダーの方で、「歴史的な快挙」と称されています。
今回の地方選では、性的マイノリティだけでなく、人種的、宗教的マイノリティの方も多数、当選していることがニュースになっています。
リサ・ミドルトンは「明らかに、今の政権は、民主党や進歩的な人々、思慮深い人々の政治運動を活発化させている」と語っています。
参考記事:
米国地方選:8人のトランスジェンダー候補が当選〜トランプ政権に戦いを挑む市井のリベラル(WEZZY)
Meet the Transgender Americans Who Won on Election Day(Human Rights Campaign)
Palm Springs elects an all-LGBTQ City Council, showing the power of gay politics(Los Angels Times)