NEWS
来年刊行の「広辞苑」第7版に「LGBT」の項目が追加されることになりました
岩波書店は10月24日、「広辞苑」第7版を来年1月12日に刊行すると発表。その中に「LGBT」などの言葉が追加されることが明らかになりました。
広辞苑の改定は10年ぶりで(10年前はLGBTという言葉がすでに使われていましたが、世間的にはまだそれほど認知されていなかったということでしょう)、新たに1万項目が追加され、収録項目は計25万になります。普通版は9,720円で、2分冊の机上版(15,120円)も発行。それぞれ来年6月30日までの割引価格も設定し、同日までに計20万部の販売を目指します。スマートフォン向けのデータ提供サービスも検討しているそうです。
岩波書店の岡本厚社長は「偽とかフェイクとか、事実でない言葉が飛び交う現代だからこそ、本物の、誠実な、確かな仕事に価値がある。苦境の続く出版界において、岩波書店の底力を示すことができた」と、また、新たに追加される「LGBT」などを例に「自分だけが苦しんでいると思っていることが、言葉を獲得することによって多くの人々と共通する問題であることが分かる。それが人を楽にし、自由にする」と語っています。
広辞苑といえば、以前は(広辞苑だけでなく他の辞書も同様でしたが)同性愛の項目で「異常性欲」という説明をしていましたが、1991年、動くゲイとレズビアンの会(アカー)の申し入れにより、第4版の改定の際に「同性を対象とする」という価値中立的な記述に変更されました。当時はインターネットなどはなく、辞書をはじめ書籍や新聞など紙メディアの記述は大きな意味を持っていました。90年代初期、恐々とゲイサークルに集まった若者たちは、まずはライフヒストリーを語り合うところから活動を始めましたが、そこで定番のように出たエピソードが「国語辞典を引いたら…」だったと、そんな思いで1991年5月、岩波書店の広辞苑の記述に対し、「同性愛を異常性欲とする根拠は何か」などの申し入れを行い、7月には編集部から「編者をまじえて検討した結果、問題ある記述との認識に達し、次回の刷りより改めたい」と返事があり、10月の第4版で現在のように記述が変更されたそうです(ヨミドクター「虹色百話~性的マイノリティーへの招待 第73話 辞典・事典の偏見記述を訂正していった時代」より)
なお、岩波書店といえば、『現地レポート 世界LGBT事情』、『ルポ 同性カップルの子どもたち』、『同性愛と異性愛』、『変えてゆく勇気 「性同一性障害」の私から』、『恋の相手は女の子』など、多くのLGBT関連書籍を刊行しているほか、『世界』2017年5月号では「〈LGBT〉ブームの光と影」と題した特集を掲載しています。
参考記事:
「広辞苑」 10年ぶりに大改訂(Yahoo!ニュース/FNN)
広辞苑10年ぶり改訂 【LGBT】【ブラック企業】【がっつり】…など1万項目(東京新聞)
「ブラック企業」「がっつり」も=広辞苑10年ぶり改訂(時事通信)