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セクハラ指針が改正され、LGBTに対する性的な言動もセクハラと明記されることになりました

 厚生労働省は5月27日、労働政策審議会の分科会を開き、職場での性的少数者(LGBTなど)への差別的な言動がセクハラに当たることを、男女雇用機会均等法に基づく事業主向けの「セクハラ指針」に明記することを決めました。LGBTへの偏見や差別をなくし、働きやすい環境をつくるのが狙いです。今夏に厚労省の審議会で指針の改正案をまとめ、来年1月から適用します。  

 現在の指針でも、LGBTに限らず性的な言動はセクハラの対象に含まれ、事業主には研修を通じて防止に努めたり、加害従業員が処分の対象となることを就業規則に定めたりする義務があります。しかし、明文化されていないため、差別的な発言をされたLGBTが事業主に相手にされず、泣き寝入りするケースがあるといいます。今回、解釈に曖昧さが生じないよう「被害者の性的指向または性自認にかかわらず対象となる」と明確化するものです。  

 これまでの指針がどうなっていたか、また、そもそもセクハラとはどういうことを指すのか、企業はセクハラにどう対処しなければならないのか、といったあたりを確認してみましょう。  

 2013年12月、男女雇用機会均等法の施行規則の改正が公布され、2014年7月に施行されました(現行法)。この中には「職場におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれるものであることを明示」と書かれています。それまでは、セクハラといえば男女間のものと思われがちでしたが、たとえば、女性上司が(たとえスキンシップのつもりであっても)女性の部下の胸を触ったり、男性間で性的なからかいや噂話をしたりするなど、同性間の言動も職場のセクハラに該当することが明記されたのです。  

 同時に、セクハラについての政府の会議(労働政策審議会雇用均等分科会)において、当時の厚労省の雇用均等政策課長が「性的マイノリティに対する(差別的な)言動もセクハラとみなす」と明言しています。  

 男女雇用機会均等法では、セクハラを「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」と定義しています。  

 セクハラは大きく分けて、2つのタイプに分けられます。
■対価型セクハラ
「労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けること」です。
 加害者が、自分の地位や権力を利用して性的な行為を強要するというのが最たるものですが、たとえば、いやがる部下を無理やり風俗に連れて行くというケースもこれに該当します。宴会の席で下ネタを強要したり、裸踊りをさせたり(従わないと職場でいじめるという暗黙の脅しがある)というのも男性間でありがちなセクハラです。男性間だけではなく、女性間でも、ホストクラブにしつこく誘ったり、胸を触ったり(いやがると職場にいづらくさせるという無言の圧力がある)ということが考えられます。
■環境型セクハラ
「労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること」です。  
 性的というのは必ずしも、セックスを想起させるという言動とは限りません。「あいつ、ホモなんだってよ」というような噂を流すのもこれに該当しますし、「まだ結婚しないの?」「まだ子どもできないの?」としつこく聞くこともそうです。

 男女雇用機会均等法では、事業主が職場におけるセクハラの内容およびセクハラがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発することが義務づけられています。また、セクハラを行った者(加害者)については厳正に対処する旨の方針および対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発することも義務づけられています(セクハラ防止の義務)  

 もしセクハラが起こってしまった際にも、相談に応じ(あらかじめ相談窓口を設け)、適切に対処することができるような体制を整備することが義務づけられています。その際、相談者(被害者)・行為者(加害者)のプライバシーが守られることも必要ですし、相談したことで不利益を被るような取り扱いも禁止されています。また、再発防止に向けた措置を講じること(労働者への周知・啓発)も義務づけられています。  

 今回の改正では、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、管理監督者または事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずること、なども追記されました。  

 つまり、すべての事業主は、会社の規模等にかかわらず、社内でのセクハラの防止につとめなければいけない、そして、実際にセクハラの被害があった場合、被害者の相談に乗る担当者や窓口を社内に設置しなければいけない、ということです。

参考: LGBTも対象と明記 厚労省、セクハラ指針に 2016.5.27 日本経済新聞電子版

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