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罰ゲームとして男性どうしのキスをさせたCMに批判が殺到、日本マクドナルドが謝罪

 日本マクドナルドは、12月5日から公式TwitterおよびYoutubeチャンネルで展開している「チキンマックナゲット」のPRキャンペーンの一環として、「罰ゲーム」として嫌がる男性の頬に男性がキスをする内容の動画を公開しました。これに対してLGBTやアライの人々から「男どうしのキスが罰ゲームという発想がひどい」「こういうホモフォビックなCMを平気で作り、チェックも通ってしまう日本の会社ってどうかと思う」「もうマクドナルドには行かない」といった批判の声が殺到しました(Twitterは「暴言や脅迫、差別的言動に対するTwitterのポリシー」において性的指向や性自認に基づく差別的発言を禁止しており、これに抵触するとの報告も多数上がった模様です)

 12月8日、日本マクドナルドはキャンペーン動画を削除すると発表。PR部の担当者は「お客様にご不快な思いをさせ、深くお詫び申し上げます」と謝罪しました。お客様サービス室に苦情が寄せられ、社内で検討した結果だそうです。

 すでに削除されているので見られませんが、動画は「正体不明のソースハンター」である怪盗ナゲッツ(お笑い芸人のダンディ坂野さんによく似た風貌)が「ナゲッツパーティ」でゲームを楽しむシーンから始まります。ゲームに負けたナゲッツは突如「罰ゲーム」を受けることになり、両脇を漫才コンビ「メイプル超合金」の安藤なつさんに羽交い締めにされる。そして、安藤さんの相方のカズレーザーさんがナゲッツの頬にキスをし、その写真が撮影されるというものだそうです。なお、カズレーザーさんは自身がバイセクシュアルであることをバラエティ番組などで話しています。動画の最後にはハッシュタグ「#ナゲッツゲーム」が表示され、キャンペーンでは視聴した人々にもこの「ナゲッツゲーム」で遊んでもらい、ゲームをしている動画をTwitter上に投稿することで景品がもらえるイベントが実施されています。SNSでの拡散効果を狙ったものとみられます。

 動画に対する批判として、LGBTからどのような声が上がっていたか、お伝えします。

『同性婚−−私たち弁護士夫夫です』の著者でもある弁護士の南和行さんは、「CMで安易な「おかまネタ」「おねえネタ」をオチにすることは、社会にすでにずいぶん浸透しているゲイ差別やトランスジェンダー差別の再生産になるのではないかと思います。そういったことが「笑ってもいい」「バカにしてもいい」「それが人にさげすまれるのは当然だ」という意識に根ざしているからです。残念ながら社会がそういう意識であれば、多くの人が自分のことを正直に話せない。カミングアウトできない。だから、こうしたCMは、カミングアウトできないゲイの人ほど、見ていて傷つくことだろうと思いました」と語っています。
「僕は、同級生に「ゲイだ」と明かされた一橋大ロースクールの学生(当時25歳)が、転落死した事件で同級生と大学を訴えた裁判で、原告代理人をしています。その学生は、「今はカミングアウトできない」とパソコンの中に書き遺していました。なぜなら、ロースクールの自習室の雑談などの中で、「ホモネタ」や「おかまネタ」で笑い合ってる同級生が現実にいたからです」
 
 弊社の社外取締役であり、NPO法人 虹色ダイバーシティの代表である村木真紀は、「アメリカのマクドナルド社は、LGBTが働きやすい職場を評価する米非営利団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン」が毎年発表している企業平等指数において、100点満点という最高評価を受けています。それなのに、日本のマクドナルドでは同性愛への嫌悪や偏見があると受け取られかねない動画をキャンペーンに使っている。これは問題があるし、残念に思います。特に、この動画キャンペーンは「皆でやってみよう」と真似することを促すものです。もしも学校でこのようなゲームが行われ、真似して笑うクラスメートがいたら、同性愛の当事者にとってはそこは「いじめ」と同じようないたたまれない空間でしょう」と指摘しています。
「LGBTなどに関する教育が行き届いていない日本では、子どもが真似することによって悪い影響を与えてしまうと思います。こうした行為を「笑っていい」というメッセージはLGBTなどの当事者の命に関わる問題だと思います」

 レズビアンのみやきちさんのblog「石壁に百合の花咲く」の「日本マクドナルド、男性から男性へのキスを「罰ゲーム」として描くCMをリリース(追記あり)」は、非常にたくさんリツイート、シェアされました。
 フランスや台湾のマクドナルドが作ったゲイの子どもを受け容れる父親の姿を描いた感動的なCMを紹介しつつ、「「当社は巷の同性愛嫌悪の尻馬に乗ってはしゃぐことに何ら疑問を感じない企業です」と積極的にアピールしているも同然でしょう」「この手のギャグのつもりのホモフォビアの何が迷惑かって、クロゼット・ゲイが「いちいち周囲と一緒になって笑わないと怪しまれる」という踏み絵状態に追い込まれやすいことです。一度や二度ではたいしたダメージがなくても、まだ心が柔らかい子どものころから延々これをやらされるのは楽しいもんじゃありませんよ」と綴っています。

 テレビのバラエティ番組などでも、未だに男性どうしのキス(や性的な振る舞い)が笑いのネタとして消費するものが見られますが、男性タレントから女性タレントへのセクハラが許されなくなったのと同様、LGBTをバカにするような表現もなくなっていくことでしょう(すでに「ホモ」「レズ」「おかま」などの差別語は使われなくなっています)
 今回のCMのいちばんの問題点は、日本マクドナルドの広報部の方も広告会社の方も、このような内容のCMがLGBT・アライを不快にさせ、学校で子どもたちが真似することによってLGBTの子どもたちがどれだけ傷つくかということに全く思い至らなかった(誰もこれを問題視しなかった)ということにあるといえるでしょう。
 おそらく日本マクドナルドも広告会社も、社内でLGBTへの理解を深める取組みを全くしてこなかったため、CM制作に携わった社員の方の無自覚がそのまま垂れ流されてしまったのです。企業がLGBT施策を怠るとこうなるという、悪い見本を作ってしまいました。
 たいへん残念なことです。


参考記事:
ハフィントンポスト「マクドナルドがキャンペーン動画削除「罰ゲームは男性同士のキス」に疑問の声」
 

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