GLOSSARY
LGBTQ用語解説
カミングアウト
自らの性的指向や性自認を自身の意志で他者に伝えること。ゲイの間で用いられていた「クローゼットの中から出て来る(coming out of the closet)」というスラングがLGBTQコミュニティに浸透し、世界中に広まり、定着したものです。Wikipediaなどで「Coming out」と検索していただくとわかるのですが、専らLGBTQの性的指向や性自認の自己開示について用いられる言葉です。
メディアなどを通じて性的指向や性自認を公表することもカミングアウトですし、親しい友人や同僚などに打ち明ける行為もカミングアウトと言います。(社会全体にカミングアウトしている人を「オープンリー・ゲイ」「オープンリー・レズビアン」などと言います)
正確に言うと、英語の動詞的表現は「カミングアウトする」ではなく「カムアウトする」ですが、日本では「カミングアウト」という言葉が浸透し、一般化したため、動詞的表現でも「カミングアウトする」と言う方が多いです。
カムアウトした人、自らのSOGIをオープンにしているLGBTQのことを一言で形容した「Out」という言葉も英語圏ではよく使われます。「Outアスリート」などと言います。
世代や暮らしている環境などによっても異なりますが、多くのLGBTQにとってカミングアウトは非常に勇気の要る行為です。職場でカミングアウト したら白い目で見られたりあからさまに差別されたりして、居づらくなって会社を辞めたという方もいます(職場でカミングアウトしている人はわずか4%というデータもあります)。親にカミングアウトしたら家を追い出されたという方もいます(サンフランシスコのホームレスの若者の約半分がLGBTQで、それは無理解な親に家を追い出されたり、逃げたりした結果だといいます)。LGBTQにとってカミングアウトとは、命にも関わるような重みを持った行為だということを理解してください。
2007年、『カミングアウト・レターズ 』(砂川秀樹:著・編集/RYOJI:編集/太郎次郎社エディタス)というゲイ・レズビアンの子と親、教師との往復書簡をまとめた本が出版され、親へのカミングアウトの最良のテキストとして広く支持されるようになりました。当事者だけでなく、そのご家族やご友人にも読んでほしい、オススメの一冊です。
カミングアウトという言葉はLGBTQが(多くの場合、勇気を持って)他者に「本当の自分」を伝えることを指しますが、日本では、いつの頃からか、テレビを通じて「カミングアウト」という言葉が日常的に使用されるようになり、本来の意味ではなく、ちょっとした秘密を教えること(福島県民はおひたしにマヨネーズをかけます、的なこと)に対して「カミングアウト」という言葉を使うようになってしまっています。これは、本来の言葉の意味を歪める行為ですし、言葉の「簒奪」と言えます。
「カミングアウト」という言葉がLGBTQに関係ない文脈で使われるようになっている一方、新聞やニュースサイトでLGBTQのカミングアウトについて「公言」※というあまり良くない(言ってはばからないというニュアンスを持つ)言葉を使うケースが散見されます。使うべき場面で「カミングアウト」を使わず、使うべきでない言葉で表現する、また、使うべきでない場面で「カミングアウト」という言葉が本来的でない意味で使われている現状…本末転倒で、とても残念なことです。メディアの皆様には、LGBTQコミュニティへのリスペクトを持ってカミングアウトという言葉を使っていただきたいです。
※公言
意味(ニュアンス)
・はっきりしていて露骨である
・ある信念または意見の公然の(真または偽の)言明
・不誠実に述べる
(情報通信研究機構「類語・類義語(同義語)辞典」より)
用例
「公言してはばからない」