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特集:2025年3月に上映されるクィア映画
この3月、アカデミー賞ノミネート作やトランスジェンダーのリアリティに触れられる作品など、多彩なクィア映画が多数、上映・放送・配信されます
(『ウィキッド ふたりの魔女』より)
ひさしぶりに映画特集をお届けします。この3月は『ウィキッド』や『エミリア・ペレス』などのオスカー候補作品をはじめ、実に多彩なクィア映画がこれでもかとたくさん上映・放送・配信されます。豊作といいますか、こんなにたくさんのクィア映画が観られるのは稀有なことです。特に、米国でのトランスジェンダーをはじめとするLGBTQへの迫害のような政策が顕著ななか、トランスジェンダーのリアリティに触れられる(『最も危険な年』のような米国の動きの本質も把握できる)作品をご覧いただくことにはたいへん重要な意義があります。ぜひこの3月は、良質なクィア映画をご覧ください。
(最終更新日:2025年2月28日)
3月2日上映 東京(北千住)
第5回足立レインボー映画祭
足立レインボー映画祭も5回目を迎えます(第1回のレポートはこちら)。今回は『片袖の魚』『ユンヒへ』という名作2本が上映され、それぞれ「映画から考えるトランス女性が生きる現在地」(登壇者:東海林毅監督、イシヅカユウさん)、「女性であること・レズビアンであること」(登壇者:五十嵐ゆりさん、河津レナさん)と題したトークショーも行なわれます。
第5回足立レインボー映画祭
日時:2025年3月2日(日)開場13:30、開演14:00
会場:東京芸術センター・天空劇場(足立区千住1-4-1)
無料
定員300人
お申込みはこちら
主催:足立区(多様性社会推進課)
協力:そらにじあだち
3月7日より公開
ウィキッド ふたりの魔女
19日のジャパンプレミアでkemioさんがキュートにアリアナをエスコートしたことも話題になった『ウィキッド ふたりの魔女』。1950〜60年代のGAYたちのアイコンと化していた(ゲイのことを「フレンズ・オブ・ドロシー」と言ったり、主演のジュディ・ガーランドのお葬式をやってる日に「ストーンウォール・イン」に警察の摘発があったことから暴動に発展したとまことしやかに語られるくらいの)映画『オズの魔法使い』。その前日譚で、素敵な力を持っているにもかかわらず、全身緑色という個性的な見た目であるがゆえに人々から疎まれ、悪魔化され、“悪い魔女”とされてしまうエルファバと、彼女の親友であるグリンダの友情を描き、不朽の名作として20年以上愛され続けているミュージカル『ウィキッド』(ドラマ『glee/グリー』でレイチェル&カートも歌っていた「Defying Gravity」に代表される名曲とともに世界中のミュージカルファンを魅了してきました。ゲイのファンも多いと思います)。そのミュージカル『ウィキッド』を映画化したのがこの作品です。昨年5月にロサンゼルスLGBTセンター・ガラでシンシア・エリヴォが語ったように(彼女はバイセクシュアルであることをカムアウトしています)、今回の映画版『ウィキッド』は、エルファバがどのように人々から色眼鏡で見られ、差別され、スティグマを付与されるようになったかということや、そんな彼女が持つ素晴らしい力を讃えるような物語になっていて、明らかにLGBTQコミュニティ(や様々な社会的マイノリティ)への支援のメッセージとなっているようです。
エルファバを演じるのがクィアであるシンシア・エリヴォで、グリンダを演じるのがスーパー・アライである(兄のフランキーがゲイである)アリアナ・グランデというキャスティングも素晴らしく(大学の学長をエブエブのミシェル・ヨーが演じているのも素敵)、『クレイジー・リッチ!』や『イン・ザ・ハイツ』を手がけた気鋭のジョン・M・チュウが監督していることもあり、名作であることは間違いなし!です。本国では昨年11月に公開され、アカデミー賞でも作品賞など10部門にノミネートされ、オスカーへの期待も高まっています。
<あらすじ>
魔法と幻想の国・オズにあるシズ大学の学生として出会ったエルファバとグリンダ。緑色の肌をもち周囲から誤解されてしまうエルファバと、野心的で美しく人気者のグリンダは、寄宿舎で偶然ルームメイトになる。見た目も性格もまったく異なる二人は、初めこそ激しく衝突するが、次第に友情を深め、かけがえのない存在になっていく。この出会いがのちにオズの国の運命を大きく変えることになるのだった…。
ウィキッド ふたりの魔女
原題または英題:Wicked
2024年/アメリカ/161分/G/監督:ジョン・M・チュウ/出演:シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデ、ジョナサン・ベイリー、イーサン・スレイター、ボーウェン・ヤン、ピーター・ディンクレイジ、ミシェル・ヨー、ジェフ・ゴールドブラムほか
3月7日よりロードショー公開
3月7日~20日上映 東京
プリシラ
シネマート新宿がさまざまな事情により長らくスクリーンでかけられなかった作品を2週間限定上映する「コケティッシュゾーン」という企画の一環で、ゲイ史上に燦然と輝くドラァグクィーン映画『プリシラ』が上映されることになりました。とにかく衣装と音楽が最高に素晴らしく、バスの上に巨大なハイヒール型のオブジェを乗せて大きなシルバーラメの布をはためかせ、オペラのアリアに合わせてリップシンクするシーンや、宝塚みたいな衣装でヒールを履いてエアーズロックに登るラストシーン、エリマキトカゲの衣装やゴムサンダルをたくさんつけた衣装など、思わず「素敵!」と言いたくなるシーンのオンパレードでした。これぞゲイテイスト!これぞドラァグクィーン!と世界中が賞賛し、オーストラリア映画であるにもかかわらずアカデミー賞の衣装デザイン賞に輝いています。脚本(ストーリー)も本当によくできていて、ケンカしたり、ストレート男性に暴行を受けたりというシリアスな場面もありつつ、クイーンたちの友情で困難を乗り越えていく…というところも感動を呼びました。90年代後半の、ゲイシーンがこれからどんどん海外のように発展していくだろうという希望や、ドラァグって素晴らしい、ゲイカルチャーってカッコイイという感覚が共有されていった時代を象徴するような、記念碑的な作品でした。おそらく映画館でご覧になったことがない方も多いことでしょう。この機会にぜひ、ご覧ください。
<あらすじ>
シドニーで暮らすバイセクシュアルのミッチ、誇り高きトランス女性バーナデット、若くてアクティブなフェリシアの3人のドラァグクイーンは、オーストラリアの砂漠にあるリゾート地でショーをすることになり、おんぼろバスの「プリシラ号」に乗って3000キロの旅に出る。道中で様々な出会いやトラブルに遭遇しながらも、目的地を目指すのだが…。
プリシラ
原題または英題:The Adventures of Priscilla, Queen of the Desert
1994年/オーストラリア/103分/監督:ステファン・エリオット/出演:テレンス・スタンプ、ヒューゴ・ウィービング、ガイ・ピアース、ビル・ハンターほか
3月7日(金)~20日(木祝)、シネマート新宿にて上映
3月7日〜10日 オンライン
トランスジェンダー映画祭2025春
トランスジェンダー映画祭は年に数回、オンラインで開催されています。米国でトランスジェンダーの人たちへの迫害が強くなっている今こそ、映画を通じてトランスジェンダーのリアルな経験に触れたり、私たちの社会について考えてみませんか。
トランスジェンダー映画祭2025春(オンライン配信)
日時:3月7日(金)14:00〜10日(月)16:00
前売チケットはこちら(『あの夏のアダム』のチケットはこちら)
◎最も危険な年
「トランスジェンダーは出生時の性別のトイレを使うべきだ」。2016年米ワシントン州では、トランスジェンダーのトイレ利用を制限する法案が議論されていた。それに対し、トランスジェンダーの子を持つ親たちが立ち上がる。差別と戦う武器は、自分たちのありのままの物語を語ること。現在日本でも広まりつつあるトランスヘイトの問題を考えるうえでも必見のドキュメンタリー作品。(レビューはこちら)
『最も危険な年』
原題:The Most Dangerous Year
2018年/米国/90分/監督:Vlada Knowlton
◎メジャーさん!
70代後半になった今でも、投獄されたトランスジェンダーたちに手紙を書き続けるメジャーさん。彼女は1969年、アメリカのLGBT史を変えた「ストーンウォール」を経験し、現在も生き延びて活動をしている唯一の人とも言われる。有色人種のトランス女性たちの人生は過酷だ。家族から見放され、暴力にさらされ、路上で刑務所で、クソみたいな日々を送る。そんなな見放された人たちをメジャーさんは娘と呼ぶ。そして、数えきれないトランスたちが、メジャーさんをママと慕う。そんなメジャーさんのたどった人生とは?トランスコミュニティの愛と闘いを描く、至極のドキュメンタリー作品。彼女の歩みは、第二次トランプ政権にクィアコミュニティが揺れる今だからこそ、私たちにたくさんの勇気を教えてくれるかもしれない。
『メジャーさん!』
原題:Major!
2015年/米国/91分/監督:Annalise Ophelian
◎ノー・オーディナリ・マン
20世紀半ばにアメリカで活躍したジャズミュージシャンのビリー・ティプトン。死後に「実は女性だった」とアウティングされ、妻や子どももメディアの好奇心の餌食にされた。そんな彼の軌跡をコミュニティの歴史として改めて検証しようと現代のトランス当事者たちが集まり、ビリーの息子とも対面する。彼が生きていた頃と今では、どれだけ社会が変わっただろうか。(レビューはこちら)
『ノー・オーディナリ・マン』
原題:No Ordinary Man
2020年/カナダ/83分/監督:アシュリン・チンイー、チェイス・ジョイント
◎短編映画『カパエマフの魔法石』
太古ハワイ王国では、男性と女性、そして男性と女性の両方を持ち合わせるマフが、自然と調和し暮らしていた。ワイキキビーチにあるパワースポット「4つの魔法石」もマフの歴史を伝える大切な場所。マフの歴史をたどる短いアニメ作品。
『カパエマフの魔法石』
原題:Kapaemahu
2020年/米国/8分/監督:Hinaleimoana Wong-Kalu, Dean Hamer, Joe Wilson
◎短編映画『スクリプト』
医者の前では“トランスらしい自分史”を話さないといけない? トランス男性だからってみんなが筋肉隆々になりたいわけじゃないことを病院で話せる? トランスやノンバイナリーの人たちがしばしば経験する医療との微妙で緊張感のある関係を、当事者たちが演劇仕立てでひもとく短編作品。日本語字幕付きは初公開。
『スクリプト』
原題:Script
2023年/米国/15分/監督:リット・フライヤー、ノア・シェイマス
◎あの夏のアダム
ドラマ『トランスペアレント』のプロデューサー兼コンサルタントを務め、同作に関連して製作した『ディス・イズ・ミー ~ありのままの私~』はGLAADメディア賞で特別表彰を受け、トランスジェンダーのリプレゼンテーションを高めたことでアメリカ自由人権協会からLiberty賞も授与されたリース・アーンストの長編デビュー作で、2006年のニューヨークを舞台に、男子高校生アダムのひと夏の恋と成長を描いた青春ドラマにして最高のクィア・コメディ映画です。(レビューはこちら)
<あらすじ>
2006年。全米レベルで同性婚が合法化される10年近く前、黒人大統領の登場がまだ想像し難かった時のアメリカ。ぎこちない思春期を生きる高校生のアダムは親から逃れ、姉のいるニューヨークで夏休みを過ごすことにした。レズビアンの姉ケイシーとともに、アダムは都会の刺激的なレズビアンやトランスジェンダーの運動やカルチャーに足を踏み入れる。そして、プライドで見かけた女性にひとめぼれ、夜のパーティで偶然、彼女を見かけ、なんとか話すきっかけを作ろうと試み、成功するが、ジリアンはてっきりアダムのことをトランス男性だと勘違いしてしまう。訂正する機会を逃していくうちに関係は深まり、にわか仕込みでトランス男性についての知識を身に着けていくアダムだったが、状況は、どんどん複雑に……。
『あの夏のアダム』
2019年/米国/95分/監督:リース・アーンスト/出演:マーガレット・クアリー、ボビー・サルボア・メネズ、ニコラス・アレクサンダー、MJ・ロドリゲスほか
3月11日上映 東京
ハンサム・デビル
アイルランドのゲイ映画(コメディドラマ映画)でラグビーの名門校でホモフォビア(同性愛嫌悪)に立ち向かうゲイの姿を描いた感動の名作『ぼくたちのチーム』が、『ハンサム・デビル』という邦題で一度だけ特別限定上映されます。長くないですし、難しくないですし、気楽に観れるコメディドラマ映画で、爽やかな感動をもらえる名作です。以前Netflixで配信されていましたが、DVDやブルーレイなどパッケージソフトも販売されておらず、今回初めて映画館で上映されることになりました。本当に貴重な機会ですので、ぜひご覧ください。
<あらすじ>
ラグビーの名門校である寄宿制男子高校に入ることになったネッドは、すぐにゲイだといじめられ、憂鬱な日々を送っていた。そんなある日、ラグビーのスター選手であるコナーが転校してくる。相部屋となったネッドとコナーは、文字通り壁を作っていたものの、やがて、音楽を通じて友情を深めていく。新任の国語教師シェリーの提案で二人はコンテストで弾き語りをすることになるが、ラグビーのコーチがそれを邪魔する。二人の友情を引き裂かれたネッドは…。
ハンサム・デビル
原題:Handsome Devil
2016年/アイルランド/94分/監督:ジョン・バトラー/フィオン・オシェイ、ニコラス・ガリツィン、アンドリュー・スコット、モー・ダンフォード、マイケル・マケルハットンほか
2025年3月11日(火) 新宿ピカデリーにて特別上映
3月12日放送
ムーンライト
BS松竹東急(全番組無料放送・260ch)の放送枠「よる8銀座シネマ」では、第97回アカデミー賞授賞式を記念して「BS松竹東急 アカデミー賞 プレミアム・コレクション」と題した特集放送を行ないます。3月12日(水)20時〜にはクィア映画として初めてアカデミー作品賞を受賞した歴史的・記念碑的な名作『ムーンライト』が放送されます。
オープンリー・ゲイのタレル・アルヴィン・マクレイニーの『In Moonlight Black Boys Look Blue』という戯曲が原案で、この物語は彼自身の子ども時代のお話なんだそうです。タレルと同じ街・同じ学校の出身であり、母親が麻薬中毒でネグレクト(育児放棄)されていたという境遇も同じだったバリー・ジェンキンスが、タレルとともに脚本を書き、完成させた映画が『ムーンライト』です。美しくも切ない男どうしの純粋な恋の物語であり、同時に、静かな怒りを感じさせる作品です(レビューはこちら)。まだご覧になったことのない方は、この機会にぜひ。
<あらすじ>
マイアミの貧困地域で暮らす内気な少年シャロンは、学校ではいじめられ、家庭では麻薬常習者の母親からネグレクトされていた。そんなシャロンに優しく接してくれるのは、近所に住む麻薬ディーラーのフアン夫妻と、唯一の友達であるケヴィンだけだった。高校生になったシャロンは、ケヴィンに対して友情以上の思いを抱くようになるが…。
ムーンライト
原題:Moonlight
2016年/アメリカ/監督:バリー・ジェンキンス/製作総指揮:ブラッド・ピット/出演:トレヴァンテ・ローズ、アシュトン・サンダース、アレックス・R・ヒバート、マハーシャラ・アリ、ナオミ・ハリス、アンドレ・ホランド、ジャネール・モネイ、ジャハール・ジェロームほか
BS松竹東急で2025年3月12日(水) 20:00-22:17放送
3月15日〜 大阪
大阪アジアン映画祭
3月14日から開催される「第20回大阪アジアン映画祭」でたくさんのLGBTQ(クィア)映画が上映されます。関西のみなさん、ご注目ください。
君と僕の5分
転校生ギョンファンは日本の音楽や漫画が大好きな少年。クラスに馴染めない彼に、人気者のジェミンが声をかける。次第にジェミンに惹かれるギョンファンは思い切って告白するが、いつの間にかゲイだと知れ渡っていた。
2024年/韓国/103分/監督:オム・ハヌル
3月15日(土)15:30 T・ジョイ梅田スクリーン7 / 3月21日(金)12:30 テアトル梅田 シネマ4
イケメン友だち
カミングアウトした中年のゲイ男性は、若い理髪師に振られた男と出会い関係を深めていく。その複雑な関係に、精子提供を求めるレズビアンカップルが絡んできて…。ユーモアと皮肉を交え、アイデンティティ、自由、政治を掘り下げて描く。
2024年/フランス、ポルトガル/116分/監督:ゲン・ジュン
3月15日(土)20:40 T・ジョイ梅田 スクリーン7 / 3月21日(金)16:20 テアトル梅田 シネマ4
いばらの楽園
恋人と念願のドリアン農園を手に入れ結婚するはずだった主人公。突然の事故で恋人を亡くしてから、恋人の家族に農園をじわじわと乗っ取られてしまう。愛憎入り混じる人間関係に、固唾をのむこと請け合いのエンターテインメント作品。俳優、シンガーソングライター、音楽や映画のプロデューサーなど、各分野でマルチな才能を発揮するジェフ・サターの映画初出演・主演作。
2024年/タイ/130分/監督:ボス・グーノー
3月19日(水)13:00 テアトル梅田 シネマ4 / 3月23日(日)13:00 ABCホール
All Shall Be Well
60代のレズビアンカップルのアンジーとパットは、長年支え合って生きてきた。しかしパットが急死したことで、葬儀や遺産をめぐって、それまで良好な関係だったパットの親族とアンジーの間に溝が生まれてしまい…。『叔・叔(スク・スク)』のレイ・ヨン監督の最新作で、ベルリン国際映画祭2024でテディ賞を受賞した作品です。
2024年/香港/93分/監督:レイ・ヨン
3月15日(土)17:10 テアトル梅田 シネマ4 / 3月22日(土)10:10 テアトル梅田 シネマ4
3月21日より公開
その花は夜に咲く
1998年のベトナム・サイゴンを舞台とし、夜の世界に生きるトランスジェンダーを主人公としたラブストーリー作品です。監督のアッシュ・メイフェアは自身の中学時代の経験や記憶をもとに本作を制作、トランスジェンダーの友人をモデルにサンのキャラクター像を作り上げたといいます。彼女は「近年、ベトナムではレズビアンやゲイのコミュニティへの受容が広がっていますが、トランスジェンダーコミュニティはいまだに政府や社会から厳しい差別を受けています」と語っています。ミス・インターナショナル・クイーン2023ベトナム大会でベストフェイス賞を受賞したチャン・クアンが映画初出演で主演のサンを演じています。
<あらすじ>
経済解放間もないサイゴンには、昔ながらの風情と活気が残っていた。望まない性に生まれたサンは夜の町で歌手として働き、ボクサーのナムと慎ましくも愛のある生活をしていた。しかし、若い二人は容赦なく夜の世界に飲みこまれ、嫉妬や裏切り、焦りや不安によって徐々に距離が生まれ始め…。
その花は夜に咲く
原題または英題:Skin of Youth
2025年/ベトナム・シンガポール・日本/121分/R15/監督・脚本:アッシュ・メイフェア/出演:チャン・クアン、ヴォー・ディエン・ザー・フイ、ファン・ティ・キム・ガン、井上肇ほか
3月21日より公開
3月28日より公開
エミリア・ペレス
昨年のカンヌ国際映画祭で主要女性キャストであるセレーナ・ゴメス、ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、アドリアナ・パズが4人とも女優賞を受賞し(カルラ・ソフィア・ガスコンはトランスジェンダーとして初の受賞)、今年のゴールデングローブ賞で作品賞や助演女優賞を受賞、そしてアカデミー賞ではトランスジェンダーとして初のカルラ・ソフィア・ガスコンをはじめ『エミリア・ぺレス』が最多12部門13ノミネートを果たした(ある時点までは本命視されていた)『エミリア・ペレス』。メキシコの麻薬王が悲願の性別適合手術を受けてエミリア・ペレスという名の女性として新たな人生をスタートさせるというスペイン語のミュージカルスリラー映画で、カンヌでは9分ものスタンディングオベーションで称えられています。GG賞のステージでカルラは、社会から疎外されているコミュニティに向けて「光は常に闇に勝ります。捕えられようとも、殴られようとも、私たちの魂や反骨心、尊厳を奪うことはできません。声を上げましょう。私は私、自分が何者であるか知ってください」とスピーチしています。カルラの過去の差別発言が問題視されてはいるものの、作品自体は本当に傑作だと思います。期待しましょう。
なお、横浜フランス映画祭2025で3月21日(金)19:30に上映が予定されており、監督のジャック・オーディアールが登壇予定です(詳細はこちら)
<あらすじ>
メキシコシティの弁護士リタは、麻薬カルテルのボスであるマニタスから「女性としての新たな人生を用意してほしい」という極秘の依頼を受ける。リタは完璧な計画を立て、マニタスが性別適合手術を受けるにあたって生じるさまざまな問題をクリアし、マニタスは無事に過去を捨てて姿を消すことに成功する。それから数年後、英国で新たな人生を歩んでいたリタの前に、エミリア・ペレスという女性が現れ、それをきっかけに、彼女たちの人生が再び動き出す…。
エミリア・ペレス
原題または英題:Emilia Perez
2024年/フランス/133分/G/監督:ジャック・オーディアール/出演:セレーナ・ゴメス、ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、アドリアナ・パズほか
3月28日より全国でロードショー公開
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