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「結婚の自由をすべての人に」関西訴訟二審・大阪高裁判決の意義
3月25日、「結婚の自由をすべての人に」関西訴訟の二審(控訴審)判決が大阪高裁で下され、3年前の全国で唯一の合憲判決を覆す明確な違憲判決が出たことで、みなさん安堵し、癒されていた様子でした。記者会見&報告集会の模様をレポートします
【婚姻平等訴訟】一審を覆し大阪高裁でも違憲判決、5高裁で違憲判断が揃いましたとのニュースでもお伝えしたように、2025年3月7日、「結婚の自由をすべての人に」関西訴訟の二審(控訴審)判決が大阪高裁で下され、憲法14条1項と24条2項に反するという判断が示されました。「同性カップルのみ結婚とは別の制度を設けることは新たな差別を生み出しかねない」という力強い言葉もありました。
旗だしでは、3年間、合憲判決のトラウマに苦しんできた原告のみなさんもようやく笑顔になり、「唯一の合憲判決くつがえる!」という旗を掲げました。弁護団のみなさんは「今すぐ立法を!」「高裁ぜんぶ違憲」「注視はもう十分!」との旗を掲げていました。
お昼をはさんで午後には記者会見&報告集会が開催されましたので(YouTubeライブで配信されました)、そちらの模様をレポートしつつ、今回の判決の意義などをまとめます。
判決要旨
CALL4に判決要旨と判決本文が掲載されています。
判決要旨は以下のとおりです。
判決要旨
【主文】
本件各控訴をいずれも棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする。
(※立法不作為による国家賠償請求については棄却、ということ。他の判決と同じです)
【事案の要旨】
控訴人らは、同性の者と婚姻をしようとして婚姻の届出をしたが、両者が同性であることを理由に不受理処分を受けた。控訴人らは、同性間の婚姻を認めていない民法及び戸籍法の規定(本件諸規定)は、憲法24条、13条、14条1項に違反し、国会が同性間の婚姻を認める立法措置を講じないことは違法であると主張して、被控訴人に対し、国家賠償法1条1項に基づき損害賠償(慰謝料各100万円)を請求している。
原審は、本件諸規定は憲法の規定に違反するものではないとして、控訴人らの請求をいずれも棄却した。
【主な争点】
1 本件諸規定の憲法適合性(憲法24条、13条、14条1項違反の有無)
2 本件諸規定を改廃し、同性婚を法制化しない立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法であるか
3 控訴人らの損害の有無及び額
【理由の要旨】
1 本件諸規定の憲法適合性(憲法24条、13条、14条1項違反の有無)
(1)憲法24条における「婚姻」の意義及び婚姻の自由の保障
憲法24条は、戸主の同意など婚姻当事者以外の第三者の介入によって婚姻の成否が左右され、男性である夫の法的優位性を認めた明治民法と決別し、婚姻及び家族に関する法的規律を個人の尊厳と両性の本質的平等という憲法の基本原理によるべきこととして、国民の家族生活における民主的基盤の確立を図り、かつ、家族生活及び親族的身分関係の中心となる婚姻については、上記基本原理並びにこれにより導かれる婚姻の自律性、婚姻当事者の権利の同等性、婚姻維持における相互協力性を基本原則として法律により制度を構築すべきことを宣言したものである。
したがって、憲法24条における「婚姻」は、上記基本原理及び基本原則に則って法律により具体化される制度をいうものと解される。
憲法24条は、「婚姻」が異性婚であることを前提として制定されたが、異性婚のみが婚姻法の基本原理及び基本原則に沿うことを規定したものではなく、将来にわたって婚姻当事者を異性同士に限定し、同性婚を婚姻制度から排除する趣旨を含むものと解することはできない。憲法24条にいう「婚姻」は、親族的身分関係の基礎となる、一男一女が継続的に共同生活を営む人的結合関係を典型とするものの、これに限られるものではなく、それ以外の人的結合関係その法律婚化は、個人の尊厳と両性の本質的平等に則り、国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ、それぞれの時代の社会の在り方に相応しいものであるかという観点からの検討を経て、具体化されるべきものであり、同性婚の法制化の要否は、同条2項によって画された立法裁量の範囲の問題であると解するのが相当である。
したがって、憲法24条1項が直ちに同性間の婚姻の自由を保障し、同性婚の法制化を要請しているものと解することはできない。
(2)憲法13条における婚姻の自由の保障
婚姻をするについての自由は、憲法の定める基本原理及び基本原則に則った婚姻を具体化する法律に基づく制度によって初めて個人に与えられるか、又はそれを前提とした自由であり、憲法13条が同性と婚姻をする自由を人格権の一内容として直接保障し、同性婚の法制化を立法府に義務付けていると解することはできない。
したがって、同性婚を認めていない本件諸規定が直ちに憲法13条に違反するとはいえない。
もっとも、婚姻をすることによる法的、社会的利益は大きく、同性カップルにとっても、婚姻制度を利用することができることは重要な人格的利益であるから、その保護は、国会の立法裁量の範囲を画する個人の尊厳の要請の解釈に当たって考慮すべきことになる。
(3)本件諸規定の憲法24条2項適合性
ア 個人の尊厳の要請からの検討
現行の法律婚制度は、配偶者との共同生活を中心とする人的結合関係を、社会を構成する基本的単位として承認し、法的な権利義務関係として規律し、親族的身分関係を形成するものとして登録、公証し、解消にも法的規律を及ぼすことにより、長期的かつ安定的なものとして保護するものであり、各種社会制度においても配偶者の地位に法的効果が付与されるなど、社会生活の様々な場面において婚姻当事者であることによる格別の扱いがされている。我が国においては法律婚を尊重する意識が浸透しており、婚姻は人生における幸福追求のための重要な選択肢となっている。
したがって、相互に求め合う者同士が婚姻をすることができる利益は、個人の人格的生存と結びついた重要な法的利益に当たり、同性カップルがこれを享受することができないのは、同性カップルの人格的利益を著しく損なうこととなる。
我が国において法制化された婚姻制度は、自然生殖の可能性があることと一体のものとされておらず、自然な性愛感情を抱き合う関係自体を婚姻関係として保護するものであるから、それが同性であっても、関係を保護することに障壁がなければ異性と同等に扱うのが個人の尊厳の要請に適う。
同性愛は病理ではなく、性的指向は、ほぼ生来的に決定され意思によって変更することができない属性であることが明らかになり、性的指向による差別の解消の動きは国内外で活発化し、同性婚を法制化する諸外国の情勢等を受けて、我が国においても、地方公共団体におけるパートナーシップ認定制度が急速に広がり、各種団体から同性婚に賛同する意見表明がされ、世論調査においても同性婚の法制化に賛成する意見が反対意見を上回るなど、同性婚の法制化を受け入れる社会環境が整い、国民意識も醸成されている。
妻が産んだ子を夫の子と推定する嫡出推定制度は婚姻の主要な効果の一つであるが、これは第一次的には子の福祉及び利益を第一に制度設計されるべき親子法制の分野に関わる事項である。生殖及び家族の在り方等が多様化した現代社会において、嫡出推定制度が婚姻における不可欠かつ本質的要素であるということはできず、同性婚の法制化に当たって、嫡出推定規定の適用の可否について議論を要するところがあることは、同性婚の法制化を否定する事情には当たらない。
婚姻制度は、国民生活の基盤であり、制度設計に当たって多様な国民感情に配慮する必要もある。しかし、同性婚の法制化は、同性カップルにも異性カップルと同様に権利と責任を伴う安定的な共同生活を継続的に営む法的地位を付与するものであり、国民一人一人にとっての婚姻の意義や主観的価値を損なうものではなく、国民感情が一様でないことは、同性婚を法制化しない合理的理由にならない。
したがって、同性婚を許容しない本件諸規定は、性的指向が同性に向く者の個人の尊厳を著しく損なう不合理なものである。
イ 法の下の平等の要請からの検討
現行の婚姻法制は、婚姻を、性愛を基礎とする親族身分的人的結合として規定しているものと解される。性的指向が異性に向く者は愛し合うパートナーと婚姻をすることができるのに対し、性的指向が同性に向く者は愛し合うパートナーと婚姻をすることができないのであるから、本件諸規定は婚姻制度の利用の可否について性的指向による実質的な区別取扱いをしているものといえる。性的指向は自己の意思によって左右することができない自然的属性であり、同性カップルが互いに自然な愛情を抱き、法的保護を受けながら相互に協力して共同生活を営むことは、異性カップルと同様に人格的生存にとって重要であり、現在では、社会の倫理、健全な社会道徳、公益のいずれにも反するものでないとの社会的認識が確立しているといえる。そうであるのに、異性カップルは婚姻をし、親族的身分関係を形成し、互いに権利と責任を負い、各種の法的効果を享受して安定した共同生活を営むことができる一方、同性カップルはこのような法的利益を享受することができないのであるから、同性カップルが被る不利益は著しく大きく、このような差異をやむを得ないものとして正当化できる根拠は見出し難い。
したがって、本件諸規定が、異性婚のみを保護することを目的とし、同性婚を認めず、性的指向により婚姻制度利用について区別した取扱いをしていることは、事柄の性質に即応した合理的根拠に基づくものということはできず、法の下の平等原理に反し、憲法14条1項に違反するというべきである。なお、同性カップルの法的保護を法律上の婚姻と異なる形式で行うことは、性的指向という人間の自然的、本質的属性によって、その属性に基づく人格的生存の在り方において合理的理由のない差異を設けることになり、法の下の平等の原則に悖るものといわざるを得ないし、同性カップルについてのみ婚姻とは別の制度を設けることは、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解が必ずしも十分でない現状に鑑みると、新たな差別を生み出すとの危惧が拭えない。
したがって、近年パートナーシップ認定制度の導入・拡大が急速に進んでいることなどの事情は、前記区別取扱いが憲法14条1項に違反するとの上記結論を左右しないし、同性カップルについて諸外国において導入されているような法律婚以外の制度を設けたとしても、現時点において異性カップルと同性カップルの間に生じている不合理な差別を根本的に解消し得ないというべきである。
(4) 以上のとおり、現時点において同性婚を法律婚の対象としない本件諸規定は、性的指向が同性に向く者の個人の尊厳を著しく損なう不合理なものであり、かつ、婚姻制度の利用の可否について性的指向による不合理な差別をするものとして法の下の平等の原則に反するから、国会の立法の裁量の範囲を超えるものであって、憲法14条1項及び24条2項に違反するものというべきである。
2 本件諸規定を改廃し、同性婚を法制化しない立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法であるか
同性婚の法制化が憲法上の要請であるかは、憲法の文言上、一義的に明らかとはいえず、国内外の情勢変化に伴い、同性婚を許容し、あるいはこれを推し進める必要があるとの国民意識の高まりや社会情勢の変化はここ数年顕著であるものの、伝統的婚姻観を有する国民も相応に存在し、同性婚を認めないことが憲法に反するかどうかは、同種訴訟における下級審裁判例の判断も分かれており、最高裁判所における統一的判断はされていない。これらのことからすると、現時点において、同性婚を法制化しないことが憲法14条1項及び24条2項に違反することが国会にとって明白であるとか、国会が正当な理由なく長期にわたって法制化を怠っていたということはできず、上記立法不作為が、国家賠償法1条1項の適用上違法であるということはできない。
3 結論
よって、その余の点について判断するまでもなく、控訴人らの請求はいずれも理由がないから、これを棄却した原判決は結論において相当である。
以上
「結婚の自由をすべての人に」関西訴訟弁護団声明
CALL4に掲載された弁護団声明から、「判決の概要と意義」「おわりに」をご紹介します。
(なお、CALL4では交通費、訴訟書類の印刷代、通信費などに充てる寄付を募っています。よろしければご協力ください)
「結婚の自由をすべての人に」大阪高裁判決についての弁護団声明
3. 判決の概要と意義
本判決は、同性婚を法律婚の対象としない本件諸規定は、性的指向が同性に向く者の個人の尊厳を著しく損なう不合理なものであり、かつ、婚姻制度の利用の可否について性的指向による不合理な差別をするものとして法の下の平等に反するものであるとして、憲法14条1項及び同24条2項に違反するとの憲法判断を示した。国家賠償を求める請求自体は棄却されたが、本件諸規定が違憲であるという判断を明確に下した点について、大阪地裁による不当な合憲判断を覆すものであり、高く評価できる。
本判決は、憲法24条につき、異性婚のみが婚姻法の基本原理及び基本原則に沿うことを規定したものではないこと、同条が将来にわたって婚姻当事者を異性同士に限定し、婚姻制度から同性婚を排除する趣旨を含むものと解することはできないこと、憲法24条1項が規定する婚姻の自律性、権利の同等性及び相互協力性の基本原則は同性婚においても実現することができるとの解釈を示した。
そのうえで、本判決は、相互に求め合う者同士が婚姻をすることができる利益は、個人の人格的生存と結びついた重要な法的利益に当たり、同性カップルがこれを享受することができないのは、同性カップルの人格的利益を著しく損なうことになるとした。また、婚姻は性愛を基礎とする親族身分的人的結合関係を規定しているところ、異性カップルは婚姻をし、親族的身分関係を形成し、互いに権利と責任を負い、各種の法的効果を享受して安定した共同生活を営むことができる一方、同性カップルはこのような法的利益を享受することができず、このような区別取扱いは合理的根拠に基づくものとはいえず、法の下の平等に反するとした。
本判決においては、大阪地裁が合憲判決を下した理由をことごとく排斥している。すなわち、大阪地裁は、①婚姻の本質は、男女が生涯続く安定した関係の下で、子を産み育てながら家族として共同生活を営み子を養育するという関係に、社会の自然かつ基礎的な集団単位としての識別、公示の関係を持たせ、法的保護を与えようとする趣旨と捉え、本件諸規定は異性間の婚姻のみを婚姻として特に保護する制度を構築したと捉えた。また、②権利救済の方法については、婚姻制度とは異なる別の制度を創設したからといって、原告らの主張するような同性愛者への差別が助長されるとは必ずしもいえないとして、いかなる方法で同性愛者に法的保護を与えるかは議論の途上にあるため、現時点で違憲判決を下すことはできないとした。③さらに、我が国において同性間の人的結合関係を異性間の人的結合関係と同視し得るほどの社会的な承認が存在しているとはいい難いこととし、これらを主な理由として合憲判決を下した。
それに対し、本判決は、①子をもうけることや自然生殖能力があることは婚姻の要件とはされておらず、人間としての自然な、本能に由来する性愛感情を抱きあう関係自体をも保護するものであるとして、同性同士であっても異性同士と同等に扱うのが個人の尊厳の要請に適うとした。また、②については、同性カップルの法的保護を法律上の婚姻と異なる形式で行うことは、性的指向によって、その属性に基づく人格的生存の在り方において合理的理由のない差異を設けることになり、法の下の平等に悖るばかりか、新たな差別を生み出す危惧があると厳しく指摘している。③についても、大阪高裁は、婚姻の意義や主観的な価値は国民一人一人が自らの価値観に照らして見出すものであり、同性婚に対する国民感情が一様でないことは同性婚を法制化しない合理的理由にはならないとしたうえで、同性婚の法制化によっても社会の多数者が婚姻と同じ保護を与えることを認めなければ同性カップルの保護を認めないとすることは、性的少数者の権利利益を不当に制限するものであ
り、憲法14条1項の解釈として採用することができないとしている。
①~③に加えて、大阪高裁は、④生殖及び家族の在り方等が多様化した現代社会においては、嫡出推定制度は婚姻における不可欠な要素ではなく、同性婚を法制化した場合に嫡出推定規定の適用の可否について議論を要するところがあるとしても、同性婚の法制化を否定する理由にはならないこと、法的保護のない事実上の共同生活を妨げられないことや既存の法制度の活用により婚姻の一部の法的効果に類似した法的地位を獲得できることは区別の合理性を基礎づけるものではないことなども認定しており、大阪地裁における合憲の理由、国の主張のいずれも合理的な理由がないことを示している。
このように、大阪高裁は、大阪地裁における合憲の理由をことごとく排斥しており、大阪地裁の合憲判決が不当であったことを明確にするものである。
他方で、本判決は、本件諸規定を違憲とする判断内容が統一されておらず、最高裁の判断が示されていないことから、現時点ではなお国会賠償法上違法とはいえないとも判示した。大阪地裁以外のすべての地裁及び高裁での判断がなされており、もはや本件諸規定の違憲性は明白であるにもかかわらず、最高裁の判断がでるまでは国会に立法の猶予を認めるかのような判断ともいえ、不当であると言わざるを得ない。
4 おわりに
法律上同性同士の者が婚姻できないことについて、本訴訟が係属した全国5か所の高等裁判所のすべてで違憲判決が下された。これは司法から立法府に対する、これ以上ない強い警告である。
本訴訟を提起してからの6年間、一連の訴訟で違憲判決が下されるたびに、国は訴訟の状況を注視すると述べるにとどまり、本日に至るまで同性間の婚姻の法制化に向けた真摯な議論を始めることはなかった。この期間に失われた時間を、失われた命を取り戻すことは決してできない。司法が本件諸規定の違憲性を明確に宣言した今、不合理な差別を是正することをためらう理由は何一つない。
本訴訟においては、すでに札幌高裁、東京高裁、名古屋高裁、福岡高裁の判決について最高裁に上告がなされている。私たちは最高裁において人権救済の砦としての司法の職責が果たされることを確信している。そして、国に対しては、司法からのメッセージを真摯に受け止め、最高裁の判断を漫然と待つことなく、直ちに同性間の婚姻の法制化に着手することを強く要請する。
記者会見の模様
3月25日14時から記者会見が開かれました。
寺野弁護士が司会を務めました。
最初に、大畑弁護士から弁護団声明が読み上げられました(上記に記載した通りです)
次に、三輪弁護士から判決のポイントについての解説がなされました。
「違憲の根拠として、憲法24条2項と憲法14条1項に違反しているという判断がされています。憲法24条1項については、弁護団の中でもどういう意味なのかという見解が分かれるような、ちょっと微妙な書き方になっています。1項について合憲だとまでは言ってないようです。
憲法13条(幸福追求権)については違反しないという判断をしています。ただ、この13条に言及するなかでとても興味深い記述があり、「異性婚制度は、人間としての自然な本能に由来する性愛感情を抱き合う関係をも婚姻関係として保護する趣旨であると解される」と。「自然な性愛関係を抱き合うのが同性どうしであっても、倫理的・道徳的な障壁がないのであれば、可能な限り異性と同等に扱うのが個人の尊厳の要請に叶う」ということをあえて付け足しているんですね。かなり踏み込んだ検討をしている。
特筆すべき点。唯一の合憲判決が覆ったということ。どうにかしたいという気持ちで3年間頑張ってきた。やっと願いが叶ったことは、私たちにとっても、唯一の合憲を覆したことでも重要な意味を持っていると思います。
もう一点は、全ての高裁で違憲判決が出されたということです。これは、異常なこと、非常事態だと思っています。これほど裁判所が違憲だ(国がなんとかしないといけない)という法律がほったらかしにされているのは緊急事態。このメッセージを政府が真剣に受け止めているんだろうかと危惧する、ちゃんとわかっているのかと不安に感じています。
もう一つは、別制度論を明確に否定したことです。別制度を設けると、新たない差別が生まれる危惧が拭えないと言った。福岡高裁よりもさらに踏み込んだ。それは今後作られなければならない法律のあり方にとっても重要だと思います。
最後に、嫡出推定、結婚しているときに懐胎した子どもに関してはその母親の夫を父親と推定するという規定について、この制度があることで「じゃあ、同性二人でこども作れないから婚姻制度に入るのはおかしいんじゃないの?」という見解もあるんですけれど、だからと言って同性婚できないというのは許されないと言っています。
最後に私の感想なんですけども、今日は、東京の原告だった佐藤郁夫さんのお誕生日だったんです。郁夫さんがご存命の間に同性婚を実現できなかったことは痛恨の極みだと感じています。もう注視は十分ですので、一刻も早く、立法に向けた作業を始めていただきたいと思います」
宮本弁護士から、補足説明がありました。
「大阪地裁と高裁で、憲法適合性の判断が分かれました。婚姻の本質についても判断が分かれました。地裁は、婚姻は子を産み育てることに法的保護を与えるものだと。実際は子を産み育てない異性カップルもいて、現在の社会の実態に即していないですよね。異性カップルは子どもは要件としていない一方、同性カップルには要求するのは、端的に差別です。
また、高裁は、人間としての自然な性愛感情を抱き合う関係をも婚姻として保護するとして、異性カップルと同性カップルを同等に扱うのが個人の尊厳との判断。正当な判断を示しました。
また、地裁は、社会的な承認がいまだない、権利救済の方法は議論の途上だとして違憲判決を避けましたが、高裁は、多数決原理のもとでは救済が困難である同性カップルの人権について合憲だとしたのは端的に司法の責任を放棄したものと言わざるを得ないと言ってくれました。
バトンはすでに国会に渡っています。失われた時間や命は戻りません。今すぐ立法に向けて動いてください」
続いて、原告のみなさんからのコメントです。
坂田麻智さん:
ようやくまともな判決が出て、心からホッとしています。安堵しています。あの判決は間違いだったと、今日の判決で示していただいた。
今回の控訴審の中で、私が重要視したポイントが三つあって、一つは、法制度を使えないのは差別だと明確に言ってくれること。二つは、別制度は要らないということ。三つは、期限をつけて立法を促すことを求めていたんですが、ここは難しかったかな。でもそれ以外にも、いい内容がありました。婚姻制度について、自然生殖の可能性が必要なことじゃないよ、と言っていただいた。それから、嫡出推定についての言及がありましたが、子どもと一緒に法廷に立っていたことが、もしかしたら、その姿を見て言ってくれたのかな、と思いました。制度設計については、地裁判決では「反対の人がいるから」という内容もあったが、国民の意見が一様でないことが法制化しない理由にならないと言ってくれたのは心強かったです。
ここまで言ってもなかなか国は動いてくれない、国だけが寄り添ってくれない。一刻も早く法制化に向けて動いてください。
坂田テレサさん:
最初から14条と24条に違反と言ってくれて、安心して聴くことができました。内容も、すごいフォローしやすくて、明確に言ってくれてる印象でした。地裁判決は、いい方向に行きそうで落とされるパターン、納得いかない、モヤモヤするものでしたが、その一個一個を綺麗に、クリアな言葉で、間違っていたと言ってくれてて、気持ちがスッキリしました。原告だけじゃなく、みんなの声が届いたと感じました。
でも、判決の内容は良かったとしても、議員さんが動いてくれないと変わらないです。これが議員さんの背中を押す判決になればと強く思っています。みんなのサポートがなかったらここに立てていないと思う。温かい言葉、本当にありがとう。みんなと一緒に闘ってきたと感じています。
川田有希さん:
3年前の合憲判決、将来的には違憲の可能性も、という言葉もありましたが、ようやっと違憲を出していただいて、良かったです。僕らが人権救済から10年近く、結婚の権利を求めて活動してきましたが、でも、まだ、司法の話だけでは立法に対して意見ができない、立法に裁量権があるから立法府に求めてくださいよという話で締めくくらられたのは残念だと思って。
でもやっぱり、24条の話で、婚姻が昔は異性婚しか想定していなかったということを明確に言ってて、ちゃんと立法府がアップデートしていかないといけない部分だと明確にしてくれたことはとても心強く感じました。
田中昭全さん:
3年前の判決がトラウマで…「しかしながら」と言って次の瞬間「え?」となる、あれがトラウマになって。話をするなかであれほどのねじ曲げってないなと。判決の後は、本当に、どう振る舞っていいかわからなかったです。今日は本当に素直に聞けて。ようやくここまで辿り着けたと。旗だしのとき、思ったのは、いろんな人が支援してくださって。「応援してます」って言ってくださったり。今日も記者さんの後ろに大勢の人たちが…感慨深かったです。高裁全てで違憲判決が出たので、あとは立法府の方、よろしくお願いします。
続いて、質疑応答となりました。
「13条についての判断は、今後の訴訟の大勢に影響しないと見ていいのか」という質問に対しては、関西弁護団としては、もともと13条は主張していなかったので、そうだろうな、と。何条であれ、憲法に違反してたら、合うようにしないといけないので、何条かというのはさほど重要ではない、とのお答えでした。
「立法を早くとおっしゃっていたが、具体的にどういう作業から始めたらよいのかアドバイスを」という質問に対しては、「ちょっと法律を変えたらいいだけ。「妻と夫」という民法の文言を「婚姻の両当事者」などと書き換えるだけ。簡単なことです。さっさと考えろ、という感じです」とのお答えでした。
ほか、嫡出推定についての質問などが挙がっていました。
↓記者会見のYouTubeライブです。
報告会の模様
15時からは同じ会場で報告会が行なわれました。
晴々とした雰囲気のなか、虹色ダイバーシティの村木真紀さんの司会で、会が進められました。村木さんは「一斉提訴してから2231日、地裁判決から1009日、最も長く、大変な裁判を闘った原告、弁護団のみなさんに拍手!」と語りました。
初めに、三輪弁護士から判決のポイントについての解説がありました(記者会見の時と同様ですので、割愛させていただきます)
それから原告のみなさんから、判決を受けてのコメントが語られました。
田中昭全さん:
香川から朝早く起きて来たので眠いですが、今日は本当にホッとしました。これで合憲でたらどうしようと。緊張しないタチなんですが、昨日くらいから緊張してて。解放されて良かったです。本当に裁判長の話がとてもわかりやすくて。名古屋も傍聴してましたが、さらに。素直に受け取っていい判決文が聞けて、安心しました。別の制度作るってことが新たな差別を生むという危惧が拭えないとか、力強い言葉で語られていて良かったです。
川田有希さん:
6時56分の電車に乗って来ました。直前から緊張してて。今回はようやっと違憲判決がいただけて。優しい口調でお話しいただけて、最初から違憲と明確に言ってくださって、不安を解消してくれた。「我が国において、法制化された婚姻制度は自然生殖の可能性があることと一体のものとされておれず、自然な性愛感情を抱きあう関係をも婚姻関係として保護する趣旨であると解される」というのがいい言葉だと思いました。司法が自然な性愛感情を同性愛に見出してくれているというか、しかもちょっとリリックっぽい。自然と自然を掛け合わせている感じが。その次の、でも性愛を基礎とする親族身分的結合、要するに、愛し合う人が家族になりたいというんだよね、みたいなことをちゃんと文言に入れてくれているところが、すごく温かい。名古屋に続いて、控訴人たちに寄り添った判決だったと思い、うれしかったです。
坂田テレサさん:
高裁判決が地裁判決と全く同じ内容という最悪の夢を見て、あまり、期待しすぎないように、考えないようにいつも通り過ごしていました。今日もバタバタしながら娘を保育園に送り出しました。3年前の判決があまりにも納得いかなかったし、モヤモヤと怒りの3年弱でした。最初に違憲と言ってくれたことで、もう、安心して聞けた。すごく良かったし、すごく簡単に、法律用語が簡単じゃないのはわかってるけど、わかりやすいと感じました。私はみんなが見える席だったので、いいこと言ってるたびに、頷いたり、その度にモヤモヤが吹っ飛んで浄化された気がしました。天気も晴れて、気持ちも晴れてスッキリした気分です。
前回、地裁判決の時に、内容を聞いたら、一体何を聞いてこの判決を書いたんだろうと思うことが多くて。うちらの声が届かなかったという気持ちになってて。今日、判決を聞いて、ちゃんとうちらの話を聞いたんだと、声が届いたんだと思えました。控訴審の最初の意見陳述の時に、麻智が陳述書を読み上げてる間、私は0歳だった娘を膝の上に乗せてて。なんでも口に入れるし、声を出してたんですけど、その声が届いたんだろうなと思って(笑)。いろんな家族の形が実際にいる、そのことを感じてほしくて。小さい娘のことを裁判長が理解してたんだなあって、いろんな形の家族がすでに暮らしていて、子育てもしてるし、その苦労は男女のカップルと同じ苦労だし、形が変わっても子育ては変わらないということが、今日の判決文に入ってたのは嬉しかったです。最後に愛は勝つと信じて、頑張りたい。サポート応援よろしくお願いします。
坂田麻智さん:
今日はおつかれさまでした。本当に、地裁から6年、高裁を闘って3年、ここまで闘ってこれたのは、応援してくれたみなさん、常に最前線で身を挺していただいた弁護団のみなさんのおかげです。今日は泣かないと決めてたんです。でも本当にたくさんのみなさんが拍手で迎えてくれて、ジーンとしすぎちゃって…胸が詰まるってこういうことだなって。地裁の時には、わけのわからない判決で苦しめられた涙でしたが、今回はうれしい、待ちに待った判決で、感極まってしまいました。
この裁判は、私たちだけじゃなくて、当事者の方たちや、支援者の方たち、これから生まれてくる子どもたち、みんなの未来を乗せた裁判だと思っています。そういう意味でも、良かった。言葉がうまく見つからないけど、ホッとしました。これで5ヵ所全部違憲。立法、本当にやっていただかないと。国会議員にハガキを書こうという運動をやってて、近所の方にも書いてもらって、地元の、どちらかというと反対する議員の方にも、1通1通毎日届くように送ったりしてます。みなさんもぜひ、一緒にお願いします。
ここで、大畑弁護士が、大阪弁護士会の副会長として会議に出ないといけないということで、退席の前にご挨拶しました。
大畑弁護士:
3年前の地裁判決では悔しい思いをしましたが。ようやく覆りました。全国のたくさんの弁護士会が声明を出してくれてますが、次年度の副会長にも言って、大阪弁護士会も会長声明出せるように頑張ります。
YouTubeライブのほうに寄せられたコメントで、「最高裁は東京二次訴訟の高裁判決を待って判決が出るのでしょうか? 宇賀さんが退官するのが7月なので、その前に判決が出てほしい」という質問があり、三輪弁護士が答えました。
三輪弁護士:
上告するかどうかもこれから検討しますが、現状、札幌、東京、福岡、名古屋いずれも上告しているので、たぶん同じように。
最高裁は、今後のスケジュールが全くわからないんです。連絡を待つしかないです。宇賀さんは私も尊敬していますが、退官前に判決が出る可能性は低いと思います。
今日の判決について上告が決まったら、5高裁で区切って、まとめて、という可能性はあります。
そうなると、東京二次が取り残されるように見えるかもしれませんが、そうじゃなくて、まず、先に進んでる裁判について最高裁で違憲判断を取る、東京二次では国家賠償を取る、という話もしています。二段構えで闘ってるというイメージを持っていただく方がいいのかなと思います。
会場の、五人くらいのみなさんがコメントしました。
佐藤郁夫さん、今日も見てくれてるんじゃないか、とか、3年前の地裁判決が原告や弁護団のみなさんのトラウマになっていることをあらためて知って、今日の判決でそのトラウマが癒やされることを願います、本当におつかれさまでした、とか、自分が性的少数者と気づいて苦しんだが、Marriage For All Japanの方たちの活動、闘っている人たちの存在を知って前向きになれた、とか、みなさんは自殺してたかもしれない若者の命を救ってると確信しています、とか、アライですが、この不平等をもうやめようと周囲にも伝えていきたい、とか、いろんな方たちのいろんなコメントが語られました。なかには高校生の方もいらっしゃいましたし、(YouTubeでは姿が映されていないのですが)たぶん現場にいたら、胸がいっぱいになって、泣いてしまっていたかもしれない…と思いました。
東京二次訴訟の原告の山縣さんが、コメントしました。
山縣真矢さん:
2015年の人権救済から10年も経っているのですが、こうして若い人が足を運んでくれているのがうれしいです。3年前も傍聴しましたが、どんより沈んでいて、どう声をかけていいのかわかりませんでした。今日は原告の方たちにも笑顔が戻って、本当に良かったです。全国5高裁で違憲判決って異常事態で、人権侵害だってことなので、いち早く立法してほしいです。今日は佐藤郁夫さんの誕生日で、生きてたら66歳になります。間に合わない方がいらっしゃるというのは、これからもそうでしょうし、本当に一刻も早く法制化して、救ってほしい。僕自身も27年連れ添ってるパートナーとまだ赤の他人なので。東京二次は次は5月20日が期日です。よろしくお願いします。
最後にもう一言ずつ、原告のみなさんがコメントしました。
田中昭全さん:
地元でLGBTQの講師をしていて、中学生とかと話をすると、やっぱり、若い子たちも、同性婚できないことはおかしいと思ってくれているんですが、私たちの世代からすると、そういう世代ではもう受け容れられてると思ってたのに、数年前、30代のゲイの方がカミングアウトして父親に否定されて自殺未遂したことがあって、まだまだ続いてると思い知らされたことがありました。郁夫さんが間に合わなかったこと、もう
次の世代にこんな思いをさせたくないということ…(嗚咽)こんなに泣くはずじゃなかったのに。今日の判決は本当に安心しました。本当に応援、ありがとうございました。
川田有希さん:
いつもそんなに泣かないんですが、会場のみなさんのお話を聞いて、心が熱くなっています。旗だしの時は、後ろの佐藤さんが泣いてくれて(笑)。みなさんの熱い思いを聞いて、頑張ってきて良かったと思えました。これで終わりじゃないので、最高裁も、そして立法を求めていく闘いが続きます。国を変えていける事例を出せる状況にはなっていると思うので、安堵して香川に帰れます。
坂田テレサさん:
いい判決が出て安心したけど、法制化まではまだ道が長いと思います。判決は、はっきり言ってくれてありがとうと思う言葉がたくさん。性的指向は自分で変えることではないということ、同性の間の愛情は自然なものだということ、たくさんの人に届いたらいいなと思います。悩んでる当事者、どの年齢でも、自分の中で自信が持てない方がいると思うので、その言葉を憶えておいてほしい、胸を張って生きていこうと伝えたいです。
坂田麻智さん:
熱いメッセージありがとうございます。胸がいっぱいです。法制化は待ったなしです。佐藤郁夫さんの話もありました。ご高齢のカップルもいます。私たちもミドルエイジです。これはみんなが救われる裁判、みんなの未来を乗せた裁判、みんなの未来を明るくする裁判です。立法できるまで、走り抜けたいです。
↓報告会のYouTubeライブです。
<署名のお願い>
Marriage For All Japanは「いくら良い判決が積み上がっても、国会や政治が動かなければ法律は変わりません」「政府は「判決の行方を注視する」と答弁するにとどまり、「慎重な検討」を始めることすらしていません」として、「日本でも同性婚の実現を!政府・国会は「注視」でなく、最高裁判決を待たずに今すぐ同性婚法制化へ動いてください。」と要望する署名を立ち上げました。ぜひご協力をお願いします。
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